ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 昨年末から行なわれてきた中山開催が終了し、今週から舞台は東京に替わり…
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
昨年末から行なわれてきた中山開催が終了し、今週から舞台は東京に替わります。その開幕週に行なわれる重賞は、GIフェブラリーS(2月19日/東京・ダート1600m)の前哨戦となるGIII根岸S(1月29日/東京・ダート1400m)です。
年明けのダート路線の王道と言えば、年末のGIチャンピオンズC(中京・ダート1800m)や年末年始の地方交流重賞から、あるいは先週中京で行なわれたGII東海S(中京・ダート1800m)や今回の根岸Sをステップにして、GIフェブラリーSへと向かうのが一般的でした。
それが近年では、2月末に行なわれるサウジアラビア国際競走を目指す陣営も増えており、ダート路線のトップホースが最大目標とするレースが分散しつつあります。実際に今年も、昨年末のチャンピオンズCを制したジュンライトボルトはGIサウジカップ(2月25日/サウジアラビア・ダート1800m)に向かうようですね。
また、この時期には地方交流重賞のGI川崎記念(川崎・ダート2100m)が行なわれ、そちらに参戦する有力馬もいます。今年(2月1日)は、テーオーケインズ、ウシュバテソーロといった実績馬が参戦予定です。
こうしてレース選択が多岐にわたっている現在、どの馬がどこをステップにして、どのレースを最大目標としているのか、"陣営の意図"を読むことも、馬券検討においては重要なポイントとなりそうですね。
さて、話を根岸Sに戻しましょう。出走各馬の臨戦過程から、最も参考となるレースはGIII武蔵野S(11月12日/東京・ダート1600m)でしょうか。そのため、そこでハナ差のワンツーフィニッシュを決めた1着ギルデッドミラー(牝6歳)と2着レモンポップ(牡5歳)が人気を集めそうです。
ギルデッドミラーは、ダートへと路線変更して以降、3戦すべてで連対。まだ底を見せていません。兄弟には芝の活躍馬が多く、同馬も芝を中心に走っていましたが、ダートの適性はかなり高いと言えます。ダートの1400m戦は今回が初めてですが、むしろこの距離でより決め手が生きそうな気がします。
社台系のクラブ馬ゆえ、6歳牝馬は3月末での引退が決まっています。同馬も残りの現役期間はわずか。引退させるのはとても惜しいですが、その分、残りのレースはどれも勝負度合が高いと見ていいでしょう。
レモンポップは、デビューから全9戦で一度も連対を外していません。特に東京・ダート1400mでは、何度も1分22秒台をマークして4戦4勝。この舞台では絶対的な安定感を誇っています。
レースぶりもスッと先行して、いつでも抜け出せる位置を確保。最後も速い上がりでまとめてしまうのですから、非の打ちどころがありません。もし東京・ダート1400mという舞台でGI戦があったとしたら、真っ先にV候補として名前が挙がる馬でしょう。
これら2頭が、今回の舞台でも再びワンツー決着を果たす可能性は十分にあると考えています。
そんななか、僕には気になっている穴馬がいます。オーロラテソーロ(牡6歳)です。ダート1200m戦でも先手を奪えるスピードがあり、今回のメンバー構成であれば、ハナを奪うのはこの馬だと思っています。
最初に同馬へと目がいったのは、鞍上に4年目の若手・原優介騎手を起用したことにあります。
オーロラテソーロを管理する畠山吉宏厩舎では、昨年末のGI阪神ジュベナイルフィリーズでも管理馬のミシシッピテソーロの鞍上に原騎手を起用。同騎手が思いきりのいい騎乗を見せて、ミシシッピテソーロは16番人気ながら5着入線を果たしました。
この時の頑張りが評価されたのか、今回も"テソーロ軍団"の馬で重賞騎乗の機会を得ました。再度、人気を覆すような騎乗への期待が膨らみます。

根岸Sでの大駆けが期待されるオーロラテソーロ
レース展開に目を向ければ、このオーロラテソーロの逃げを見ながら、人気のレモンポップが2~3番手で構える隊列が予想されます。そこで、レモンポップに騎乗する戸崎圭太騎手は、前の馬よりも後ろの馬の動き出しに意識がいくと想定されます。つまり、逃げるオーロラテソーロは案外ノーマークになるのではないでしょうか。
僕の経験からしても、テン乗りコンビの逃げ馬、まして経験の浅い若いジョッキーが騎乗ともなれば、あまり怖さを感じません。戸崎騎手にしても「いつでもかわせる」くらいの余裕から、かわいがってもらえる(=早く仕掛けてこない)ことも大いに考えられます。
さらに、オーロラテソーロは1400m戦での勝ち鞍が2勝クラスではありますが、オープン入り後は3着が最高。そういった知識はどのジョッキーも持っていますから、周囲からは「この距離だと少し足りない」といった意識を持たれているかもしれません。
とりわけ後方に構えている馬たちは、レモンポップを目標に動いてくるはず。逃げるオーロラテソーロへの意識は薄くなるに違いありません。
こうしたことが盲点となり、オーロラテソーロがラクな単騎逃げで気分よく行かせてもらえるようなら、同馬の残り目があっても驚けません。
ということで、根岸Sではこの馬を「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。