中村憲剛×佐藤寿人第13回「日本サッカー向上委員会」@中編 1980年生まれの中村憲剛と、1982年生まれの佐藤寿人。2…
中村憲剛×佐藤寿人
第13回「日本サッカー向上委員会」@中編
1980年生まれの中村憲剛と、1982年生まれの佐藤寿人。2020年シーズンかぎりでユニフォームを脱いだふたりのレジェンドは、現役時代から仲がいい。気の置けない関係だから、彼らが交わすトークは本音ばかりだ。ならば、ふたりに日本サッカーについて語り合ってもらえれば、もっといい未来が見えてくるのではないか。飾らない言葉が飛び交う「日本サッカー向上委員会」、第13回は日本中を熱狂の渦に巻き込んだカタールワールドカップについて語り尽くす。
「あのクロアチアなら4バックで守れるんじゃないかと」
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2026年W杯まで続投することになった森保監督
── クロアチアにPK戦の末に敗れた日本代表は、初のベスト8進出を成し遂げられませんでした。2大会連続ベスト16という結果は、終わってみてどう感じますか?
寿人 本当に頑張ったと思うし、戦いぶりは称賛されますけど、もっと何かできたんじゃないかなと思ってしまうんですよ。
ただ、逆に言えば、そう感じられることは、収穫と言えば収穫で。今までは「何ができたんだろう?」という感じだったけど、今回は「こういうふうにしていれば、こうなったんじゃないか」という、後悔に似た想いを感じることができた。楽観的ですけど、一歩踏み込めるところまできたのかなとも思います。
憲剛 システム変更に際しての選手個々の対応力だったり、柔軟性を感じました。5-4-1に対応できるクオリティを持った選手がいたからこそ、あそこまでの戦いができたと同時に、4−3−3もできる選手たちがいたからこそ、勝負どころで4−3−3にしたらどうだっただろうと思ってしまうんです。
どう勝つか、勝つ可能性をどう高めていくかというところでは、森保(一)さんにも4バックにする選択肢があったと思うけど、大会中に培った「5-4で守るリズム」を崩したくない想いもあっただろうから、決断するのは難しかったんでしょうね。
── 森保監督の評価が分かれるところですね。
憲剛 ドイツ、スペインと同じグループになった時に、1位抜けを予想した人はほとんど誰もいなかったと思います。このワールドカップという舞台で、親善試合では体感できない本気のドイツとスペインを相手に、一度ではなく二度も逆転勝ちをしたことは、やっぱり本当にすごいことだと思います。しかもスペイン戦に関しては、うまく術中にハメた感もありました。
ただ、その勝ち方で日本がその先、継続的に進めるかどうか。次の監督が誰になるかという話もありますけど(12月28日に続投が正式決定)、森保さんが続投するとなれば、戦い方の幅を広げていく作業に入るフェーズになると思います。
でも、また次のワールドカップまで「本気の世界」と戦えないわけで、それが本当に悩ましいところ。本気のエムバペを4枚で抑えられるような組織を作っていくことは、アジアの環境では難しいと思います。
寿人 森保さん自身は、すばらしい仕事をしたと思います。勝つ可能性を1パーセントでも上げるという作業を徹底して、実際に勝てないと思っていた相手に勝つことができましたから。
やっぱり、ワールドカップでは結果がすべてなんですよ。どんなにいいアプローチをしても、結果が出なければ評価されるべきではないと思うので、結果を出した森保さんは称賛されるべきだと思います。
ただ、憲剛くんも言ったように、今回の評価と今後のことについては、また違った議論になっていかないといけない。というか、森保さんどうこうではなく、世界で勝つためには、もっと大局的なところを変えていかなければいけないと思いますよ。
── と、いうと?
寿人 やっぱり、アジアで強度の低い戦いを続けているだけでは、世界には到底追いつけないですよ。そこの環境を変えていかなければいけないと思います。これはもう日本だけではどうこうなる話はないので、AFC(アジアサッカー連盟)を含め、アジア全体で考えなければいけないことだと思います。
もちろん、今回の代表選手たちの多くはヨーロッパで日常を過ごしているので、たくましく闘っているなと思いました。その日常を、代表活動でもどれだけ作ることができるか。だからチームだけの問題ではなくて、AFC、日本サッカー協会も含め、いろんな部分を改革していかないとダメだと思います。
憲剛 深い話になってきたな。
寿人 現場サイドで話をしたところで、その日常がなければ、何も変わらないですよ。もっと大きな物事を動かしていけるような組織になっていかないと。
ヨーロッパは今、ネーションズリーグでずっと強度の高い試合をやっていますけど、彼らであっても大陸間のマッチメイクがないから、今回、南米やアフリカ勢に苦戦していましたよね。ワールドカップで結果を出すことを考えれば、「大陸間のマッチメイク」は絶対に必要なんです。ヨーロッパ勢の戦いを見ても、いろんな相手とやらないといけないと感じましたね。
憲剛 でも、今回アジア勢が3カ国(日本、韓国、オーストラリア)ベスト16に残ったわけで、これはどう?
寿人 ただ、ベスト16には残りましたけど、ベスト8にはひとつも残っていない。その差はかなり大きいと思いますよ。
憲剛 たしかに、ベスト8からはまた別世界だったな。
寿人 ラウンド16の戦いは、90分間のなかで勝者・敗者の力関係が色濃く出ていましたよね。でも、ベスト8以降は本当にどっちが勝ってもおかしくない試合ばかりでしたから。
憲剛 今回の決勝はNHKのスタジオでゴンちゃん(権田修一)と一緒に見たけど、「あのクロアチア戦のあとにブラジルとアルゼンチンに勝って、決勝でこの強度でやれる?」って聞いたら、「正直、考えられないです」と。
寿人 ましてやフランスは体調不良者が多く出て、満足に練習もできていませんでしたからね。
憲剛 日常もそうだけど、もはや生まれ持ったものもあることも否定できない。その意味で、僕はあの決勝を見て、すごいと思った一方で、打ちのめされる想いも味わいました。いつになったら日本はこのレベルに届くのかって。守ることにプラスしてボール保持の時間を増やし、攻撃の幅を広げないと、ベスト16を超えていけないかなと思いましたね。
寿人 それは思いましたし、選手自身も言っていました。もちろん、あの戦いでなければベスト16まで行けなかったかもしれないですけど、その先を目指すには、能動的な戦いができないと難しいですよね。
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