(写真:六川 則夫)「俺はMFとしてロシアW杯のピッチに立つ」 先日のイタリア取材で、本田圭佑はこう断言した。MF、つまりかつて自分がプレーしていた中盤の中央エリアで躍動する—。これこそ、ここ数年ミランや日本代表でサイド…


(写真:六川 則夫)

「俺はMFとしてロシアW杯のピッチに立つ」

 先日のイタリア取材で、本田圭佑はこう断言した。MF、つまりかつて自分がプレーしていた中盤の中央エリアで躍動する—。これこそ、ここ数年ミランや日本代表でサイドの位置で苦しんできた本田が描く、復活へのロードマップである。

 香川真司が左肩の脱臼でチームを離脱した。開始10分で途中交代となった先日のシリア戦では代わりに倉田秋が起用されたが、後半、FW登録の本田が本職である中盤中央の位置に入り、攻撃の中心を担った。

 時間にして約30分のプレー。鋭いスルーパスや攻撃に変化をつける緩急のパスは不完全な場面もあり、まだまだかつての感覚を取り戻してはいない。それでも中盤中央で隙間を見付けてはパスを受け、そこから縦、左右と的確にボールを展開していく様はプレーメーカーそのもの。それは香川や清武弘嗣らの速いテンポでのパスさばきとはまた違う、“インサイドハーフ本田”が出せる間とタメのある独特のリズムだった。

 イラク戦の舞台であるイラン・テヘラン。この時期、試合が行われる夕方の気温は30℃を超える酷暑である。ハリルジャパンが本来目指す、高い位置からの守備と素早い攻守の切り替えといったスピーディーな展開を90分間続けることは、とても現実策とは言えない。そこでカギとなるのが中盤での本田の存在、そして彼のサッカー観である。

 先日の取材で、本田はこんなことも述べていた。「みんな、攻撃は流動的にやったほうがいいと勘違いしているところがあるけど、俺は、基本的に攻撃はあまり選手が動き過ぎないほうが成立させられると考えている。突っ立っているという意味ではない。相手の動きを見ながら、いかに効率的にスキを突くか。具体的にトップ下やインサイドハーフやったらどこを狙うか。一番は相手ボランチの背後や脇。ちょっとのスペースかもしれないけど、そこにスッと入ってパスを受けただけで敵は混乱する。逆に自分が消されたら、今度は相手の背後が空いてくるからそこを味方がシンプルに使う。俺が何でMFのほうが生きるかといえば、こういう戦術的な駆け引きや動きが一番得意からなんよ」

 熱波を浴びながらのプレーとなるイラク戦。効果的にボールを動かし、人も効果的に動かなければならない。普段よりも一瞬の判断が試合を左右する。駆け引き上手と自負する本田なら、どんな決定機に結び付けることができるか。

 すでにミラン退団を公言している。苦しんだイタリアでの3年半。ただ本人は、ポジティブにも捉える。「セリエAの戦術レベルはほんまに高かった。当然ながら、サッカーは相対的な競技。相手の出方や状況によって、その都度自分たちのプレーと戦術を柔軟に変えないといけない。そこの重要さ、本質を理解できたことは俺の財産。だからこの感覚を、戦術的な引き出しをより生かせる中盤で発揮したい」

 中盤中央で先発となれば、ザックジャパン時代以来となる。復活に向けた第一歩。戦術的経験値も重ねた本田は、あのときよりも深みのあるMFとしてピッチに立つ。   

文・西川 結城