Bリーグでは2020−21シーズンより「アジア特別枠」を設け、アジア地域での市場拡大を図っている。フィリピン、中国、韓…
Bリーグでは2020−21シーズンより「アジア特別枠」を設け、アジア地域での市場拡大を図っている。フィリピン、中国、韓国、インドネシアと、さまざまな国々から選手がBリーグに集まってきているが、そのなかでも滋賀レイクスに所属するキーファー・ラベナのSNS人気は突出している。
ラベナのツイッターのフォロワー数は約76万4千人(12月23日現在)。インスタグラムのフォロワー数も42万5千人。Bリーグの人気選手である富樫勇樹(千葉ジェッツ)や篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)のツイッターフォロワー数がそれぞれ16万2千人、5万9千人だから、ラベナのすごさがわかるだろう。
ちなみに、NBAで活躍する八村塁(ワシントン・ウィザーズ)と渡邊雄太(ブルックリン・ネッツ)ですら、ツイッターフォロワー数は両者とも21万人強だ。
Bリーグでプレーを始めて2シーズン目。まだラベナのことを知らない日本のバスケファンも少なくないだろう。圧倒的なSNSフォロワー数を持つ29歳のガードとのインタビューで、人気の秘密を探ってみた。
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圧倒的なSNSフォロワー数を持つラベナとは?
── 今回インタビューを申し込んだのは、ラベナ選手のSNSフォロワー数が圧倒的で驚いたからなんです。あなたのフォロワー数がこれだけ多いのは、なぜだと思っていますか?
「フォロワー数が増え始めたのは、僕が大学(アテネオ・デ・マニラ大学)にいた頃なんだけど、僕の大学はバスケットボールチームが強くて有名で、何度も優勝を重ねてきた伝統校なんだ。僕がそこでプレーを始めて、同時にSNSを含めたインターネットでいろんな情報が拡散しやすい時代になったので、僕のSNSのフォロワー数もそれだけ増えたのだと思うよ。だから、タイミングが完璧だったと言えるだろうね」
── Bリーグのアジア枠選手第1号は、ラベナ選手の弟のサーディ・ラベナ(三遠ネオフェニックス)選手ですが、弟さんよりもフォロワー数が多いですね(サーディのツイッターとインスタグラムのフォロワー数はそれぞれ19万1千人、37万人)。
「んー、まあそうだね。たしかに僕はサーディよりもフォロワー数が多い。だけど、彼のほうが獲得した優勝回数は多いんだよ(大学時代の優勝回数はキーファー2度、サーディ3度)、ハハハ。だから、僕がフォロワー数のことを持ち出したら、彼は優勝回数で反撃してくる感じさ。
それはさておき、僕らはふたりとも違った意味で人々に認知されているし、兄弟だから本気で争っているわけじゃないよ。僕らはそれぞれに自分たちがいる立場を誇りに思っているし、日本でそうやって誇れるキャリアを続けていきたいよね」
── サーディ選手とSNSのフォロワー数について話すこともあるんですか?
「頻繁にはないよ。SNSはなくてはならないもの、というわけではないしね。大事なのは、フォロワー数よりも中身。つぶやくのなら責任を持ってつぶやかないといけない。
僕などはツイッターとインスタグラムを合わせて120万人ほどのフォロワーがいるわけだけど、つまりはそれだけ多くの人々が僕のことを注視しているということなんだ。だからいつも社会的な責任感を持っておく必要があるし、SNSに何かをあげるということは、自分のクラブや組織、自身のすべての行動を反映するものであるという意識がなければならないと思っているよ」
── SNSに何かをアップする際には、常に気を配っているんですね。
「そのとおり。インスタやツイッターだけではなくて、インターネット全般に言えることなんだけど、何かを残す時には細心の注意を向けるべき。なぜなら1度、ネットにあげたらそれが一生残るから。あまり自身の私生活を見せすぎないようにすべきだよ。
だけど実際、日本に住んでいると、何かをアップしないのも難しいんだ。日本はとても美しい国だし、僕の住んでいる滋賀にはきれいな琵琶湖もあって、そういう僕が訪れた場所の光景や音などをみんなに知ってもらいたいという衝動を抑えるのに苦労しているよ(笑)。
ただ、なんでもかんでもあげるべきだとは思わない。自身のプライベートなことは自身のなかにとどめておくほうがいい。すべてをSNSで披露する必要なんてないんだから」

フィリピン人のラベナは滋賀で暮らしている
── あなたとサーディ選手は、お父さんがフィリピンのプロバスケットリーグで元スター選手だったフェルディナンド・"ボン"・ラベナさんで、お母さんのモジーさんも元バレーボール選手。妹さんのダニ・ラベナさんも現在フィリピンでプロバレーボール選手として活躍(アカリ・パワー・チャージャーズというチームに所属し、同チームでモジーさんもマネージャーを務めている)されていて、ふたりともいわばフィリピンの「華麗なるスポーツ一家」の出です。SNSでの人気は、有名なアスリート一家に育ったことも関係していると思いますか?
「そうだね。そこは要因の大きなひとつだと思うよ。両親ともアスリートで、きょうだいも皆、プロのアスリート。僕らのように家族にアスリートだらけという例は、フィリピンで少ないと思うしね。みんなが僕らをよく知ってくれているのは、そのおかげもあると思う。
その意味では、僕らはあくまでいち個人ではあるのだけども、そういう家族を持っていることの責任も背負っていると言える。多くの人たちが僕らを個人として見てくれている一方で、ひとつのファミリーの一員だという見方もするから、家族とのつながりを密にして、僕らは僕らの家族を代表しているのだと認識しておかねばならないし、発言ひとつとっても責任を持ってなければいけないんだ」
── ラベナ選手自身はフォロワー数を日々、数えたりはしていますか?
「いや、それはしていないな。それほどフォロワー数を気にしてはいないから。だけどフォローしてくれている人たちには感謝しているよ」
── フォロワーの多くがフィリピン人なのではないかと想像するのですが、日本人はどのくらいいるでしょうね。
「うーん、少なくとも1万人くらいは日本のファンじゃないかな。おおざっぱな推測なんだけど(笑)。だけど僕は今、日本にいるわけだし、僕のことを見てくれている日本の人の数は増えていると思う。仮に本当に1万人いたとしたら、それはものすごく大きな数字だよ。日本のファンの前でプレーすることは、喜びを与えてくれるんだ」
── 逆にラベナ選手自身がフォローしている有名人もいますよね。頻繁にSNSでチェックする人などはいますか?
「毎日この人は絶対にチェックしなくちゃ、という人がいるわけじゃないんだけど、たとえばレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)やクリスティアーノ・ロナウド(前マンチェスター・ユナイテッド)は誰もがフォローし、注視している人物だよね。たとえ彼らが何もつぶやいたりしていなくても。
だけど、彼らのような人たちがつぶやいたりした時は、何かを学ぶことができたりする。彼らがどうやって体のメンテナンスをしているのか、彼らのライフスタイル、人知れずどんな努力をしているのか。
彼らのような人たちからは刺激をもらうし、彼らがどれだけファンやフォロワーを大事にしているかも感じられるよね。もしレブロンやロナウドがそういった人物じゃなかったら、今のような立場にはいないと思うんだ。だから彼らを見習って、僕も多くのファンたちに感謝の念を持ち続けていられるところがある」
── ラベナ選手はジョーダンブランドの契約選手でもありますね。これも人気や影響力がある証拠だと思います。
「そうだね、アジアでは僕、八村塁選手、グオ・アイルン(中国リーグ・遼寧レパーズ)の3人がジョーダンブランドの契約選手なんだ」
── アジアで3人だけで、そのなかに入っているというのはすごいことです。
「ほんとに。3人を比べても、グオ選手の中国は人口が10億人以上いて、八村選手はここ日本ではもちろん大人気。で、フィリピンの僕と来るわけだけど、僕は中国や日本と比べるとずっと規模の小さな国の出身だし、ふたりと比べて体も小さい(八村203cm、グオ192cm)。
だから今でも、なぜ僕が選んでもらえたんだろうと不思議な気持ちになったりするよ。だけどマイケル・ジョーダンという史上最高級の選手のブランドの一員となれば、とても光栄だ」
── ラベナ選手はNBAもよく見るんですか?
「うん。ずっと見て育ってきたよ。特に好きなのはコービー・ブライアント(元レイカーズ/2020年にヘリコプター事故で他界)。天国で安らかに眠ってくれていたらいいんだけど、彼が示していたメンタリティ、バスケットボールに取り組む姿勢、試合で見せるムーブ......彼は僕に大きな影響を与えたひとりなんだ。
今の選手だと、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)の大ファン。あとはデビン・ブッカー(フェニックス・サンズ)も好きだね」
── ドンチッチやブッカーのムーブをマネしたり、取り入れたりしますか?
「時々ね。たいていは練習で試す程度なんだけど(笑)。試合ではなかなか出せないよ。だけど彼らの動きをコピーして試すことは、たまにはあるよ」
── あなたの「キーファー」という名前は、お父さんがアメリカの人気テレビドラマシリーズ『24』で有名な俳優キーファー・サザーランドが好きだからつけたと聞きました。
「そうなんだ。たしか、キーファー・サザーランドが映画『ロストボーイ』に出ていた頃(1987年)からだと思うんだけど、父はとにかく彼のファンでね。
── ラベナ選手も、自身の名前は気に入っていますか?
「もちろんさ。ありふれた名前じゃなくて、ほかの人とも違うしね」
── ラベナ選手もキーファー・サザーランドがお好き?
「間違いないね。『24』も見たし『Designated Survivor(邦題『サバイバー:宿命の大統領』)』も楽しんだよ。僕も大ファンさ」
── 滋賀という街はどうですか? 日本のファンとは言葉の壁もあると思いますが。
「滋賀に来て2年目だけど、すっかりお気に入りの場所になってしまったよ。自宅の近くにお気に入りのコーヒーショップがあって、そこでコーヒーを飲みながら本を読んでいると、時々、子どもたちが僕のところに来て「写真を一緒に撮ってもらっていいですか」と言ってきたりして、彼らとハイタッチを交わしたりするんだ。
ファンから声をかけてもらえるのは本当にうれしいし、そういう時にはフィリピンの旗により誇りを感じる。僕以外にも、多くのフィリピン人が家族から離れて外国で一所懸命に仕事をしている。僕もそうしているひとりだから、フィリピン人としての誇りを感じるんだ。
今はクリスマスシーズンで、フィリピンでは毎年この季節、盛大にお祝いをするんだけど、母国の家族のために脇目も振らずに働くフィリピン人のみんなのことをすごく尊敬している。だから、日本でファンたちから声をかけてもらう時は誇りを感じ、その気持ちをほかのフィリピン人にも捧げたいとすら思うよ」
── 滋賀にもフィリピンから働きに来ている人たちが大勢いるんですね。
「うん。数人に会ったことがあるよ。守山とか草津とか、場所はバラバラだけど。彼らはレイクスのホームゲームにも来てくれたりもする。京都や大阪などから僕らの試合を見に来てくれるフィリピン人もいるんだ」
── 滋賀にもフィリピン人のコミュニティがあるのですか?
「おそらくね。滋賀にいるフィリピン人は余暇で来ているわけじゃなくて、実際に住んで、コミュニティを形成していると思う。みんな働き者さ。仕事がある時はみんなヘトヘトだと思うんだけど、週末になれば集まったりしているんじゃないかな。僕もフィリピン人が近くにいてくれるとうれしいよ」
── そのフィリピンを離れて、日本でプレーする決断は難しかったのではないですか?(ラベナは2017年のドラフト1巡目全体2番目でフィリピンプロリーグ「PBA」のNLEXロード・ウォリアーズから指名を受けて入団した)
「そうだね、そんなに簡単ではなかった。海外でプレーすることは僕の夢ではあったけど、一方で、母、父、妹から離れるのは難しかったね。だけど、弟のサーディが僕より先に日本でプレーを始めていたから、日本に来ても家族がいるんだと思えて心強かったよ。
自分に与えられた最大の機会を逃したくなかった。それは、サーディにも言えることだと思う。僕ら兄弟が同じ国でプレーしていることは心強いし、できるだけ連絡を取るようにしているよ」
── 来年はフィリピン、日本、インドネシアの共催でのFIBAワールドカップがあります。そのなかでフィリピンはメインのホスト国です。ラベナ選手もフィリピン代表としてプレーする可能性がありますが、この大会へのモチベーションはいかがですか?
「ワールドカップはおそらく2023年で最大のスポーツイベントだよね。大会へ向けてみんな意気込んでいるだろうし、自分がこの大会でプレーできるとしたら、あらんかぎりの力を出してフィリピン代表チームのために準備をするよ」
── ワールドカップの組み合わせ抽選会は2023年4月です。アメリカやヨーロッパの強豪との対戦があるかもしれません。
「抽選会の時は緊張するだろうね(笑)。どのグループに組み込まれるかによって、その先のベスト16、ベスト8と勝ち上がっていくにもかかってくるし。大会へ向けての準備も抽選次第になってくるから非常に大事だよね」
── 最後に今シーズンについて。ラベナ選手やテーブス海選手といった主力選手の故障もあって、現在チームはB1西地区で最下位と厳しい状況です。
「今の成績がチームの努力を反映しているとは思っていないよ。チーム全体はステップアップしていると感じているし、誰かが欠けていたら自分がやるんだ、というメンタリティがある。それが僕らのチーム、滋賀レイクスのいいところなんだ。
まだシーズンは40試合以上も残っているし、何が起きても不思議じゃない。逆襲があるかもしれない。ケガしている選手たちが戻ってきた時、それは可能だと信じているよ」
【profile】
キーファー・ラベナ(Kiefer Ravena)
1993年10月27日生まれ、フィリピン・イロイロ出身。バスケ選手だった父とバレーボール選手だった母との間に生まれる。高校・大学時代から世代トップの逸材と評され、2017年にドラフト1巡目全体2番目でNLEXロード・ウォリアーズに加入。2021年から滋賀レイクスでプレー。フィリピン代表。ポジション=PG/SG。身長183cm、体重82kg。