第101回全国高校サッカー選手権大会展望 後編大会展望 前編>>第101回全国高校サッカー選手権大会の展望を、ユースサッ…
第101回全国高校サッカー選手権大会展望 後編
大会展望 前編>>
第101回全国高校サッカー選手権大会の展望を、ユースサッカーを取材する3人のライターに聞く。後編はトーナメントの右の半分の注目校を紹介。優勝候補が集まったブロックあり。初出場校にも注目だ。
◆ ◆ ◆

夏のインターハイ優勝の前橋育英。夏冬連覇なるか photo by Morita Masayoshi
【東山は上位進出のチャンス】

前大会ベスト4の高川学園が入ったブロック
――前大会ベスト4の高川学園(山口県)が入ったブロックはどうですか?
土屋 東山(京都府)はいいところに入った気がしますね。
松尾 大チャンスですね。
森田 今年の選手たちは1年生の頃から試合に出ているから、経験値があって勝者のメンタリティーもあるし、サッカーを知っています。攻撃のパターンが豊富で、つなぎながら速いサッカーもできて、夏以降はセットプレーもやってきた。
なかなか止められないんじゃないかなって思います。今年こそはと燃えています。福重良一監督も特別な想いがあって、大学時代の同級生で仲のいい青森山田の黒田剛総監督と決勝で戦いたいと。
土屋 当たるとしたら、決勝ですね。
松尾 セレッソ大阪入団内定のMF阪田澪哉(3年)を中心にまとまり、勢いに乗っていけば決勝進出の可能性はありますよね。
森田 今年、阪田は苦しんだけど、そのなかでプレーの幅を広げてきたのはチームとして大きいかもしれません。3月にC大阪入りが発表されたんですけど、これは敢えてそうしたところがあって、注目を集めて警戒されるなかでどうプレーするか。本人も緊張に潰されそうになったけど、福重監督はプレッシャーを味わってほしかったと。
やっぱり苦しんだけど、そこからようやく本来の持ち味プラスアルファでゴール前でも仕事ができるようになりました。昨年以上のインパクトを残してくれれば、勝ち上がれると思います。
土屋 高川学園はどうですか?
森田 昨年と比べると力は落ちるかもしれない。メンバーがガラッと変わって、昨年試合に出ていたのは1人くらい。春先は「史上最弱」って呼ばれていたほどです。でも、期待できる選手はいる。2年生は高川学園中から上がってきた選手たちが面白いですね。
松尾 世代別代表歴があるFW山本吟侍(2年)とか面白いですよね。
森田 山本もそうですし、CB藤井蒼斗(2年)もいいですね。チームで期待されている選手が背負う13番を今年からつけていますし。
あとは個人的に富山第一(富山県)も推したいですね。大塚一朗前監督がモンゴル代表監督になったので体制が変わりましたが、今年は攻撃的なサッカーをしています。大塚さんは5バックで守って勝つ確率を高めていたけど、今年は4-3-3で点をとりに行くサッカーをやっています。今年は今年で面白いと思います。
土屋 プリンスリーグを見に行ったんですけど、前からがんがんハメに行ってゴールを決めるシーンもありました。
【初出場の飯塚に注目】
松尾 大分(大分県)と聖和学園(宮城県)のテクニカルなサッカーを志向するチーム同士の対戦も面白いですよね。
森田 極端にドリブルにこだわったサッカーから、少し針はオーソドックスなスタイルになりつつあるかもしれないですね。
あと、芦屋学園(兵庫県)と日体大柏(千葉県)の初出場同士の対戦も面白そう。それに飯塚(福岡県)は隠れ優勝候補だと思っています。2015年から強化をスタートして、昨年から藤野英明さんというC大阪にいた方をフィジカルコーディネーターに迎えたんです。走り勝つとか、守備の強度とか、あと一歩を詰めていこうと。前からガンガン行くし、終盤に入っても運動量が落ちず、いい状態だと思います。
結果を出すことで徐々に身体能力が高い選手も集まり始めていて、今年は福岡県予選決勝で東福岡も倒したので、すごいですよね。MF池田悠夢(3年)とMF原翔聖(2年)の突破力はなかなかのものがあります。ダークホースというか、結構話題になるんじゃないかなって思います。あとは試合前に美容師さんが髪を切ったりするのも面白い。
土屋 そういう取り組みをやっているんですね。
森田 大事な試合の前は美容師さんが来てくれて、髪の毛をセットしてくれる。心を軽やかにして、いいプレーをしてもらおうという狙いですね。あとは元名古屋の三原廣樹さんがやっている"三原豆腐店"と提携して、練習後にプロテイン代わりとして豆乳を飲んでいるんですよ。そういうのも面白いですよ。
土屋 初戦で対戦する明桜(秋田県)もちゃんと強化していますよね。
森田 原美彦監督がさすがですね。ベガルタ仙台ジュニアユース出身のFW佐藤拓海(3年)は、ユースに上がってもおかしくなかった選手で、チームとしては今年はタレントが結構います。ボランチのMF小野亮輔(3年)も両足でボールが蹴れますし、見るべき選手が多いので見どころがあります。いやぁ、どっちも応援したいな(笑)。
【大津は点を取りきれるチームになった】

昌平、前橋育英、大津など、優勝を狙うチームが集まったブロック
――そして、大激戦が予想されるのが、前大会準優勝の大津(熊本県)が入ったブロックです。
土屋 ここは大変ですね(笑)。
森田 どこにも優勝の可能性があるんじゃないですか(笑)。大津はプレミアリーグでかなり揉まれてよくなったんですけど、選手権初戦で当たる浜松開誠館(静岡県)をプレミアリーグ参入プレーオフで見たら、めちゃくちゃいいチームでした。守備がきちんとしていて、縦に速いサッカーと思いきや、トップ下を軸にボールもつなげるんですよね。FWに坂上輝(3年)がいるのは大きいですね。
松尾 最終ラインもサイズがありますしね。
土屋 とはいえ、大津はいいですよね。終盤、大津はプレミアリーグで6連勝をしているんです。FW小林俊瑛(3年)はもちろん、注目選手に挙げたFW山下基成(3年)が夏以降にレギュラーに定着して、小林選手と2トップを組んでいます。プレミアリーグ後半戦だけで7点とっていて、最後は3戦連発。あそこに彼がハマったのは大きい。点をとりきれるチームになった印象がありますね。
森田 サイドハーフの選手層も厚い。MF田原瑠衣(3年)が疲れて交代したと思ったら、また厄介な選手が出てくる。
土屋 MF岩﨑大翔(3年)とかですね。相手は嫌ですよ。
森田 今年はサイドハーフを途中で変えるのを戦術としてやっていますよね。
松尾 インターハイもそうでしたよね。
土屋 両SBがいいので、サイドハーフが変わっても守備が崩れない。特に右SBのDF坂本翼(3年)は高体連のなかでトップクラスのSBだと思いますね。
森田 初めて今年の大津を見た時に、目についたのが坂本でした。
土屋 パンツにユニホームをしっかり入れて、絶対いい子なんだろうなと僕は思いましたね(笑)。話しても本当にちゃんとした子で、注目したい選手の1人。
松尾 あと今年はセカンドGKに大宮アルディージャの南雄太選手の息子さん、南太童(3年)がいるんですよね。
森田 キャラクターがいいですよね。
土屋 個人的には成立学園(東京都B)が勝ち上がれば、大津といい試合をやってくれるんじゃないかなと。今年の東京都は帝京、國學院久我山、成立学園の3強だったんです。そのなかでも成立学園はいいサッカーをしていて、常に見ていて面白い。
17年ぶりの出場なんですけど、今までは都予選の準決勝、決勝に勝ち上がってくるけど、あと一歩で負けていました。ただ、山本健二監督は(運を)持っている人で、成立学園の歴史で初めて全国大会に出た時も監督をやっていたんですよ。ご本人は韮崎高(山梨県)で1年から3年まで選手権に出場して、すべて国立の舞台を経験しているんです。その山本さんが開幕戦で国立の舞台に帰るのは面白いんですよね。大津と張り合えるポテンシャルはあるチームだと思いますよ。
森田 今年の立正大淞南(島根県)はいい選手が揃っていますね。ただ、このブロックを勝ち抜くのは大変かもしれないですね。
土屋 立正大淞南と初戦で対戦する日本文理(新潟県)もいいですよ。2トップは2人とも馬力がある。トップ下のMF塩崎温大(3年)も効いていて、パスを出せる選手。ゲームの展開によってはダイヤモンドからドイスボランチにも変えられるし、左SBのDF小林倫太朗(3年)はプレースキッカーでかなりのものがある。基本的には馬力があって、前に行けるチーム。新潟県予選でも帝京長岡に完勝して勝ち上がってきたので、面白い気がしますね。
【今年の昌平は本当に強い】
松尾 あとは昌平(埼玉県)ですよね。
森田 今年は強い。
土屋 本当に強い。もし、昌平と前橋育英(群馬県)が3回戦で当たったら、事実上の決勝じゃないですかね。チーム力とタレントの揃え方を踏まえても。
松尾 今年の昌平は、ボランチより前に関しては。誰が出ても遜色ない。いろんな組み合わせがありますよね。
森田 僕は見るたびにMF長準喜(2年)が楽しいなって思いますね。
松尾 サッカーセンスがあって、ボールの受け方もうまいですよね。
土屋 僕はMF佐藤海空斗(3年)ですね。他の選手とは特徴が違うけど、彼がこのチームに軸を通している。昨年の夏にJクラブの練習に参加した時に、フィジカル面で全く負けていなかったらしいです。
松尾 お父さんが柔道をしていたんですよね。本人も少しやっていたみたいですしね。あと、今年の高3の世代は、下部組織のジュニアユースチームのラヴィーダが、初めて全国大会に出てベスト8に入った世代。そういうのも含めて期待の年なので、日本一を獲りたいはずです。FC東京に入団が内定しているMF荒井悠汰(3年)もいます。彼は本当にフィジカルが強い。
森田 ゴリゴリですね。
土屋 ゴリゴリだけどうまさもある。
森田 この前撮影をしていて思ったんですけど、全部目線と違うプレーをするんですよね。ドリブルする時はパスをするように横を見ているし。逆にわかりやすい(笑)。
松尾 セットプレーのキッカーとしても有能ですね。ボランチのMF土谷飛雅(2年)もいいキッカーで、FKやCKから点をとれるのは大きいですよね。
土屋 その昌平と対戦する近江(滋賀県)はどうですか?
森田 近江は一昨年初出場した時の2回戦で神村学園に負けたのが悔しかったみたいで、今年は強いところと戦って勝利してインパクトを残すのが目標だと。プリンスリーグ関西の最終節で興國(大阪府)と対戦して、守備をしっかりやって何もさせなかった。うまいチームでもこうすれば抑えられるという自信があると思うので、その再現は狙えるんじゃないかなって思います。ただ、昌平は強いし、前橋育英も強い。
【穴がない前橋育英】
松尾 前橋育英は昌平と一緒で選手層が厚くて、誰が試合に出ても力が変わらないですね。
土屋 いわゆる穴みたいなのが、本当にゼロ。誰が出ても穴にならないんですよ。ラージグループが20人以上いる気がします。レギュラーは決まっていますけど、誰かが欠場しても代わりに出てくる選手も遜色ないレベル。注目選手で挙げたMF青柳龍次郎(3年)はいいですね。
松尾 いい選手ですね。
土屋 ボランチで青柳選手がよすぎて、ケガで離脱していた昨季のレギュラー・MF根津元輝(3年)も結果的にSBをやっているんですよね。それは青柳とMF徳永涼(3年)のコンビがよいので右SBに回したんですけど、結果的にそれもハマっている。
そういうのをシーズン終盤にプレミアリーグの舞台で試せているのもいいし、やっぱり山田耕介監督の目利きがすごいですね。初めて根津くんをSBで使った試合で彼が2点とって、起用の目処が立ったんですよ。山田監督は先生のほうは定年退職されて今は時間がある。自分で分析もされていて、改めてサッカーへの情熱が再燃しているという感じがありますね。今年のチームにそれがすごく反映されている感じがします。
松尾 山田監督が根津をSBにしたのはもう1個理由があるみたいで、大学に行ってプロを目指すのであれば、そっちのほうがもっと上のステージを目指せるんじゃないかと。先を見て起用できる監督の目はすごいですよね。
土屋 毎年そうだけど、総合力が高い。シーズン途中にBチームやCチームから上がってきた選手がポジションを掴んだりしているので、チームの和もある。強いと思います。