新日本プロレス オカダ・カズチカ インタビュー後編(前編:グレート・ムタやノアへの思いを語る。1・4ではオスプレイvsケニーを「バリバリ意識」>>) 長く新日本プロレスのトップに君臨し続けたオカダ・カズチカが、新人の発掘と育成に取り組んでい…
新日本プロレス
オカダ・カズチカ インタビュー後編
(前編:グレート・ムタやノアへの思いを語る。1・4ではオスプレイvsケニーを「バリバリ意識」>>)
長く新日本プロレスのトップに君臨し続けたオカダ・カズチカが、新人の発掘と育成に取り組んでいる。自ら弟子を育てようと思った背景には、新規ファンを増やすための狙いもあったという。ライト層を取り込むことに天才的な手腕を発揮したアントニオ猪木への思い、今後のプロレス界の展望も併せて語った。
自ら弟子を育成中のオカダ(写真提供/ニッポン放送『TheDeep』)
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【アントニオ猪木に聞きたかったこと】
――新日本プロレス50周年を走り抜けて迎える2023年の1・4東京ドームは、2022年のドーム大会と向き合い方が違いますか?
「そんなに変わらないですけど、2022年は連戦(1月4日に鷹木信悟に勝利してIWGP世界ヘビー級王座初戴冠、翌5日にウィル・オスプレイを相手に初防衛)でかなりキツかったです(笑)。2023年の東京ドームは1・4の1試合だけなので、しっかり集中してドーンと盛り上げたいですね。1・4は特別な舞台ですし、団体の50周年の始まりと締めとなる大会のメインイベントに立てるのは重要。『新日本50周年の主役はオカダだったね』と思ってもらえるんじゃないかと」
――2023年の大会はアントニオ猪木さんの追悼大会でもありますが、オカダ選手にとって猪木さんはどんな存在ですか?
「詳しく知る前に亡くなってしまったので、"大先輩"という以外に表現のしようがありません。ただ、猪木さんという存在を超えたいとは思っていますが、あらためて猪木さんがやってきたことを振り返ると、やっぱり高い壁なんだなと感じます。僕は、まだまだ出来ていない。だから今回の1・4では、しっかり猪木さんに届くような戦いをしたいです」
――オカダ選手が考えているファン層拡大、ライト層を取り込む手腕に関して、猪木さんは天才的だったように思います。
「まさにその通りですね。異種格闘技戦のモハメド・アリとの試合も期待が大きかった分、当時は『世紀の凡戦』と言われましたが、今では"伝説"。いかに話題を作り、大衆をグッと惹きつけるのか。そこの部分を聞きたかったです。『猪木さんは何を考えていたんですか?』と」
【オカダ自身が次世代レスラーを発掘&育成】
――猪木さんの"闘魂"を受け継ついでいくべく、オカダ選手をリーダーにした次世代スター発掘プロジェクトも始まりました(『THEスピリット~闘魂レスラー発掘プロジェクト~』(フジテレビ)。2023年1月9日から放送スタート)。どのくらい応募がありましたか?
「今回は、『年齢・身長・体重の制限なし』という特別な条件にしたんですが、300人を超える応募がありました。1歳の子供からの応募もありましたね(笑)」
――親がプロレスファンなのでしょうか(笑)。そこから、書類と面談を突破して練習生となったのは?
「10人です」
――選考ではどこを見ましたか?
「写真は雰囲気を見ました。見た目のよさという意味ではなく、惹きつけられるものがあるかどうか。周囲からの見られ方、自分の見せ方をわかっているかは写真でもわかりますから。プロレスラーってそこが大事。360度すべてから見られているので、佇まい、その人が持つ雰囲気は重視すべきところだと思っています」
――身体的能力については?
「ひとつでも秀でたものがあったほうがいいのは確かです。ウィークポイントがあってもそれを補うものがあると強いですね。自分ではなかなか見つけられないと思うので、それを発見する手伝いをしていきたいです」
――なぜ、オカダ選手自ら次世代発掘プロジェクトをやろうと考えたんですか?
「単純に『レスラーを育ててみたい』という思いもあったんですが、プロレスの世界に入るためには何をすればいいのかを知ってもらいたい部分もありました。野球やサッカーなどはトライアウトなどがあって、それに向けた対策や練習もできる。でも、プロレスはそれがないですから、もっとオープンにしたいと思ったんです。新日本プロレスの入門テストに受かるにはこれが出来ないとダメなんだ、というひとつの指標になるんじゃないかと。
入門したあとのことも、なんとなくわかってもらえるかなと思います。例えば、プロレスラーはスクワットを500回やっている、ブリッジを3分間やると言われても、『本当に?』と疑問に思う人もいるはず。それは実際にやっていて、そういうことを知ったら、『そんなにキツいなら嫌だ』となっちゃうかもしれないですけどね(笑)。でも、逆にプロレスラーのすごさをわかってもらえるとも思います」
――発掘プロジェクトの様子はテレビで放送されます。その反響などで期待することは?
「もちろんプロレスファンにも見てもらいたいですが、"にわかファン"の人が増えて、その中から『プロレスラーになりたい』と思う人が出てきてくれるとうれしいです。そのためには、僕たち現役のプロレスラーがリング上で夢を与えることも必要。『オカダみたいになりたい』というように、プロレスラーが憧れの存在になるように頑張らないといけないですね」
――ちなみに発掘プロジェクトで練習生になった人の中に、最初からスクワットが500回できた人はいたんですか?
「いましたよ。でも、体力は後からいくらでもついてくると思っているので、今は出来なくても気にしていません。大事なのは、できるようになるまでの過程。その日は200回しかできなくても、次に250回できればいい。そういった努力の仕方を教えていきたいです」
――スクワット500回というのは、どういった意味があるんですか?
「単純に足の筋力を鍛えるのであれば、バーベル・スクワットをやったほうが効率はいいでしょう。でも、スクワット500回を達成することは精神面を鍛える意味もある。漫画の『SLAM DUNK』(集英社)の名言ではないですが、僕たちプロレスラーも『諦めたら終わり』なので。諦めたら3カウントもすぐに入ってしまう。古い方法と思う人もいるかもしれませんが、僕は重要なことだと思っています」
――発掘した練習生に期待することは?
「発掘プロジェクトは、新日本プロレスの入門テストを受けるまでは追います。でも、そこからデビューするまでは僕も特別に目をかけることはなくなります。ただ、僕が自信持って『どうぞ』と紹介できる練習生が揃っているので、入門からデビューまではサクッと行けるんじゃないかなと。みなさんもデビューを楽しみにしていてほしいですし、ぜひ応援してください!」
――オカダ選手が見出したということで、最初から注目度も高くなるでしょうね。
「今までもヤングライオンに指導をしたことがないわけではありませんが、こんなに近い距離で教えることはなかったので、本当に弟子のような感じ。性格、バラエティーに富んだ子たちがいるので、面白いと思いますよ」
【「プロレスのリングでキックボクシング」も面白い】
――2022年8月に第1子の男の子が生まれましたが、プロレスとの向き合い方は変わりましたか?
「そんなに変わってないですね。『ケガなく帰ろう』と強く思うようになったくらいで、『この子が大きくなるまでは頑張る』といった使命感なども生まれていません。僕が闘う姿は、大きくなったあとに映像で見てもらえばいいかな(笑)」
――2022年は新日本50周年の節目でさまざまな興行やイベントがありました。来年はまた新たなスタートとなりますが、オカダ選手はどのように団体を引っ張っていきたいですか?
「50周年は"お祭り"だと思っていました。本当にいろんなイベントがあったんですが、僕たちが闘っていい結果を残していくことは、何周年であっても変わらない。50周年だからこそ得られたことも多いとは思いますけど、それは『50周年じゃないとできない』ということではないと思うんです。勢いを保ちながらいろんなことにチャレンジして、もっと興味を持ってもらえるようにしたい。僕たちも痛い思いをするなら、たくさんお客さんがいる前でのほうがいいですし(笑)」
――新日本プロレスが盛り上がった先にどんなビジョンがありますか?
「プロレス界全体が盛り上がって、格闘技界全体をリードできるようになるのが理想です。時には、他の格闘技団体と協力し合ってもいいと思うんです。例えば、プロレスの大会の中にキックボクシングの試合があったら、『プロレスよりも面白い』と思うファンの人もいると思いますし、逆もあると思うんですよ。そういう交流も、多くの人に届かせる、知ってもらうことを考えればアリじゃないかと」
――ジャンルを越えて、広い意味での交流があってもいいということですね。
「そうですね。総合格闘家がプロレスルールでやる、といったことがあっても面白いと思いますし、お互いの活性化につながる可能性もある。うまくいくかはわかりませんが、失敗を恐れずにチャレンジを続けていきたいです」
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■取材協力:ニッポン放送『TheDeep』毎週日曜20:00〜20:20放送中