スーパースターの活躍あり、ブレイクした選手も出て、多くのプレーヤーの好プレーが見られたカタールW杯。今大会のベストイレブ…
スーパースターの活躍あり、ブレイクした選手も出て、多くのプレーヤーの好プレーが見られたカタールW杯。今大会のベストイレブンを決めるとしたら、誰になるだろうか? ここでは5人の識者に、それぞれの11人を選んでもらった。
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【MFの選出は激戦だった】
杉山茂樹(スポーツライター)

FW/エムバペ(フランス)、グリーズマン(フランス)、メッシ(アルゼンチン)
MF/ブルーノ・フェルナンデス(ポルトガル)
MF/ベリンガム(イングランド)、モドリッチ(クロアチア)
MF/フレンキー・デ・ヨング(オランダ)
DF/テオ・エルナンデス(フランス)、グバルディオル(クロアチア)、ハキミ(モロッコ)
GK/シュチェスニー(ポーランド)
GKはボイチェフ・シュチェスニー。ドミニク・リバコビッチ(クロアチア)は次点。3番手がエミリアーノ・マルティネス(アルゼンチン)。割り当てが1人なので、日本のGKとどうしても比較してしまうが、トップとのレベル差は、GKが1番であることを再認識した大会だった。権田修一(日本)も健闘したが、総合力はだいぶ落ちる。
サイドバック(SB)はデンゼル・ダンフリース(オランダ)、3位決定戦でこのポジションを務め活躍したイバン・ペリシッチ(クロアチア)、そしてジュール・クンデ(フランス)が次点。
センターバック(CB)は全体的なバランスの都合上、20歳の新鋭ヨシュコ・クバルディオル1人しか選ばなかったが、ジャン・シャルル・カステレット(カメルーン)、ハリー・マグワイア(イングランド)、ラファエル・ヴァラン(フランス)、ニコラス・オタメンディ(アルゼンチン)も捨てがたい。実力No.1のフィルジル・ファン・ダイク(オランダ)は、チームのサッカーが不安定だった分、選外とした。
サイドハーフ的なウイングを含めたMFは激戦。ジュード・ベリンガムは好チームぶりを発揮したイングランドにあって最も欠かせない選手。ルカ・モドリッチは言わずもがな。フレンキー・デ・ヨングはカウンターサッカーなのか、繋ぐサッカーなのかコンセプトが曖昧なオランダを、なんとかリードする奮闘ぶりが目立った。ブルーノ・フェルナンデスは好選手揃いのポルトガルのなかで一番光った。
オーレリアン・チュアメニ(フランス)を筆頭にカゼミーロ(ブラジル)、ブカヨ・サカ、フィル・フォーデン(以上イングランド)、ハキム・ツィエク(モロッコ)らも選びたかった選手だ。
FWは鉄板。リオネル・メッシ、キリアン・エムバペ、アントワーヌ・グリーズマンで決まり。ウスマン・デンベレ(フランス)、フリアン・アルバレス(アルゼンチン)もチームの成績に貢献した。
【堅い守備と迫力の攻撃をけん引した選手たち】
小宮良之(スポーツライター)

FW/エムバペ(フランス)、フリアン・アルバレス(アルゼンチン)
FW/メッシ(アルゼンチン)
MF/グリーズマン(フランス)、モドリッチ(クロアチア)
MF/チュアメニ(フランス)、アムラバト(モロッコ)
DF/ペリシッチ(クロアチア)、グバルディオル(クロアチア)、ファン・ダイク(オランダ)
GK/ボノ(モロッコ)
守備のソリッドさと攻撃に転じた時の迫力で勝ち上がったチームが多く、その戦いをけん引した選手を主に選んだ。
GKはクロアチアのリバコビッチ、アルゼンチンのE・マルティネスがPK戦で目立った活躍を見せたが、ボノは総合力で上回っていた。昨シーズン、リーガのサモーラ賞(最優秀GK賞)を受けているだけある。
DFではファン・ダイク、グバルディオルの2人が、それぞれ「新時代の守備者」を感じさせた。ペリシッチはオールラウンダーとして選出。神出鬼没であらゆる場所に適応した。
MFではチュアメニが守備力の高さと攻撃への推進力が際立ち、イングランド戦でのゴールは並外れていた。ソフィアン・アムラバトは守備のフィルターとして、モロッコの躍進を支えた。グリーズマンは献身と良識を感じさせるプレーで、スペースを優位にし、最高の裏方になった。モドリッチはプレーメイカーとしてゲームを紡ぎ出し、一つのキックで局面を変えた。
メッシは、文句なしに大会MVPだろう。戦術がまとまらず、突出した選手がほかにいないなか、彼自身が勝利に導くことでチームを変えた。彼そのものがアルゼンチンだった。
得点王のエムバペもメッシに匹敵する活躍をした。あり得ないようなスプリントで疾走する姿は最高のエンターテイメント。決勝でのボレーは圧巻だった。
最後にストライカーはオリビエ・ジルー(フランス)、フリアン・アルバレスで迷ったが、優勝した後者にした。
【GKが目立つ大会になった】
原山裕平(サッカーライター)

FW/リシャルリソン(ブラジル)
FW/エムバペ(フランス)、メッシ(アルゼンチン)
MF/グリーズマン(フランス)、モドリッチ(クロアチア)
MF/アムラバト(モロッコ)
DF/テオ・エルナンデス(フランス)、グバルディオル(クロアチア)、オタメンディ(アルゼンチン)、ハキミ(モロッコ)
GK/E・マルティネス(アルゼンチン)
多くのPKストッパーが現われた今回は、GKが目立つ大会となった。日本とブラジルの前に立ちはだかったクロアチアのリバコビッチ、スペイン、ポルトガルを零封したモロッコのボノも捨てがたいが、決勝も含めた二度のPK戦で勝利をもたらしたE・マルティネスがベストGKに相応しい。とりわけ決勝の延長後半に見せたスーパーセーブがなければ、アルゼンチンの優勝はなかったはずだ。
2人のCBは老獪さと闘志溢れるプレーでアルゼンチンの守備を引き締めたオタメンディと、メッシにこそ翻弄されたものの規格外のポテンシャルを示したグバルディオルを選出。
右SBはしなやかな走りと高精度クロスでモロッコの躍進を演出したハキミの存在感が際立った。左SBは決め手を欠いたが、高い攻撃性能を示し、重要なゴールも決めたテオ・エルナンデスを選んだ。
中盤では、いずれも安定した技術とハードワークを兼ね備えた3人を選出した。アムラバトは圧巻のボール奪取能力に加え、攻撃の起点としても機能。モドリッチはクオリティの高さはもちろん、37歳とは思えない運動量に、ただただ驚かされた。縦志向のチームに幅と時間を生み出したグリーズマンは、守備の貢献度の高さも評価されるポイントだろう。
3トップは伝説となったメッシと、得点王に輝いたエムバペを両ウイングに配置。CFは数字的には4得点のジルーかフリアン・アルバレスの二択になるのだが、ワールドカップ史に残るスーパーゴールを決めたリシャルリソンのインパクトを買った。
【モロッコの躍進は際立っていた】
中山 淳(サッカージャーナリスト)

FW/フリアン・アルバレス(アルゼンチン)
FW/エムバペ(フランス)、グリーズマン(フランス)、メッシ(アルゼンチン)
MF/チュアメニ(フランス)、アムラバト(モロッコ)
DF/テオ・エルナンデス(フランス)、グバルディオル(クロアチア)、サイス(モロッコ)、ハキミ(モロッコ)
GK/リバコビッチ(クロアチア)
番狂わせが多かった今大会。そのなかでも、アフリカ勢として初めて4強入りを果たしたモロッコの躍進ぶりは際立っていた。
とりわけ中盤の大黒柱として八面六臂の活躍を見せたアムラバトは、今大会で最も評価を高めた選手と言っていい。また、最終ラインで堅守を支えた主将ロマン・サイス、右サイドで違いを見せたハキミも、躍進の立役者だ。
その他の選手をポジション別に見ていくと、ベストGKには再三のPKストップで脚光を浴びたリバコビッチをセレクト。左CBは、同じクロアチアの若武者グバルディオルが文句なし。大会をとおして非凡な才能を見せつけ、市場価値も急上昇中だ。
最も頭を悩ませたのが、左SBだ。アルゼンチンのマルコス・アクーニャとニコラス・タグリアフィコはどちらも充実のパフォーマンスで、クロアチアのボルナ・ソサもグループリーグで活躍したが、ここは準決勝でスーパーゴールを決めたフランスのテオ・エルナンデスを選びたい。
ボランチのアムラバトとコンビを組ませたのは、全7試合に先発出場したチュアメニ。アルゼンチンのエンソ・フェルナンデスも捨て難いが、ポール・ポグバ、エンゴロ・カンテが不在だったなか、その代役どころか、すでにタレント軍団の大黒柱であることを証明したチュアメニを選んだ。
前線は、メッシ、グリーズマン、エムバペ、フリアン・アルバレスの4人。大会MVPのメッシ、得点王の怪物エムバペは、もはや問答無用。攻守にわたるキーマンとなったグリーズマンと、ブレイクした若手としてスポットライトを浴びたフリアン・アルバレスを1トップとした。
【アルゼンチンの中盤の要を選出】
浅田真樹(スポーツライター)

FW/エムバペ(フランス)、メッシ(アルゼンチン)
MF/ガクポ(オランダ)、グリーズマン(フランス)
MF/マック・アリスター(アルゼンチン)、エンソ・フェルナンデス(アルゼンチン)
DF/ペリシッチ(クロアチア)、マルキーニョス(ブラジル)、アムラバト(モロッコ)、ハキミ(モロッコ)
GK/シュチェスニー(ポーランド)
まずメッシとエムバペについては、説明不要だろう。どちらも今大会の顔であり、正直、外す理由が見つからない。
優勝したアルゼンチンからは、中盤の要となったエンソ・フェルナンデスとアレクシス・マック・アリスターのふたりを選出。彼らなくして、初戦黒星スタートとなったチームの驚異的な巻き返し優勝はなかったはずだ。
同様に、準優勝のフランスからもグリーズマンは外せない。攻撃のみならず、守備においてもチームへの貢献度は極めて高かった。
また、チームはベスト8で敗退したものの、オランダの新鋭コーディ・ガクポは、今大会で鮮烈な印象を残した新星。スケールの大きさを感じさせ、今後が楽しみな選手だ。
ともに準決勝で敗退した、クロアチアからはペリシッチを、モロッコからはハキミとアムラバトをそれぞれ選出。すでに中盤から前は飽和状態のため、ペリシッチはいくつかの試合でこなした左SBで、アムラバトは急造でこなしたCBに回ってもらうことにした。
そして最後に残った、もうひとりのCBにはマルキーニョスを、GKにはシュチェスニーを選んだ。
前者はいとも簡単に個で相手を封じ込めてしまう凄みを感じたし、後者はサウジアラビ戦での"PKセーブからのこぼれ球のシュートセーブ"がかなり印象的。GKはほかにもモロッコのボノ、クロアチアのリバコビッチら、ライバルが多かったが、生で見た時のインパクトを重視させてもらった。