前半戦5位も…オリックスの逆転劇を導いた投手陣 劇的なリーグ優勝、そして勢いそのままにヤクルトとの日本シリーズ2022を…

前半戦5位も…オリックスの逆転劇を導いた投手陣

 劇的なリーグ優勝、そして勢いそのままにヤクルトとの日本シリーズ2022を制し、26年ぶりの日本一を果たしたオリックス。しかし、その道のりは決して楽なものではなかった。主力の相次ぐ離脱も重なってシーズン序盤は不振に陥り、前半戦は5位。しかし後半戦に入り、山本由伸投手が圧倒的な活躍を見せると、さらに若手剛腕投手陣の台頭もあって波に乗った。逆転優勝を導いたともいえる投手陣を振り返る。

 エース・山本なしに2022年のオリックスは語れない。チーム10連敗中と鬼門であった開幕戦を8回無失点の快投で勝利に導くと、4月は防御率1.55をマークした。その後も6月に防御率0.56という驚異的な数字で月間MVP獲得。9月は4勝0敗、防御率1.38と勝負強さを見せ通算7度目の月間MVPを獲得した。

 最終的に2年連続リーグ最多の15勝、205奪三振で3年連続の最多奪三振、防御率1.68で2年連続3度目となる最優秀防御率を受賞、さらに勝率.750で2年連続の最高勝率をマークし、2年連続の投手4冠を達成するなど記録詰めのシーズンとなった。

 山本以外の先発陣たちも見事な活躍を見せた。右腕では、山岡泰輔投手が安定した投球を披露。7月19日の日本ハム戦終了時点でリーグトップの防御率1.75を誇り、援護に恵まれず勝ち星こそ伸びなかったものの、防御率2.60(規定投球回未到達)と自己最高の成績を残した。

 そして左腕では、宮城大弥投手、田嶋大樹投手、山崎福也投手の3投手が活躍した。宮城は、序盤「2年目のジンクス」に苦しみ、打ち込まれる試合も少なくなかった。しかし流石の修正力を見せ、8月には防御率1.14で自身初の月間MVPを獲得。最終的に2年連続2桁勝利となる11勝をマーク。自身初の完投・完封勝利を挙げるなど成長を見せた。

 田嶋は、持ち前の才能が完全に開花。シーズン序盤から安定した投球を展開すると、6月には3勝0敗、防御率0.86をマークした。山崎福は、レギュラーシーズンこそ5勝にとどまったものの、日本シリーズ第6戦では、5回無失点の好投で勝利投手となり、日本一へ大手をかけた。また、第2戦では先制の適時打を放つ離れ業を披露するなど持ち前の打撃センスを存分に発揮。大一番で素晴らしい活躍を見せる強心臓ぶりを発揮した。

リリーフ陣では若い剛腕投手が続々と頭角を現した

 シーズン終盤、救援投手たちの躍動に舌を巻いたファンも多いだろう。2016年ドラフト6位の山崎颯一郎投手は、10月15日のソフトバンク戦で球団日本人最速の160キロをマーク。甘いマスクから放たれる力強い直球は女性ファンの心を鷲掴みにし、「吹田の主婦」という愛称も定着した。

 また、2020年育成ドラフト3位の宇田川優希投手も最速159キロをマーク。荒削りながらも、圧倒的な球威でパ・リーグの並みいる強打者たちをねじ伏せた。ポストシーズンでも、全7試合中4試合に登板、計5回2/3イニングを無失点に抑えるなどMVP級の活躍を見せた。

 そして、2017年ドラフト4位の本田仁海投手も、本格派としての才能が開花。42試合に登板し、剛腕リリーフ陣の一角を担った。2020年ドラフト6位の阿部翔太投手も、開幕から19試合連続無失点を記録するなど44試合に登板し防御率0.61、22ホールドと驚異的な成績をマーク。ドラフト前の評価を覆すように下位指名のリリーフ投手が飛躍を遂げ、球界に名を轟かせた1年であった。

 投手陣を支えたひとりとして忘れてはならないのが、ジェイコブ・ワゲスパック投手だ。身長198センチの体格を誇る助っ人右腕は、シーズン序盤は先発として起用されていたが、6月終了時点で防御率4.58といまひとつ成績を残すことができずにいた。しかしシーズン中盤から中継ぎに配置転換されると、9月には登板した9試合全てで無失点と好投した。日本シリーズでは5試合で無失点と、大車輪の活躍を見せた。山崎颯同様、リリーフに配置転換させる采配が見事に的中し、まさに中嶋監督率いるコーチ陣が魅せたマジックと言えるだろう。

 ベテランも優勝への原動力の1つだった。チームの守護神を務め、防御率1.57、リーグ3位の28セーブを挙げた平野佳寿投手は、パ・リーグ史上初・NPB史上2人目の「NPB通算200セーブ・150ホールド」の大偉業を達成した。比嘉幹貴投手はピンチで火消し役を担い、30試合で防御率2.53を記録。ともにリーグ優勝まであと一歩に迫った2014年の雪辱を果たした。

吉田正尚が抜け打撃力ダウンは必至も…問題なし?

 主砲の吉田正尚外野手がレッドソックスへ移籍するなど、今季は打撃面での戦力ダウンが見込まれる。チーム史上初の3連覇へ向け、投打ともに更なる充実が求められるシーズンとなるが、投手陣に関しては心配は必要なさそうだ。

 山本には、長い日本のプロ野球史で金田正一氏しか達成していない3年連続の沢村賞がかかる。山崎颯、宇田川は初めてのフルシーズンを迎える。ドラフト1位ルーキーの曽谷龍平投手の活躍にも注目だ。アマチュア球界No.1左腕と評される即戦力ルーキーは、開幕ローテーション入りを果たしセンセーショナルな活躍を挙げることができるか期待したい。

 そして、日本人選手史上4人目の日米通算250セーブ、そして「名球会」入りへ残り“29”と迫った平野佳は、念願の金字塔を打ち立てることができるか。NPB復帰1年目の2021年は29セーブを挙げており、今季も同様のパフォーマンスを見せることができれば、シーズン中に到達する可能性は十分にある。円熟味を増す屈指のクローザーの活躍にも、目が離せない。(「パ・リーグ インサイト」村井幸太郎)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)