Sportiva注目若手アスリート「2023年の顏」第9回:島田麻央(フィギュアスケート)2023年にさらなる飛躍が期待される若手アスリートたち。どんなプレーで魅了してくれるのか。スポルティーバが注目する選手として紹介する。◆ ◆ ◆202…

Sportiva注目若手アスリート「2023年の顏」

第9回:島田麻央(フィギュアスケート)

2023年にさらなる飛躍が期待される若手アスリートたち。どんなプレーで魅了してくれるのか。スポルティーバが注目する選手として紹介する。

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2022年12月の全日本選手権で3位に入った14歳の島田麻央

 14歳の島田麻央(木下アカデミー)は、ノービス時代から数々の優勝歴を残してきた。

 全日本ノービス選手権は2回目の出場でBクラス(9〜10歳)を制し、2020、2021年のAクラス(11〜12歳)は連覇でノービス3連勝。推薦で出場した全日本ジュニアでは、初出場の2020年は3位、2021年は荒川静香以来2人目の中学1年での優勝を果たした。

 練習拠点を東京から京都に移し、木下アカデミー所属になった2020年からはトリプルアクセルに挑戦し始めた。2021年全日本ノービスでは4回転トーループを成功。さらに2022年3月には京都府選手権でトリプルアクセルを初成功。高難度ジャンプの時代に、次世代の逸材と期待されるようになった。

【ジュニアデビュー初年で大躍進】

 そんな新星は今季、満点と言えるようなジュニアデビューを果たした。

 初めてジュニアグランプリ(GP)シリーズ参戦となった8月のチェコスケートでは、ショートプログラム(SP)で3回転ループとダブルアクセル、演技後半に入れた3回転ルッツ+3回転トーループをきれいに決め、スピンとステップはすべてレベル4と、ノーミスの滑りに。自己最高の71.49点で首位発進した。

 フリーは、4回転トーループとトリプルアクセルを1本ずつ入れた挑戦的な構成。2本目の4回転トーループは回転不足で転倒したが、最初のトリプルアクセルを含む6本のジャンプでしっかり加点をもらう。スピンとステップでもレベルをとりこぼさず自己最高の141.16点。合計も自己最高の212.65点で優勝した。

 2戦目のソリダリティ杯(ポーランド)では、SPは連続ジャンプでミスが出て2位発進。フリーでは4回転トーループを4分の1回転不足にとどめ、他の要素は加点をもらって自己最高の148.87点を獲得。

 合計はシニアでも上位を狙える217.68点でジュニアGPシリーズ連勝。シリーズランキングは2試合の得点の合計で、2位の吉田陽菜(木下アカデミー)に18.50点と大差をつける1位でファイナル進出を決めた。

 11月下旬の全日本ジュニアでは、200点台には乗せられなかったものの、フリーでは「2本を入れるようにしてから初めて跳べた」(島田)と話す4回転トーループを決めて連覇を達成。

 その11日後スタートのタイトなスケジュールだったジュニアGPファイナルでも「どんどん挑戦して守らずに攻め、思いきり楽しみたい」と、205.54点で優勝と安定感を発揮した。

【全日本で見せた精神力と確かな技術】

 それから中1週で臨んだ12月22〜24日の全日本選手権は時差もあって万全ではなかったのか、SPではトリプルアクセルは回避する構成にした。

 それでも、最初のジャンプはジュニアGPファイナルまでの3回転ループではなく、基礎点が0.40点高くなる3回転フリップに変更。ジャンプとともにスピンとステップもすべてレベル4にする完璧な滑りで70.28点を獲得。同じジュニア組の千葉百音(17歳、東北高)には0.78点及ばなかったが、4位の好発進となった。

「ジュニアGPファイナルより緊張していて最初は足に力が入らなくなっていましたが、滑り出したら足が動くようになりました。スピードもあまり出せなくて最後のポーズをするまで緊張していたが、そのなかではまとまったと思います。

 シニア選手との大会は楽しみな部分もあったが、レベルが違いすぎるので不安もあった。でも、大きな舞台で70点台を出せたことは自信になると思います」

 しかしフリーへ向けた公式練習では、4回転トーループは苦戦していた。万全な調子ではないなかで高さを出したいという思いか、跳ぶ直前に後ろに引いた腰を少し固定させてから跳び上がっているように見えた。

 島田はそれでも「今シーズンは絶対にトリプルアクセルと4回転トーループを入れた構成に挑戦しようと決めていたので、何の迷いもなく跳ぼうと思いました」と挑戦した。

 最終グループでの演技となったフリーは、公式練習で跳べていたトリプルアクセルに続き、次の4回転トーループも回転不足で転倒するスタートになった。だが、他のジャンプをすべてしっかり決めて132.51点。合計は国内では自身初の200点台の202.79点。トリプルアクセルを2本決めた同い年の中井亜美(MFアカデミー)の追撃も1.30点抑えて3位に入った。

「最終グループに入って、選手紹介で名前を呼ばれた時はうれしかったけど、すごく緊張したし、表彰台もちょっと意識してしまいました。これまでで一番緊張した、というくらいだったから、力が入っていつものタイミングで跳べなかったのが失敗の原因だと思います。

 でも、最初のふたつのジャンプは降りても降りられなくてもないものだと切り替えて、2本失敗しても他のジャンプを失敗しなかったことは、これからの自信になりました」

 高難度ジャンプを成功した選手たちは、他のジャンプでミスをして得点を伸ばせないケースが多かった。一方、トリプルアクセルを2本とも成功して気持ちも乗り、そのあとのジャンプも完璧にこなした中井のように、うまくいけばより乗っていけるのがフィギュアスケートの演技だ。その点で島田は、失敗後にノーミスで滑れたことが、ポテンシャルの高さを証明していると言っていい。

 やると決めたら挑戦しきる心の強さと、大技だけには頼らない技術の確かさを見せてくれた島田。シニア移行は2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪翌シーズンからになるが、強さを見せつけることで間接的に五輪を狙うシニア選手への強力な刺激剤にもなるはずだ。島田のこれからの進化は、日本女子フィギュアスケートの底力アップへ大きな原動力になる。

 島田は2023年2月開幕の世界ジュニア選手権(カルガリー)に出場予定。日本女子史上最年少の14歳4カ月での大会制覇を目指す。

【プロフィール】
島田麻央 しまだ・まお 
2008年、東京都生まれ。5歳からフィギュアスケートを始め、全日本ノービス選手権では2019年にBクラス、2020、2021年にAクラスで優勝。同年、推薦出場した全日本ジュニア選手権を制覇。2022−2023シーズンにジュニアデビューし、GPジュニアシリーズで2連勝(チェコ大会、ポーランド大会)。全日本選手権ではジュニアながら3位に入った。名前の麻央は2010年バンクーバー五輪銀メダリストの浅田真央が由来。