1月6日、第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出場する日本代表の選手、12名が発表された。そこで、日本…

 1月6日、第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出場する日本代表の選手、12名が発表された。そこで、日本代表が国際試合を戦うたび、必ずつくってきた一覧表をさっそく作成してみる。

年度生まれ
1986/ダルビッシュ有
1987
1988
1989
1990
1991
1992/甲斐拓也、源田壮亮
1993/今永昇太、近藤健介
1994/大谷翔平、鈴木誠也
1995
1996
1997
1998/山本由伸、牧秀悟
1999/村上宗隆
2000/戸郷翔征
2001/佐々木朗希
2002

 言わずと知れた、栗山英樹監督率いる日本代表の年齢構成表である。

 1月6日の記者会見に登壇した大谷翔平が背番号について聞かれた時、「(16番を選んだのは)先輩優先みたいな『野球界あるある』があるので」と語り、さらには「年齢も上なのか下なのかわからない選手もいると思うので、とりあえず最初は全員、敬語から入りたいなと思います」と言って笑ったことからもわかるように、野球界、学年の上下は重要なファクターである。

 だからチーム構成上、誰と誰が同学年で、どの世代が何人ずついるのかということは選手たちの雰囲気を探るうえで重要な手がかりとなるため、いつもこうした一覧表をつくって日本代表の面々を眺めることにしている。

 現段階では30名のうちの12名だけなので表がスカスカになるのは仕方がないのだが、あと18名を加えていくうえで年齢構成のバランスを考慮するのも大事な要素だと思う。

【侍ジャパンの軸はメジャー組】

 12名の中での最年長は1986年度のダルビッシュ有、そこから6年あいて、野手の最年長は1992年度の甲斐拓也、源田壮亮。投手でダルビッシュの次は1993年度の今永昇太となる。となると、栗山監督は主将を置かないと明言しているため、チームリーダーは甲斐、源田、投手は今永がまとめていくことになるのだろう。

 もちろんこの日本代表はダルビッシュ、大谷翔平、鈴木誠也のメジャーリーガー3人が軸となることは疑いようもない。オリンピックともプレミア12とも違うWBCならではの最大の特徴は、相手がメジャーリーガー、舞台も準決勝からはメジャーリーグの球場になるというところで、メジャーの舞台で戦っている選手には当然、メジャーへの気後れがない。だからこの3人が軸となるのだが、しかし彼らにはチームをまとめるところには重きを置かせるべきでない。



メジャー経験があり、第2回、3回WBCにも出場した田中将大

 ダルビッシュからは若い選手への意識が高いことをうかがわせる言葉が聞こえてくるものの、それでもチームをまとめるのにはほかの選手と歳も離れていて、NPBの選手たちにしてみればあまりに恐れ多い存在だろう。そして大谷も会見でこう話していた。

「(自分が)ダルビッシュさんとやるのも楽しみですけど、勉強したいというのは二の次で、勝つことだけを考えてやっていきたいと思います。ほかの選手たちもそういう気持ちを持ってプレーするのがベストじゃないかなと思うので、実際に大会が終わってみて勉強になったと後に感じることはあると思いますけど、やっている時に関しては、そういうことを抜きにして、本当に対等に頑張りたいなと思っています」

 つまりは、大谷は投げて打って、戦力として日本代表に貢献するものの、チームをまとめる立場に立つつもりはない、ということだ。彼はこうも言っていた。

「言葉で引っ張っていくようなタイプではもちろんないので、本当にやることだけをしっかりやりたいと思っています。(日本代表には)そういうレベルの人たちが集まってくるし、誰かに言われてやるような選手ではない。自分たちの役割を個人個人がしっかりとこなしていくというのがいいチームになるひとつの要因だと思うので、やるべきことをしっかりと個人個人がやっていくことだと思います」

 ダルビッシュ、大谷、鈴木が引き上げるのは表に出てくる戦闘力の数値であって、日の丸を背負ったチームというのはそれだけでは成り立たない。だからこそ代表入りに積極的な、かつWBCの経験者でもあるNPBの選手が、投手ではダルビッシュと今永の間に、野手では源田と甲斐の上に、必要ではないかと思うのだ。

【引き出しの多さと国際舞台の経験値】

 それぞれの選手が100パーセントの戦闘力を発揮するための環境を重視する栗山監督は、そのために誰が必要なのかということも考えているだろう。実際、栗山監督はこう言っていた。



これまで長きにわたり侍ジャパンの遊撃手を務めてきた坂本勇人

「菊池(涼介)、(坂本)勇人、柳田(悠岐)、菅野(智之)もそうだし、マー君(田中将大)もそうかもしれない。ジャパンの中心を担ってくれた選手の年齢が上がってきて、それに若い選手が追随する形でその差は縮まっていても、まだ追い抜くところまではいっていない。

 だから勢いを優先して若い選手を選ぶのか、実績を大事にして経験値の高い選手を選ぶのか、そこについての正解はありません。だからこそ、最後は魂なんです。誰よりも勝ちたくて誰よりもアメリカをやっつけるんだという魂。こういう野球人生を送るんだという熱さのあるなしは年齢とは関係ない」

 栗山監督は"精神的支柱"が必要だと言っているのではない。勝つために、経験値の高い選手が必要なのかどうかの最後の見極めを今まさに行なっている、ということを言っているのだ。

 必要なのは、選手としての引き出しが多く、国際舞台で戦力として計算できる選手。さらに言えば1986年生まれのダルビッシュとの橋渡しになり、大谷、鈴木にも一目置かれる1987年度から1991年度までに生まれた選手。そういう存在が投打、ひとりずつは必要なのではないか──個人的にはそう考えている。

 適任は投手では田中将大、野手では坂本勇人だ。

 田中が入れば、ダルビッシュとNPBの若い投手たちをつなぐ役割をこなしながら、ブルペンに控えることで「あの元ヤンキースの田中がいる」と、メジャーリーガーを威圧することもできる。もちろんメジャーを知り尽くした田中の引き出しは準決勝、決勝のリリーフとしても十分、計算が立つ。なによりもWBCへの想いの強さが、魂を重視する栗山監督の価値観と一致するだろう。

 坂本は、おそらくショートで先発するのは難しい。源田をセンターラインの核だと考える栗山監督は、坂本には代打という役割を託すしかないかもしれない。それでも坂本なら技術的には無限大の引き出しがあり、ここ一番で代打の切り札という難しい仕事をこなしてくれるに違いない。国際試合での経験値も高い坂本は、源田のアドバイス役として、ともに表と裏で日本代表を支えてくれるはずだ。

 1988年度──昭和生まれの最後の世代がWBCにはまだ必要なのだ。田中将大と坂本勇人という投打のピースを加えた時、史上最強の日本代表が完成する、と言ったら大袈裟だろうか。