新球団の初代監督に洪一中氏…台湾プロ最多の通算991勝挙げた「諸葛洪中」 今季から2軍公式戦に参入する台湾プロ野球の新球…
新球団の初代監督に洪一中氏…台湾プロ最多の通算991勝挙げた「諸葛洪中」
今季から2軍公式戦に参入する台湾プロ野球の新球団「台鋼(TSG)ホークス」は1月16日、台北市内のホテルで記者会見を行い、初代監督に洪一中氏が就任すると発表した。
洪一中氏は、台鋼ホークスが本拠地とする台湾南部の高雄市出身で61歳。アマチュア時代から名捕手として知られ、ソウル五輪などの国際大会に出場、プロ野球でもスタープレーヤーとして、ゴールデングラブ賞を7回受賞した。台湾球界を代表する捕手出身の名将だ。
La Newベアーズ(楽天モンキーズの前身)では、監督就任2年半で台湾シリーズを制覇、チーム名をLamigoモンキーズに改めた桃園移転後は黄金時代を築き、チームを9年間で6度、台湾一に導いた。リーグ3連覇を置きみやげに、2020年からは富邦ガーディアンズの監督に就任。富邦では好成績は残せなかったものの、監督通算勝利数991勝、リーグ制覇7回はいずれも台湾プロ野球史上最多だ。
短期決戦での戦いぶりの評価も高く、2007年~2008年にかけては北京五輪の世界最終予選と本大会、2019年にはプレミア12で台湾代表の監督を務めたほか、最終的に出場を辞退した東京五輪世界最終予選でもチームを率いる予定であった。その「知将」ぶりから、台湾では『三国志』の軍師「諸葛孔明」をもじって、「諸葛洪中」と呼ばれることもある。
首脳陣に元巨人・ルイス、元西武・横田久則ら日本球界経験者も
洪一中氏は、拍手の中スーツ姿で登壇。台鋼グループの謝裕民会長から帽子とスタジアムジャンパーを着せてもらうと、再び戦いの場に戻ってきた喜びと緊張感が入り混じったような、神妙な表情を浮かべた。背番号は、選手として13年、指導者として18年、これまで31年間のプロ野球生活で一貫して背負ってきた「2」に決まった。
昨年、台湾プロ野球に加盟した台鋼ホークスは、チーム発足時に就任した林振賢・統括コーチを皮切りに、巨人でもプレーしたルイス・デロスサントス打撃コーチ、先日就任が明らかになった元西武の横田久則投手コーチら、すでに8人のコーチが決定していたが、洪一中氏の監督就任でついに最後のピースが埋まることとなった。
劉東洋GMは、第6の球団としてリーグ参入の意向を示してから、監督決定まで約1年かかったことについて、洪一中氏が富邦と契約期間中であったことが大きかったと説明。背番号「2」を空けていたことも、洪氏を監督の筆頭候補として考えていたからだと明らかにした。並行して外国人監督も候補の一人としていたというが、昨年末に洪氏が顧問をつとめていた富邦との契約が満了したことから正式に接触。チームカルチャーに対する理念が一致し、監督就任を依頼したという。
なお、洪一中監督との契約期間は3年。劉GMによると、2年目まで監督を務めることは決定しているが、3年目のポストについては改めて検討するという。
これまで洪一中監督が率いてきたチームとは異なり、台鋼ホークスは文字通りゼロからの新チームだ。昨年のドラフト会議で指名した選手はいずれも10代後半から20代半ば。拡張ドラフトや他球団を戦力外となり獲得した選手も、いずれも20代だ。
試合中の「懲罰交代」も多く、台湾の指導者の中では厳格と言われる洪一中監督は「チームが若いということは、良くない習慣も少ないだろう。その点ではやりやすい」と期待。そのうえで、「自分が選手に対して求めるレベルは高い。規律あるチームをつくりたい。選手たちがロールモデルとなることで多くのファンを集め、将来的にホークスが、南部の野球ファンにとって誇りとなれば」と力を込めた。
「育成型外国人」獲得へ…すでに日本での候補探しをスタート?
まだ選手については十分に把握していないといい、チームの方針や選手起用、采配についてはコーチ陣としっかりとコミュニケーションをとり、意見を聞いた上でまとめていきたいと話した。その上で「自分はディフェンス面については日本スタイルが好みだ。西武でファーム・ディレクターを務めた横田コーチには、ぜひとも経験を伝えてもらいたい」と望んでいる。
前述したように、今季、台鋼ホークスの戦いの場は2軍となる。2月下旬から練習試合を戦うほか、台湾の『ミラーメディア』によると、3月上旬のWBC直前には、台湾と同グループのキューバ、イタリアとの練習試合が予定されているという。台鋼の若い選手にとって、現役メジャーリーガーやNPBでプレーする選手たちが含まれる強豪国との対戦は、良い経験になるだろう。
また、洪監督は2軍公式戦を戦うにあたって、「育成型外国人選手」を獲得する方針を明かした。共にプレー、トレーニングをすることで、若手選手をいち早く外国人選手との対戦に慣れさせるのが目的だといい、レベル的には、母国のトップリーグでプレーできていない若い選手を想定しているという。待遇はあくまでも2軍レベルで、タフな環境となりそうだが、パフォーマンス次第では正式な外国人選手に登用する可能性もあるという。すでにルイスコーチには米国、横田コーチには日本での候補探しを依頼している。台湾で飛躍のきっかけをつかみたいと考える日本選手の加入を期待したいところだ。
なお、台湾プロ野球を運営するCPBLは、今年の冬にアジアウインターリーグの再開を発表しており、台鋼ホークスは単独チームで参加するとみられる。日本チームの派遣は現時点では未定だが、これまで通りプロや社会人の選抜が参加することになれば、より身近に感じられるようになるだろう。このコーナーでは今後も、台鋼ホークスの話題をお伝えしていく予定だ。「名将」就任で話題を集める台湾プロ野球第6の球団の動向に、ぜひ注目していただきたい。(「パ・リーグ インサイト」駒田英)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)