Sportiva注目若手アスリート「2023年の顏」 第13回:前田悠伍(高校野球)/インタビュー後編インタビュー前編「…

Sportiva注目若手アスリート「2023年の顏」
第13回:前田悠伍(高校野球)/インタビュー後編

インタビュー前編「自己採点50以下からの逆襲」はこちら>>

 昨年秋、大阪桐蔭・前田悠伍は本来のピッチングができず、もがき苦しんでいた。それでも西谷浩一監督はエースにマウンドを託し続け、その期待になんとか応えてきた。まさに「負けない男」の真骨頂を発揮した秋でもあったが、世代ナンバーワン投手はここから何を見せてくれるのか。



新チームとなって主将に任命された大阪桐蔭・前田悠伍

【150キロは出したい】

── 昨年秋、あれだけのピッチングだったら、負けていても不思議ではなかったが、それが負けなかった。あの秋の状態で負けなかったことは自信になりましたか?

前田 状態が悪いのはわかっていたので、そこは受け止めて、とにかくチームが勝つ、どれだけ自分の調子が悪くてもチームが勝ったらいいと。完全にそこだけ頭に置いて投げた結果でもありました。この状態で抑えられたというのはありましたけど、秋はこれで勝てても、ここから先はごまかしの投球では勝てないし成長もしない。

── 秋はツーシームを効果的に使った攻めが目立った。松尾(汐恩)選手に話を聞いた時、「新チームのことを考えて、夏まではツーシームをほとんど使わなかった」と話していました。

前田 サインが出なかった理由はとくに言われなかったですけど、松尾さんがそういうふうに考えてくれているのだろうというのは感じていました。そのおかげで、秋はより効果的なボールになったというのはあったと思います。

── それまで変化球の軸だったチェンジアップとスライダーに加え、ツーシームにカットボール。投球の幅は広がり、ツーシームのイメージも他チームに広がったと思いますか。

前田 それはありますが、あくまで真っすぐをもう一段上げることが最優先で、そこに変化球をうまく使っていきたい。すべての球のレベルアップです。この冬に体を鍛えて、フォームをしっかりリセットしてつくっていかないといけない。

── 夏に148キロをマークしたけど、これが150キロになるとわかりやすく「成長した」という周囲からの声があるはずです。150キロを出してみたいという思いはありますか?

前田 出せるものなら出したいというのはあります。でも、1球だけ出ても意味はないんで。アベレージを上げていって、そこに比例してマックスも上がるのが理想です。

── 1年秋から常に注目され、結果だけでなく数字も求められる。しんどいなと思うことは?

前田 いや、それはないです。上の世界にいく人は、みんな高いレベルを求められるなかでやっていると思うので。そこを超えていかないと成長できないし、そこまでの選手だと思うんで。そこはどんどん注目も期待もしてもらって、自分のレベルを上げていければいいと思っています。

【昨年夏に経験した甲子園の魔物】

── それにしても1年秋から主戦として投げて、その間のチームは公式戦59試合で57勝2敗。この1年間で2つしか負けていない。昨年のこの時期に話を聞いた時は、「高校生活を無敗のまま終わりたい」と話していました。そこは実現できませんでしたが、驚異的な数字です。

前田 負けた2つは、どっちも僕が投げて勝負がついたので......ここからはもう負けずにいきたい。(春季近畿大会決勝の)智辯和歌山戦のあと、先輩たちを負けさせてしまったという気持ちがすごくあった。それで夏は、自分が投げる試合は負けたくないと甲子園に行ったのに、また下関国際に負けてしまった。

── 夏の負けは、今も強く残っていますか?

前田 すごく残っています。負けた瞬間、頭が真っ白という感覚に初めてなりましたから。3年生を負けさせてしまった、3年生ともう野球ができない......そう思ったら、悔しさもありましたけど、とにかく悲しくて。あの負けがあったから、もう絶対に負けたくないという気持ちがより強くなりました。夏の負けが、秋のピッチングにつながったと思います。

── これまで日本一になったのは?

前田 神宮で2回、センバツ、国体で1回ずつなので、全部で4回です。

── センバツ、夏の甲子園、国体と、あと3回日本一のチャンスがあります。もちろん、まずは春ですが、夏の日本一も見てみたいです。

前田 夏はまだ日本一の経験がないですし、去年あの悔しい思いをした夏の甲子園で勝ちたいというのはめっちゃあります。春と夏の甲子園を経験させてもらって、明らかに雰囲気は違いましたし、みんながいると言う"魔物"も経験しましたから。

── "魔物"はどんなものでしたか。

前田 下関国際との試合も1点リードの9回、先頭バッターが出るまではスタンドから聞こえてくる手拍子にも乗っていたくらいで、余裕はあったんです。でも、先頭打者を出した瞬間、「もうひとり出したらヤバい」と切り替わってしまって。その瞬間、飲み込まれていたんでしょうね。

【テーマは人間的成長】

── 魔物との再戦も興味がありますが、今は大阪桐蔭のエースであり、キャプテンでもあります。もう慣れてきましたか?

前田 少しずつですね。もともと自分がガンガン言うタイプじゃないんですけど、しっかり言いたいことは言うようにしています。

── 自分の指示でみんなが動いたり、空気が変わったり、キャプテンにやりがいを感じたり、面白くなってきたというのは?

前田 面白くはないですけど(笑)。

── 西谷(浩一)監督にキャプテン前田について聞くと、「それくらいを負担に思うようでは。超えてもらわないと」と話していました。あえて前田投手をキャプテンにした西谷監督の思いをどう受け止めていますか?

前田 野球ノートによく書かれているのは「人間的成長」。そこをもっと期待している、キャプテンにしたのもそこにあると。一番経験値のある自分が周りを引っ張り、どうチームをまとめていけるか。そこを通しての人間的成長だと思っています。

── キャプテン効果は感じていますか?

前田 少しずつ周りが見えるようになったり、考えを伝えたりするのはできるようになってきたかなとは思います。

── 最後に、あらためて2023年の決意を。

前田 まだ見たことのない夏の頂点の景色を見たいです。そのためにまずセンバツ。ここで先輩たちに続く連覇を達成して夏につなげたいし、とにかく1つも負けたくない。そのためにも、今までとは違う、もっと成長した姿、ピッチングを見せたいです。

── 秋にはドラフトも待っています。

前田 昨年のドラフトでは身近な先輩である松尾さんが指名されて、しかも1位。プロ野球選手になりたい夢はずっと持っていましたけど、自分も絶対にドラフト1位でプロに行きたいという気持ちがより明確になりました。

おわり

前田悠伍(まえだ・ゆうご)/2005年8月4日生まれ、滋賀県出身。古保利小2年時から高月野球スポーツ少年団で野球を始め、6年時にオリックスジュニアでプレー。 高月中では湖北ボーイズに所属し、1年時にカル・リプケン12歳以下世界少年野球日本代表として世界一。 大阪桐蔭高では1年秋からベンチ入り。新チームとなり主将に任命された。