Sportiva注目若手アスリート「2023年の顏」第8回:中田璃士(フィギュアスケート)2023年にさらなる飛躍が期待される若手アスリートたち。どんなパフォーマンスで魅了してくれるのか。スポルティーバが注目する選手として紹介する。* * …

Sportiva注目若手アスリート「2023年の顏」
第8回:中田璃士(フィギュアスケート)

2023年にさらなる飛躍が期待される若手アスリートたち。どんなパフォーマンスで魅了してくれるのか。スポルティーバが注目する選手として紹介する。

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2022年11月、全日本ジュニア選手権での中田璃士(14歳)

「全日本ジュニアで3位以内に入って、全日本選手権でうまい選手と戦いたいです」

 シーズン前の夏の強化合宿で、そう語っていたのは中田璃士(なかた・りお)。ノービス時代は全日本ノービスBクラス、Aクラスを通じて3連覇。史上5人目となる100点超えも達成した、期待の次世代スケーターのひとりだ。多彩なジャンプ、スピード感あふれる滑り、ちょっとした目線などにも気を配る演技は、小学生の頃からすでに注目を集めていた。

 今季はノービスからジュニアに上がり、選考会を勝ち抜いてジュニアグランプリシリーズに出場。コロナ禍で海外派遣がなかった彼にとって、初めての海外試合だった。

「初めてのジュニアグランプリは、僕の知らない選手もたくさんいて、自分よりもすごくうまい選手とかもいたので、それがやはり刺激となりました。僕も『この選手うまいんだな』って思われるように練習をして、来年のジュニアグランプリに出たいと思いました」

 冒頭の宣言そのままとはいかなかったが、11月の全日本ジュニアで5位に入賞し、12月に初めての全日本選手権を経験。昨季、全日本ノービスの推薦で出場した全日本ジュニアでは17位という成績を考えると、今季は大きく飛躍したと言える。一番滑走を引いた全日本選手権でもショートプログラムにトリプルアクセルを組み込み、男子シングルの先陣をきった。

 内容的にはミスもあり、フリーに進出することはできなかったが、彼にとって大きな収穫になったことは間違いない。14歳で全日本の舞台を踏んだこと、それがこれからのスケート人生に大きな意味をもたらしてくれることだろう。

 今シーズン前から4回転サルコウとトウループにも取り組み、来季はプログラムに組み込むことも狙っている。

「次の試合では強くなった自分を見せたい」と力強く言いきった。

【世界のトップスケーターとも共演】

 中田がスケートを始めたのは、3歳の時。元選手で現在は中田のコーチでもある父の誠人さんの影響もあったという。2018年、初めての全日本ノービス(Bクラス)では3位だったが、「1位を獲れなかったのが悔しかった」という負けず嫌いの一面も。翌年、同クラスで優勝した時は「練習した成果が出たんじゃないかなと思ったのでうれしかったです。(今後は)ジャンプを武器にしていきたいです」と話した。

 ジャンプはもちろんのこと、振り付けや衣装にも当時から目を向けており、「もうちょっと振り付けを大きくしたいです。(衣装については)僕は元々赤が好きなので、衣装にも赤が入っているのがうれしいです。デザインにユニオンジャックが入っているのですが、イギリスで生まれたのでユニオンジャックを背負っていると自然と気合いが入ります」というこだわりも。

 イギリス出身の母を持つ中田は英語も堪能で、家での会話は英語で話したりしているそう。

 多くのアイスショーにも出演しており、2019年には髙橋大輔主演の『氷艶 −月光かりの如く−』にも参加。源氏物語をテーマにした作品で、ステファン・ランビエル演じる朱雀帝の子ども時代を熱演した。同世代が集まる試合とは違い、世界のトップスケーターたちと共演するという経験は、中田にとって大いに刺激になったに違いない。

「戦国時代」から抜け出せるか

 2020年、ノービスAクラスに上がるとジャンプだけでなく「(自分の強みは)表現です」と話すように。無観客試合ではあったが、ジャッジや関係者など見ている人を意識した滑りにはアイスショーで培った表現力が活きていた。翌年10月の同クラスでは102.06点というハイスコアで優勝。しかし、推薦で出場した11月の全日本ジュニアではフリーでミスが相次ぎ、演技後は涙が止まらなかった。世代のトップを走っているからこそ、うれしい思いも、悔しい思いも経験してきた。さらに上を目指すために練習を重ねるなかで、ケガにも悩まされた。

 ジュニアデビューとなった今季、中田は腰痛を抱えていた。9月、2位で表彰台に乗ったジュニアグランプリ(ラトビア大会)は、腰の痛みと戦いながらの試合だった。一度は回復したものの、11月、全日本ジュニアへの予選となる東日本選手権大会前に再び痛み始めた。演技中にも痛みを感じたそうだが、「痛いなかでもきれいに決められてよかったです」とホッとしたような笑顔を浮かべた。

 現在、日本男子は選手たち自ら「戦国時代」と言うように、誰が表彰台に上がるのか読めないほど層が厚い。中田が憧れる宇野昌磨、鍵山優真を筆頭に、グランプリファイナル銀メダリストの山本草太や世界選手権代表の友野一希、全日本選手権2位の島田高志郎、グランプリファイナルに進出した佐藤駿、三浦佳生などがひしめき合い、海外の試合では表彰台に乗れても全日本の表彰台に乗ることは難しい状況だ。

 そこに今後は今季ジュニアグランプリファイナルに進出した全日本ジュニア王者の吉岡希、片伊勢武アミン、中村俊介の世代が加わり、中田璃士や田内誠悟らの世代へと続いていく。中田は現在14歳。フィジカルもメンタルも、ここからどんどん成長していく年齢だ。「2030年のオリンピックに出て、金メダルを獲得したいです」という将来の夢に向かって、ケガなく笑顔で成長し続けていってほしい。

【プロフィール】中田璃士(なかた・りお)
フィギュアスケート選手(男子シングル)。2008年9月8日生まれ、イギリス出身。父でコーチでもある誠人さんも元フィギュアスケートの選手。母はイギリス人。全日本フィギュアスケートノービス選手権大会で3連覇(2019~2021年)。100点を超えるスコアも達成した。今季は東日本選手権で優勝し、全日本ジュニア選手権に出場(5位)。推薦選手として、全日本選手権にも出場した(フリーには進めず)。