ともに勝てば初優勝となった全国高校サッカー選手権の決勝は、岡山学芸館(岡山県)が3-1と東山(京都府)を下し、岡山県勢…
ともに勝てば初優勝となった全国高校サッカー選手権の決勝は、岡山学芸館(岡山県)が3-1と東山(京都府)を下し、岡山県勢として初の日本一に輝いた。強豪校を次々に撃破し、新たな歴史の扉を開いたという意味では、『NEXT 1∞(ネクスト100)』をテーマに掲げる101回大会にふさわしい結末となった。

岡山学芸館を率いた高原良明監督は元Jリーガーの43歳
岡山県の高校サッカーと言えば、作陽や玉野光南の名が知られており、岡山学芸館はいわば新興勢力と言えるだろう。
サッカー部の創部は1998年と歴史は浅く、選手権の出場は2年連続5回目で、2019年度のベスト16が最高位。もっともインターハイではここ2年連続でベスト8進出を果たしており、近年は全国的にもその名が知られる存在となっていた。現在の部員数は135人を数える。
岡山学芸館が他の強豪校と一線を画すのは、街クラブ出身者がメンバーの大半を占めていることだろう。近年の高校サッカーでは、Jリーグの下部組織出身者がチームの主軸をなすチームが増えている。
実際に青森山田、山梨学院、静岡学園と、過去3年の優勝校には、Jクラブのジュニアユース(U-15)出身者が複数メンバーに入っており、今大会でも中高一貫の強化を進める神村学園は例外ながら、2連覇を狙った青森山田(青森県)をはじめ、大津(熊本県)や前橋育英(群馬県)、日大藤沢(神奈川県)などの強豪校には、軒並みJクラブ出身者がメンバー入りしている。
ユースに上がれなかった選手、あるいは最近では自ら高体連を選択する選手が増えてはいるものの、いずれにしてもJクラブのジュニアユースに在籍していたということは、少年時代から各地域で有力な選手であったことは間違いない。いわば狭き門を突破した、選ばれし精鋭たちである。
岡山学芸館と決勝で対戦した東山にも、GKの佐藤瑞起(3年)やキャプテンのDF新谷陸斗(3年)をはじめ、セレッソ大阪、ガンバ大阪など関西Jクラブのアカデミー出身者が数多く主軸としてプレーしている。
【青山敏弘を輩出したクラブも】
対する岡山学芸館のメンバーには、愛媛FCのアカデミー出身選手がいるものの、出場機会はなかった。決勝のピッチに立った13人は、いずれも「街クラブ出身選手」である。
2ゴールで勝利の立役者となったMF木村匡吾(3年)は、中学時代は大阪の「高槻ジーグFC」というクラブでプレーしていた。越境で岡山学芸館に進学したのは、先輩の助言があったからだという。ほかにもトップ下を務めるMF田口裕真(2年)、木村と2ボランチを形成したMF山田蒼(3年)、FWの坂口空良(3年)も高槻ジーグFCから加わった選手たちだ。
大阪府出身の木村にとっては、C大阪やG大阪のジュニアユース出身者の多い東山は、意識せざるを得ない相手だっただろう。
「今日も試合前のミーティングで、そういう話もあったので、ちょっとは意識しました」と振り返る。いわば中学時代は格上の選手たちであり、負けたくない気持ちは強かったはずだ。
そんな相手に対し、身長163cmとは思えない打点の高いヘッドで勝ち越しゴールを奪取し、ダメ押しのボレーシュートも叩き込んだのだから、これ以上ない結果だろう。
「少しは意識しましたけど、どんな相手でも集中して全力でやることは同じ。だからあまり気にせずにプレーしたことがよかったと思います」
キャプテンの井上斗嵩(3年)は「ハジャスFC」出身の選手だ。ハジャスFCはサンフレッチェ広島の青山敏弘を輩出したクラブであり、岡山では強豪として知られている。東山の猛攻を1失点に凌いだ守備の要は、「相手にJユース(出身者)がいるなかで、まずは気持ちで負けないことを意識して戦いました」と振り返った。
東山にはC大阪への加入が内定している阪田澪哉(3年)がいるが、このエースに際どいシュートこそ放たれたとはいえ、ゴールは許さなかった。
「注目選手を倒してやろう、という気持ちが強かった。小粒の集団ですけど、群がって、群がって、全員で止めることを意識しました」と胸を張った。
【岡山でも日本一が獲れる】
2008年からチームを指揮する高原良明監督は、個人ではなく、チームで勝ち取った優勝であることを強調した。
「いろんなチームに優秀な選手がいるなかで、うちには代表経験がある選手もいないですし、ジュニアユースでも(チームの)2番手、3番手くらいの選手だった子が多いと思います。そういうなかでも、サッカーは個人スポーツではなく、チームスポーツなので、チームがひとつになってやればどんな強敵でも倒せる、勝負できるということを証明してくれたと思います」
岡山県初の偉業は、地元のサッカー少年、そして街クラブの指導者にも、勇気と希望を与えたに違いない。
「岡山でサッカーを見てくださった方々に何かを感じていただければうれしいです。岡山の少年団、これからサッカーを続けていく選手にも、岡山でも日本一が獲れるという夢を与えられたら最高かなと思います」
決してエリートだけが成功を手にできるわけではない。岡山学芸館の優勝の軌跡には、人生にも通じるような成功譚が詰まっている。