直近のカタールW杯をはじめ、たくさんの話題で盛り上がった2022年の日本サッカー界。日本屈指のサッカーマニアの平畠啓史さ…

直近のカタールW杯をはじめ、たくさんの話題で盛り上がった2022年の日本サッカー界。日本屈指のサッカーマニアの平畠啓史さんに、今年の10大ニュースを選んでもらった。

◆ ◆ ◆



2022年の日本サッカー界10大ニュースを振り返る

【チェアマンの交代】

 Jリーグにとって大きいニュースが、村井満チェアマンから野々村芳和チェアマンへの交代です。元プロ選手がやるチェアマンって海外では当たり前で、日本もようやくこういうのが出てきたんだなぁと感慨深いです。

 チェアマンだけでなく、いろんなクラブで社長や経営層に元プロ選手が増えてきていますよね。今プレーしている選手たちも、もしかしたらいつかチェアマンになるのかなとか、社長になるのかなって期待して見ちゃいますよね。

 村井さんもそうでしたが、野々村さんも言葉がわかりやすいですよね。日本って組織のトップが歯切れ悪かったり、なんかわかりづらい言葉使ったりって多いじゃないですか。だからわかりやすく話してくれるトップの人って大事だと思うんです。

 いろいろ変わってくるのはこれからですかね。ルヴァンカップなども変化しますしね。僕はいろんな新しいことにトライしてほしいと思います。失敗したら元に戻せばいいだけだから。これまでのやり方にこだわらないでほしい。

【山下良美審判J1デビュー】

 Jリーグ初の女性審判が誕生したのは、本当にすばらしいことだなと。山下さんが、J3の時のデビュー戦では、僕がDAZNの実況を担当しました。それ以来ずっと気になる存在なんです。

 ステップアップしてJ1を吹いたというのは歴史が動いた瞬間です。我々は今歴史を見ているんですよ。もしかしたら、5年後は女性審判員が当たり前かもしれない。「昔は女性レフェリーがおらんかったんやで」って言える時代がくるかもなって。

 フィジカルやフィットネスを、男子と同じレベルでクリアしているのもすごいことですよ。女性がJリーグに関わる新しい道を作ってくれた。30年前は想像もつかなかった。これからも楽しみですね。

【Jリーグの国立開催】

 Jリーグにとって、国立競技場で試合を開催するというのは大事なことだと思うんです。国立ってやっぱりなんかスタジアムの空気が違う。独特なんですよ。なんか華があってエンターテイメント感がある。いつものJリーグとちょっと違う雰囲気を感じます。

 また、いつもと違うお客さんも来てくれたでしょう。お客さんのなかには国立を見たいという人もいたと思う。だから選手もちょっと違うものを感じたんじゃないでしょうか。選手が器やお客さんを意識して戦うのって、いいことだと思うんです。サッカー専用からしたら客席はちょっと遠いけど、見づらい感じはない。国立で矢沢永吉さんのコンサート見に行きたかった(笑)。

【いわきFCのJ2昇格】

 わずか一年でJ3を突破した。これはすごいことです。JFLからJリーグにあがるところがピークになってしまうケースって結構あるんですよ。でもいわきはJ3のなかでも強さは群を抜いていた。試合内容も突き抜けていました。試合内容とクラブの勢いがマッチしているように見えました。

 いわきって今までのJクラブの作り方とは違う感じがある。アンダーアーマーと一緒になって、何もないところから鍛えていく。肉体を鍛えて相手に勝っていきましょうという。いい選手をいっぱい買ってきたり、キャリアある選手を引っ張ってきたりという感じではない。年齢的にチームが若くみんなで走って、みんなで相手に向かっていくのは、サッカーの原理原則的なところとも言えます。

 フィジカル重視が目立ちますが、細部にもこだわっています。セットプレーもすごく細かい。あくまで相手に勝つためのいろんな項目のなかのひとつとして、フィジカルを鍛えています。

 みなさん、ぜひウォーミングアップをちゃんと見てください。選手の走るフォームがめっちゃ綺麗です。スプリントコーチがいるんですよね。単純な筋肉ムキムキではないんですよ。

【J1昇格プレーオフ】

 やっぱりプレーオフはドラマがあるな〜と。見ていて肩の力が入る。リーグ戦とは違う雰囲気でヒリヒリした戦い。戦いを見ていて吸い込まれていく。

 ファジアーノ岡山、ロアッソ熊本など、J1経験のないクラブが昇格に迫っていくストーリーを見ていて感動しました。熊本がよそ行きのサッカーじゃなくて、ずっと積み上げたサッカーを京都のスタジアムで披露したのがすごくよかった。平川怜のあのシュートがあと数センチ内側に入っていたらどうなっていたのかなと、今でも思うことがあります。

 熊本がJ1に行ける可能性を帯びてきて、クラブの雰囲気ができあがっていった。熊本の方はプレーオフが初めての経験だったけど、大分トリニータは過去に経験していて、えがお健康スタジアムに大分のサポーターが朝5時半に来ている光景を見るわけですよ。それはサポーターだけじゃなく、街のタクシーの運転手なんかも見るわけです。タクシーの運転手さんが「大分の人マジやぞ!」って話していて、そういう経験も初めてだったでしょう。

 初戦が九州対決になったのも個人的にはよかったなと。プレーオフはやっぱり続けていってほしい。やっぱりリーグ戦終盤は、プレーオフに向けた緊張感がありました。

【工藤壮人の死去】

 急すぎてまだ実感がありません。みんなに忘れてほしくないので、あえてここで挙げさせていただきます。

 SNSでサポーターの工藤壮人選手のコメントを見ていて思ったんですが、まだ工藤選手が生きているうちに、もっといいところやいいプレーを言わなきゃいけなかったなと。だから今プレーしている選手たちのいいところって、今すぐどんどん言っていかなきゃと思うんです。

 工藤壮人選手は魂のストライカー。ゴールでスタジアムを沸かすことができる選手。日立台を沸かせるストライカーと言えば北嶋秀朗選手ですが、それを引き継いだのが工藤選手でした。足が速いとか、いっぱい練習したとか、そういうことで身につくものではなくて、パーソナリティが応援される選手です。

 サッカーに対して常にストレートなんだけどフランクな性格。でも真面目な時は真面目。いろんなクラブでプレーしたので、影響を受けた選手も多いんじゃないでしょうか。

【中村俊輔引退】

 ずっとサッカーやってそうって勝手に思ってました。もう一回ピッチに戻ってくるのではと勝手に思っています(笑)。

 サッカー小僧的な選手ですよね。サッカーが好きで好きでたまらないのが、これほどまで伝わってくる選手はほとんどいない。いまだに引退が信じられない。

 キックのフォームのシルエットだけでもわかる選手。シルエットだけでわかる選手ってそんなにいないですよ。それはすごいこと。点を決める、あるいはいいパスを出す選手はたくさんいても、型をもっている選手ってそんなにいない。決して大きくない体でやっていくために、生まれたキックフォーム。中村選手のサッカーへのこだわりが全部詰まっているのがあのフォームです。

 実際しゃべると結構男臭い性格。すごく周りも見えていて、とにかくかっこいい。スパイクへのこだわりもすごい。サッカーの話をしたら止まらない。本当に引退はさみしい。熊本でのラスト試合の笑顔が印象的でした。あれはやりきったからこその笑顔だったんでしょう。

【ヴァンフォーレ甲府の天皇杯制覇】

 ヴァンフォーレ甲府が天皇杯を優勝するなんて、ドラマ性がある。決勝には甲府の応援の方がものすごく来ていました。

 山梨県は韮崎高校があったり、サッカーが盛んな街です。山梨県のサッカーに関わってきた人全員がうれしかった優勝でしょう。中田英寿さんが生まれたのが山梨、そして今年は山梨出身の羽中田昌さんが、山梨学院を率いて全国高校サッカー選手権に出るというのも、なんか山梨イヤーを感じさせます。

 日本のいろんなサッカークラブに、頑張っていたらこんな素敵な未来が待っているという夢を与えてくれた。本当に老若男女に支えられているクラブ。そういうのを見るのが好きなんです。ワールドカップのPKもすごかったですが、天皇杯決勝のPK戦のドラマもすごかったですよ、ほんと。

【横浜F・マリノスJ1優勝】

 まず見ていて試合が面白い! そういうチームが優勝するって気持ちいいですよね。

 誰が見ても面白いサッカー。サイドから崩して中央でドンって決まったゴールを見ると、マリノスっぽいなと思えます。サイドをえぐって折り返す。相手もわかっているのに、崩していけるのがすごい。スピードに乗って、縦に迫力がある。5~6万人入る日産スタジアムでお客さんを喜ばせるには、ああいうサッカーじゃないと伝わらない。

 選手が入れ替わっても、また補強で連れてくる選手が的確ですね。宮市亮選手がケガした時の男の結束力もすごかった。宮市選手のパーソナリティもあると思う。戦力がダウンしたのに、それをプラスに変えられるチームが本当に強いチームです。

 西村拓真、渡辺皓太、岩田智輝がマリノスに移籍してきてから、めちゃくちゃ進化しています。マリノスでは、成長しないと試合に出られないような緊張感があるのではないか。まさに優勝するチームにふさわしいです。

【W杯の日本代表】

 改めてスポーツは偉大だなと。コロナとか政治とか暗い話題が多いなか、ワールドカップで日本が勝ったら明るくなれるってすごいこと。

 先日セルジオ越後さんの来日50周年パーティーで水沼貴史さん、うじきつよしさん、勝村政信さんと僕の4人でしゃべっていたんですが、それこそ全員50〜60歳のおじさんですよ。そんな4人が「堂安すごいっすね!」って前のめりで言い合える。

 もうワールドカップから結構時間が経ったのに、テンションが落ちない。そもそも僕はサッカーの結果で盛り上がるタイプじゃないんですが、それでも今回はすごいなって思います。

 日本中が盛り上がっているのを見るのも、うれしいんですよね。「よかったな〜」って本当に思っています。サッカー関係者ってサッカーの話の時に小難しい話や、ちょっとネガティブな話ってしがちじゃないですか。でも今回はみんなが前のめりになって話してる。

 大会が始まる前にSNSで森保監督批判していた人たちは、全員丸坊主にしてほしいと思った(笑)。批判って言いっぱなしになるじゃないですか。それはよくないですよ、なにも生まない。SNSで森保監督批判していた人たちは、100人ぐらい集まってみんなで坊主にすればいいんじゃないでしょうか(笑)。

 とにかく今回のワールドカップって、「こんなに面白かったっけ!」っていうぐらい面白かったです。

平畠啓史 
ひらはた・けいじ/1968年8月14日生まれ。大阪府出身。芸能界随一のサッカー通として知られ、サッカー愛溢れる語り口が人気で、多くのサッカー関連番組の出演中。平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 日本全国56人に会ってきた」(ヨシモトブックス)など、サッカー関連の著書も多い。