気象庁から今年一番の寒波と発表され、凍てつく寒さが東京を覆った1月24日、寒風吹き荒れる有明でDリーグサードシーズンのラウンド7が開催された。シーズン開幕から確実に盛り上がりを見せているDリーグ。この日も寒波をものともせず集まったダンスファ…

気象庁から今年一番の寒波と発表され、凍てつく寒さが東京を覆った1月24日、寒風吹き荒れる有明でDリーグサードシーズンのラウンド7が開催された。

シーズン開幕から確実に盛り上がりを見せているDリーグ。この日も寒波をものともせず集まったダンスファンによって、有明ガーデンシアターの1万を超える客席はほぼ埋め尽くされての開催となった。

このラウンド7はDリーグのルール変更により、再び対戦方式によって全12チームが6つのマッチで1チーム対1チームの総当たり戦となる。そして、5名のジャッジによる各1点のポイントに加え、オーディエンスの投票によって決まるオーディエンスポイントを加えた合計6点の獲得を各チームで競ってゆく。

そのため、どのジャッジがどちらのチームに点をつけるか、またオーディエンスポイントがどちらに入るのか、そしてその結果と自分自身のジャッジが同一になるのか。等々、各マッチを見ながら結果を占う面白さが醍醐味となりつつある。そして今ラウンドからは、会場では必マスクという規制はあるものの声援推奨となり、よりリアルに会場の盛り上がりを肌で感じることが出来る闘いとなった。早速この日のマッチを振り返りたい。

◆ラウンド5「すべての人にダンスのある人生を」2022年最後の戦い

■ヒップホップを展開したドリームス

【1st MATCH】LIFULL ALT-RHYTHM vs. avex ROYALBRATS

エンタメ性を武器に勝利を飾ったロイヤルブラッツ(C)D.LEAGUE 22-23

先攻のアルトリズムは毎回個性あふれる衣装と振付で“アルトリ・ワールド”を展開してくれるが、今回のテーマは“ハングアウト”。「いつでもあの頃のように踊れる」という言葉と共にダンサーの50年後を描いたというナンバーは全員が仮面を被って老人に扮し、歩き方からしぐさまでが不思議なコミカルさで和やかにナンバーが展開された。ダンサーとしての自分の下り坂を意識する筆者にとっては、胸にぐさりと突き刺さるようなテーマだったが、車いすの老人が突然すごいヘッドスピンをみせつけるなど、楽しいサプライズもあり、会場を大きく沸かせた。

対するロイヤルブラッツは高度な人気も高いチーム。今回もバースディケーキとプレゼントボックスを小物として生かし、ハッピーな雰囲気と共に、これもコミカルな演出で会場から多くの声援を受けていたのが印象的だった。結果はアルトリズムはコンセプトが深すぎたか、0-6で観るものの心を愉しく躍らせるたロイヤルブラッツの勝利となった。

【2ndMATCH】Benefit one MONOLIZ vs. KADOKAWA DREAMS

先攻は、妖艶さが売りのモノリズ。今回は「ANIMALISTIC」をテーマにボディラインとおしりの割れ目までを強調した、いつにも増してセクシーな全身豹柄の衣装で登場。柔軟でなまめかしい姿態は女豹の群れのようにも映り、妖しく艶やかなザ・モノリズワールドをさらに極めたナンバーが届けられた。

一方のドリームスはいつもの青いジャケットを脱ぎ捨て、シルバーとブラックの衣装でこちらも妖艶さをとりいれつつも、終始身体能力を駆使したアップテンポなヒップホップを展開しつつ、初スタメンとなったTSYのブレイキンや立体的なアクロバットの展開で効果的なサプライズを織り交ぜ、つかみの強いナンバーを届けてくれた。結果、2ndマッチもsweep=6-0でドリームスが勝利をさらった。

【3rd MATCH】SEGA SAMMY LUX vs. dip BATTLES

どちらも持ち味の強いチームだが、今回先攻のルクスのテーマは「未来型忍者」。日本人なら誰もが自分なりの忍者像をもっていると思われるが、ルクス扮する未来型忍者は日本刀や衣装の煌めきを印象的に使い、様々な武術を連想させる華やかな戦闘シーンを披露。繰り出す術の凄みで新しく鮮烈な忍者の姿を出現させた。

対するバトルスは全員が赤一色のスーツ。YMO的エレクトロミュージックにのって、何が飛び出してくるのか?と思わせる視覚のマジックを狙ったライン上のフォーメーションで観るものを楽しませてくれた。が、結果は4:2で忍者に扮したLUXの勝利。インパクトという意味でLUXのイメージが強く残ったのだろう。

■ストリートの王者を主張したレイザース

【4th MATCH】CyberAgent Legit vs. KOSE 8ROCKS

先攻のレジットは今回ディレクションに初代MCO(最優秀ディレクター)のAkihiko氏を迎え、ドラゴンボールのFREEZAのセリフにインスパイアされたというナンバーを披露。カンフー着のような衣装でワンハンドのみをつかって踊るという興味深い振付は、片手だけとは思えない多彩な表現と独特の雰囲気を纏い観るものをくぎ付けにした。

対するエイトロックスは「不易流行」をテーマとし、いつものようにリスキーで難易度の高いルーティンをふんだんに取り入れながらも安定したブレイキンを展開したが、レジットのワンハンドのインパクトに及ばず、6-0でレジットがsweep勝利を飾った。

【5th MATCH】SEPTENI RAPTURES vs. USEN-NEXT I‘moon

大人っぽさとクールさを打ち出したアイムーン(C)D.LEAGUE 22-23

先攻のラプチャーズはメンバーのYUYAがモーションキャプチャーの衣装を纏い、他のメンバーは腕が拡張されたアンドロイドのような衣装で、ロボットやアンドロイドが蠢く近未来を髣髴とさせる斬新なナンバーが届けられた。対するアイムーンはブラックのつば広帽子にワインレッドの衣装という対照的でクラシックな装い。これまでの“かわいいアイムーン”を抜け出して大人っぽさとクールさを打ち出し、フォーメーションの面白さと、まとまりの良いいつものシンクロ性の高さを存分に生かしたナンバーを展開し、見事0-6のSWEEPで勝利をさらった。

【6th MATCH】FULLCAST RAISERZ vs. Valuence INFINITIES

最終マッチは男気溢れたバトルスタイルを得意とし、共に独特の風格ある2チームの闘い。

先攻のレイザースはストリートの原点を感じさせるダメージジーンズをリメイクしスタッツを多用した衣装で登場。いつもにも増して迫力のある、前へ前へとエネルギーをぶつけてくるような熱いクランプを爆発させた。

対するインフィニティはヒップホップとブレイキンを融合し、クールなストリートスタイルを貫いた。

インフィニティの上手さと純度の高いヒップホップで繰り広げるストリートのフレーバーは見ごたえあるものだったが、こぶし突き上げストリートの王者を主張したレイザースが0-6で勝利を収めた。

このレイザースのSWEEP勝利をはじめ、今ランドは6マッチ中、実に5マッチがSWEEPで決まるという結果となったのだが、正直、観ていて「そこまで大差があるだろうか」と疑問を感じてしまうマッチもあった。が、このような結果を再度振り返ると、レイザースをはじめ、より押し出しの強いチーム、イメージを強くのこしたチームに軍配があがったというイメージを強くした。

あらためて、上手いだけでは勝てないという、スポーツではなく、エンターテイメントとしてのダンスのジャッジの難しさを考えさせられることとなった。この対戦方式によるSweepルールの採用によって、今後各チームの戦い方にも更なる変化が生じてくるのだろう。

現時点で、トータルランキングではサイバーエージェント・レジットが1位に返り咲き、ロイヤルブラッツ、セガサミールクスが後を追っている。ラウンドはちょうど折り返し地点、まだ5つのラウンドが残されており、4月23日開催のチャンピオンシップ進出の6チームがどこになるかは予断を許さない。

6-0で決まるSWEEP制度は負けてしまった側のダンサーにとっては、なかなかメンタル的につらいものがあるのではないかと心配してしまうが、どうか負けずに最後まで全チームが輝くナンバーを踊りきってほしい。ますます盛り上がるDリーグの次なる闘いは2月8日。コロナの規制も緩み始めるこの春、ぜひ会場に足を運び、リアルな生のDリーガーの息吹を感じてみてはいかがだろう。

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著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター

『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。