近田豊年氏は現在、ゴルフスクールの校長を務める プロ野球選手時代に“スイッチピッチャー”として注目を集めた近田豊年氏は1…

近田豊年氏は現在、ゴルフスクールの校長を務める

 プロ野球選手時代に“スイッチピッチャー”として注目を集めた近田豊年氏は1991年に現役を引退し、ゴルフ界に転身した。その後、プレーヤーから教える側にシフトチェンジ。現在は関西に18店舗ある「駅前ゴルフスクール」の校長を務めている。「日本ではダントツで球数をいっぱい打ってもらうスクールです。初心者もものすごいスピードでうまくなっていますよ」。ただし、野球との縁が切れたわけではない。むしろ、深まっているという。

「駅前ゴルフスクール」はゴルフクラブ、グローブ、シューズ無料レンタル、レッスン受け放題、通い放題・打ち放題で月額税込1万3200円。ダイエット効果もあって女性会員が激増中だという。「とにかく気持ちよく打ってもらいます。一番大事なのは立ち位置。それを的確に伝えていきます。人それぞれ、いろんなパターンがありますが、僕らにお任せください。体重移動が苦手な人も一発で直しますよ」と近田氏は自信を持って会員をサポートしている。

 野球からゴルフの道へ。最初は手探りだったという。なにしろ、なんのコネクションもなくて転身を決めたから。「阪神にやめますと言った日、電話帳にあるゴルフ場のあ行から順番に、雇ってくれませんか、と問い合わせの電話をしました」。何度も何度も断れた。「あ」から始まり「し」のところでようやく見つかった。「キャディのアルバイトから始め、次の年から研修生になりました。それまでゴルフに興味はなかったけど、1週間もしないうちに大好きになりましたよ」。

 興味深い出会いもあった。「福岡にめちゃくちゃ面白いゴルフの先生がいると聞いて会いに行ったんです。普通、ゴルフとか野球とかどんなスポーツでも感覚で教えていくじゃないですか。ああしたほうがいい、こうしたほうがいいって。この先生にはそれが全くなかった。スイングは全然いじらない。全部数字です。3度開いてください、ボール2センチ左に寄せてくださいって感じ。それで直るんですよ」。近田氏はそのやり方を勉強し、教えることに目覚めた。

楽天初代監督の田尾安志氏に「練習に参加させてほしい」

 まずはゴルフだったが、その後、再び野球のことが気になってきたという。「野球に関しては目を閉ざしていた感じがあったんですが、10年くらい経ったら、それがなくなってきたんです。もともと野球好きですから。また、やってみようって思い始めたんですよ」。草野球で復活したわけではない。何とNPBへの返り咲きをもくろんだ。ターゲットは2004年オフにオリックスと近鉄の合併により、誕生した新球団・楽天だった。

 近田氏は阪神時代の先輩であり、楽天初代監督に就任した田尾安志氏に「練習に参加させてほしい。右でも左でも投げますので見てくれませんか」と頼んだという。なかなか大胆すぎるアクションだが「意外とちょいちょいそういう行動をするんですよ、僕は」と気にせずに突き進んだ。「田尾さんには『いいよ』って言われたので、無茶苦茶練習しました。走って、走って、投げて、投げて。92キロあった体重も68キロまで落としました」。

 だが、楽天への練習参加は実現しなかった。「田尾さんから外国人枠の問題もあるし、難しいって連絡がきたんです。もっとも先日、田尾さんにこの話をしたら、覚えてなかったですけどね」。ともあれ、そう言われれば諦めるしかなかったが、このままで終わりたくもなかった。マスターズリーグに出ることにし、右でも左でも投げた。史上最高のスイッチヒッターと呼ばれ、オリックスや阪神、ダイエーで活躍した松永浩美氏との“スイッチ対決”は話題にもなった。

 ゴルフのレッスンプロも継続しながらの久しぶりの“野球生活”だったが、練習の成果もあってか「右も左もめっちゃ投げられるようになったなぁと思いましたよ」と近田氏は言う。そして、また芽生えた、さらなる野望が……。今度は米国マイナーリーグへの挑戦を決意した。ロサンゼルスでの合同トライアウトに参加したのだ。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)