松田一冴くんは2番手で1回2/3を1失点…勝利投手になった「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP20…
松田一冴くんは2番手で1回2/3を1失点…勝利投手になった
「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP2022」は28日、第2日が行われた。横浜スタジアムの第3試合は、ホークスジュニアが7-1でカープジュニアに圧勝。今オフにソフトバンクを退団し、巨人に入団した松田宣浩内野手の長男、一冴(いっさ)くんはホークスジュニアの2番手投手として3回から登板し、1回1/3を2安打1奪三振1失点で勝利投手となった。
稀に見る変則投手だ。小学生の最高峰の今大会に出場している投手で、球速が100キロに届かないことは稀だが、一冴くんの場合はこの日投じた21球のうち、最速が91キロで最も遅かった球は65キロ。おおむね90キロ前後のスローボールと、70キロ前後の超スローボールの2種類を投げ分けていた。
1-0とリードした3回の頭から登板。1死から左前打、二盗を許し、2死二塁で相手の3番打者に中前へ同点適時打を浴びた。それでも後続を断つと、4回の攻撃では味方打線が4番・大庭章生くんのソロアーチなどで2点を勝ち越し。その裏、一冴くんは先頭打者を空振り三振に仕留めたところで降板した。チームはこのまま勝ち、一冴くんの手に勝利投手の栄誉が転がり込んだのだった。
「今大会の投手は110キロとか、120キロとか、物凄く速い人ばかりですが、僕はもともと球が遅いので、それを武器にさせてもらいました」としてやったり。「普通の球とめっちゃ遅い球を分けて、コースや高さを意識して投げました」と言う。
周囲が全国トップレベルの速球派ぞろいだからこそ、一冴くんの“遅すぎる球”は相手打者にとってタイミングを合わせにくい。帆足和幸監督は「コントロールがいいので、四球を出すことはまずない。相手打者の目先を変える意味で、速い投手の間に松田を挟むと、練習試合でもほとんど点は取られませんでした。いい役割を担ってくれました」とうなずいた。
プロ90勝の帆足和幸監督「松田は賢い。しっかり考えている」
それだけではない。「今日はクイックで投げたり、普通に足を上げて投げたり、けん制球を入れたりと、今まで学んできたことを生かせたと思います」と一冴くん。あの手この手で相手打者を翻弄した。現役投手時代に西武、ソフトバンクで通算90勝を挙げた帆足監督が「松田は賢い。しっかり考えています。そうでなければ、ピッチャーをやらせていません」と評する投球術だ。
それでいて、一冴くんは「僕は無理に90キロ以下の球を投げているわけではなく、全力で投げてもこれくらいしか出ないのです」とあっけらかんと明かす。投手を務めるのは、9月に活動を開始したホークスジュニアだけで、所属するポルテベースボールクラブ福岡では「セカンド以外、守ったことがありません」と言うのだから驚く。
投球中以外は、ベンチで誰よりも大きな声を張り上げチームを鼓舞するムードメーカー。いや、投球中も時おり気合とともに「オリャー!」と大声を発する。父・松田の野球選手としてのスタイルをずっと見てきたからだ。ホークスジュニアでチームメートの誰かがホームランを放ち生還した時には、全員で声をそろえ「熱男~!」と父のキャッチフレーズを叫ぶことにしている。
チームは今大会1勝1敗。1イニング当たりの平均得点、平均失点による「TQB方式」で準決勝には進めず、敗退となったが、一冴くんは「今日の投球の自己採点は120点」と満足気に笑った。球が遅いなら遅いで、チームに貢献する方法を編み出し実践できるのも、父のプロ根性を肌で感じてきたからこそかもしれない。一冴くんもまた“熱男”である。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)