第99回箱根駅伝が間近に迫ってきた。 今大会は、駒澤大学が出雲駅伝、全日本大学駅伝を制し、チーム史上初の3冠を賭けたレースになり、青学大にとっては2連覇を目指す戦いになる。優勝争いは、この2チームだともっぱらの評判だ。今回、残念ながら本戦…
第99回箱根駅伝が間近に迫ってきた。
今大会は、駒澤大学が出雲駅伝、全日本大学駅伝を制し、チーム史上初の3冠を賭けたレースになり、青学大にとっては2連覇を目指す戦いになる。優勝争いは、この2チームだともっぱらの評判だ。今回、残念ながら本戦出場はかなわなかったが、数々の名ランナーを育てた神奈川大学の大後栄治監督は、今回の箱根をどう見ているのだろうか。
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神奈川大学の大後栄治監督が予想をしてくれた(2018年撮影)
──今回の箱根は、どこのチームが優勝を争うと予想していますか。
「駒澤大と國學院大が強いなと思っています。駒澤大は出雲駅伝、全日本駅伝をノーミスで制して、隙がないですよね。選手が粒ぞろいで、大エースの田澤(廉・4年)君がいる。國學院大も出雲、全日本ともに2位で、安定して上位につけています。キャプテンの中西(大翔・4年)君をはじめ、平林(清澄・2年)君、伊地知(賢造・3年)君、山本(歩夢・2年)君らが揃っている。ここに青学大が割って入ってくる感じじゃないですか」
──青学大は、駒澤大の対抗馬にはならない?
「青学大は、選手層が非常に厚く、力もあります。でも、出雲、全日本と気になったのは若干、ブレーキの区間が出ていることです。青学大の連覇時の強みは大きなミスがなかった。最近は選手層が厚い分、選手間の競争が激しいので、選ばれた選手がレース前にコンディションのピークを迎えてしまっているのかもしれません。出雲も全日本もそれが原因で4番、3番に甘んじているのではと思います。しかしながら、そのなかでも前回の箱根はしっかり修正して優勝しました。今回も修正して本番を迎えられるか。それができれば青学大にも十分、総合優勝のチャンスはあります」
──國學院大の前田康弘監督は、「1区がキーになる」と語っています。
「1区で確実に先頭争いの波に乗りたいからです。駒澤大や青学大に単独で先頭を走らせたくない。特に青学大の選手は、テレビカメラのうしろで走っていると気分が乗ってきて、ものすごい力を発揮する傾向があります。できれば駒澤大、青学大と絡みながらレースを進めたい。うまく波に乗れば2区以降は計算がたつのだと思います。あわよくば5区で往路優勝のチャンスが出てくると思います」
──駒澤大、國學院大、青学大の3校の優勝争いで勝敗を分けるものは何になりますか。
「5区、6区だと思います。この3校は平坦なコースでは駒澤大の田澤君が秀でていますが、あとは拮抗しています。それほど差がつかない。おそらく4区終了時点で1分30秒以内に3、4校は入り混じっていることが予想できます。5区の山上りで差が出て、往路を制するところが決まると思います。5区、6区の特殊区間で駒澤大が完璧な走りをしてしまうと、完全優勝の可能性が高いと思います」
──上位3校に絡んできそうな大学はどこになりますか。
「順天堂大も力量があります。出雲、全日本とチームとしての注目度が高くなかったため目立っていませんが、チャンスがないわけではありません。長門(俊介)監督としては、2024年が本当の意味で優勝を狙えるチームだと考えているような気がします。中央大も今回は台風の目になる予感がします。本来は優勝争いに絡んでもおかしくないチームだと思います。しかしながら本来のスピードがまだロードに活かされていない感じがします」
──シード権争いは、どう予想していますか。
「シード権争いは、非常に難しいですね。今回、戦力が拮抗しているので。そのなかで創価大は、手堅い駅伝をするのでシード圏内に入ってくるでしょう。東洋大もエースの松山(和希・3年)君を欠いていますが伝統校らしくまとめてくるでしょうし、法政大もしっかりと走ってくるでしょうね。城西大も楽しみな大学です。早稲田大は、主力が力を発揮できるかですね。東海大は吉田(響・2年)君が外れたのが非常に大きい。帝京大はトラックシーズンこそ元気がなかったですが、距離が長くなると力を発揮してきますからね。そうなると、ある意味、どこにでもチャンスがあるような気がします」
──シード権を確保するためのポイントは何になりますか。
「ブレーキを最小限に抑えることと、最後はゲームチェンジャーを復路に残せているかだと思います。どのチームも主力選手は往路に配置しなければシード権内でレースを進めることが難しくなります。でも、後半にゲームチェンジャーを残せるチームは、最後にシードを確保してくると思います」
──大後監督が個人的に期待しているチームはありますか。
「私は幸運にも過去に全日本大学駅伝で3回、箱根駅伝で2回(内、往路優勝を3回)優勝を経験しています。優勝することでプラスになる要素と、難しさや苦しさを感じ始める要素もあります。優勝に辿り着ける監督って、そう多くはないですし、簡単ではありません。そんななかで、そろそろ30代、40代の若手監督が全日本や箱根を制する時代になっていくのだろうと思っています。そこに今一番近いのが國學院大の前田監督です。前田監督とは合宿地や練習で一緒になることがあります。國學院大は出雲で1勝(2019年)を挙げていますので、必然的に次は全日本か箱根をターゲットにしている。特に箱根は往路と復路、別々の優勝がありますので、まず勝つことが大事です。駒澤大出身の前田監督が師匠の大八木(弘明)監督を越えることに監督陣としての継承があり、意味のあることだと思っています」
──師弟対決での優勝争いは、盛り上がりそうですね。
「國學院大は、往路優勝を目指していると思います。しかしながら駒澤大は出雲、全日本とほぼノーミスですからね。同じ展開になると、駒澤大が有利です。本当に穴がない。また、単に走力だけではなく、これまで苦しいことを乗り越えてきている。精神的な隙もないように感じます。今年のチームは大八木監督の理想とするチームになっている。だから、簡単には崩れない。箱根を制して、大学駅伝3冠を獲る可能性はすごく高いと思います」