ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 年明けから芝の古馬中距離重賞が3鞍、GIII中山金杯(中山・芝200…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 年明けから芝の古馬中距離重賞が3鞍、GIII中山金杯(中山・芝2000m)、GIII愛知杯(中京・芝2000m)、GII日経新春杯(中京・芝2200m)と行なわれましたが、いずれもスローペースの競馬となっています。その結果、先行した馬、内目を通って距離のロスなく走った馬、というのが好走のキーワードになっています。

 スローな展開が多い理由は、冬場特有の重くてタフな馬場であることや、乗り役の斤量が今年から増えたことなどが影響しているのかもしれません。

 それにしても、どの馬が逃げて、どういった展開になるのかというのは、やはりレースの行方を大きく左右するものですね。そうしたなか、前に行ける馬はそれだけでチャンスが大きいということを、再認識しました。

 そして、今週行なわれる芝の古馬中距離重賞、GIIアメリカジョッキークラブC(以下、AJCC)も、逃げ馬や展開面をどう読むかが、馬券的中へのポイントになりそうです。

 今年のメンバーを見渡すと、バビット(牡6歳)、ノースブリッジ(牡5歳)、シャムロックヒル(牝6歳)らが前に行くと思われますが、僕は逃げてこそ持ち味を発揮するバビットがハナを譲らないと見ています。

 前走のGI天皇賞・秋(10月30日/東京・芝2000m)では、快速馬パンサラッサにあれだけ速いペースで飛ばされてしまっては、さすがに持ち味を発揮することはできませんでした。15頭立てのしんがり負けも仕方がないでしょう。

 しかし今回の舞台は、3歳時にGIIセントライト記念で逃げきり勝ちを決めた得意コース。それゆえ、何が何でも自分の競馬に徹してくるはずで、ここで巻き返したい意識は強いと思います。

 問題は2番手以降の出方。ノースブリッジは若い頃は逃げてこそでしたが、3走前のGIIIエプソムC(東京・芝1800m)では3番手で折り合って重賞制覇。今や、絶対に逃げなければいけない馬ではないので、ガツガツと先手争いに加わってくることはないでしょう。

 そうなると、中山金杯を除外されてここへスライドしてきたシャムロックヒルの出方がカギになりそうです。重賞勝ちを果たした一昨年のGIIIマーメイドS(阪神・芝2000m)では、藤懸貴志騎手が騎乗して逃げきり。今回、それ以来のコンビとなり、再び逃げ争いに加わってくる可能性がありそうです。

 社台グループのクラブ馬は規定によって、牝馬は6歳の3月末には引退することがきまっています。そうした状況にあって、年明けのここまで引退せずに現役を続けているのは、最後に悔いのない競馬をさせたい、という考えがあるからだと思います。

 ということは、陣営から「思いきって乗ってくれ」といった指示が出ても不思議はありません。その場合、たとえ序盤でハナを譲ったとしても、向こう正面から早めに動く展開も考えられます。そこは、頭の片隅に入れておきたいところです。

 それら先行勢を見ながら運ぶと思われるのが、上位人気になるであろうガイアフォース(牡4歳)とエピファニー(牡4歳)でしょうか。

 ガイアフォースはクリストフ・ルメール騎手への乗り替わりに意気込みが感じられ、エピファニーは現在4連勝中と本格化ムード。どちらも今年は飛躍の年にしたいはずで、このGII戦を勝てるかどうかによって、今後の進路が大きく変わってきます。ともに、勝負気配は高いと見ていいでしょう。

 中山・芝2200は、ただでさえ仕掛けのポイントが早くなりがちですが、こうした展開面や人気上位馬の脚質を考えても、このレースは少し意識が前がかりになる可能性が高そうです。少なくとも超スローの、行った行ったの競馬にはならないのではないでしょうか。

 そういった展開面から穴馬候補として注目しているのは、エヒト(牡6歳)です。昨夏のGIII七夕賞(福島・芝2000m)では、同馬に騎乗して久々に勝利ジョッキーインタビューに答える元気な田中勝春騎手を見ましたが、かつての仲間が活躍する姿を見るのはとてもうれしいものですね。

 この馬は彼と手が合っているのか、勝負どころでの反応のよさが目立ちます。スタートも上手に出ているように、田中騎手は同馬をすっかり手の内に入れて、思いのまま操れている印象です。



昨年の七夕賞で重賞初制覇を決めたエヒト

 前走のGIIIチャレンジC(12月3日/阪神・芝2000m)でも、道中1番人気のソーヴァリアントをぴったりマーク。この馬に食らいついていこうという騎乗には、なかなか見どころがありました。ここでも距離ロスなく、タイトな競馬で脚をタメつつ、中団からの差し競馬ができれば、上位食い込みは十分にありそうです。

 ちなみに、エヒトと同じ"父ルーラーシップ×母父ディープインパクト"という配合馬がこの冬場の重賞での活躍が目立っています。エヒト自身、チャレンジCで3着と好走しましたが、他にも次のような例があります。

・ドゥアイズ=GI阪神ジュベナイルフィリーズ3着
・ドルチェモア=GI朝日杯フューチュリティS1着
・キングズレイン=GIホープフルS3着
・メイクアスナッチ=GIIIフェアリーS2着

 一瞬のキレというより、長く持続した脚を使えるのが、この冬場の馬場に合っているのでしょう。こういう血統的な傾向も、エヒト推しの心強い材料となります。

 というわけで、AJCCの「ヒモ穴馬」にはエヒトを指名したいと思います。