HO堀江翔太キャプテンは、“信頼”という表現を交えながら勝利を振り返った。「戦術・戦略を信頼してできていたのが、前半でした。信頼して遂行できれば、うまいこといっていたんですが、後半はすこし自分たちで首を絞めるというか、相手のゲームのスピー…

 HO堀江翔太キャプテンは、“信頼”という表現を交えながら勝利を振り返った。
「戦術・戦略を信頼してできていたのが、前半でした。信頼して遂行できれば、うまいこといっていたんですが、後半はすこし自分たちで首を絞めるというか、相手のゲームのスピードに付き合ってしまった部分がありました」
 この日、日本代表50キャップに到達したスキッパーは、与えられた戦術・戦略を“信頼”し、遂行することの重要性を強調していた。

 6月10日、熊本・えがお健康スタジアムで行われた「リポビタンD チャレンジカップ 2017」第1戦で、日本代表はルーマニア代表を33-21で下した。

 意志統一されたキックで相手を背走させ、チェイサーと共にディフェンスからプレッシャーをかける。ボールを持ち続けて力勝負を挑むのではなく、体力を温存しながら試合を有利に進める――。
 ルーマニア戦のメンバー23名中17名が在籍し、今年から日本代表との連係が強化されたサンウルブズも、同様の基本方針で戦ってきた。しかしウィンドウマンス(国際交流期間)前の第14節終了時点で、狼軍団は1勝11敗。
 ゲームプランの有用性を大きくアピールするには至らず、日本代表としてこの日を迎えていた。

 しかしこの日は前半12分、クイックスローインから虚を突くキックを織り交ぜてWTB山田章仁がトライを挙げるなど、デザインされた鮮やかなラグビーを随所で披露。これがジェイミー・ジャパンの目指すラグビーかと、あらためて得心し、頼もしく感じたファンも多いはずだ。

 では、当の選手たちはどうか。
 ルーマニア戦の勝利により、ゲームプランへの“信頼”はより深まったのだろうか。

 サンウルブズでも奮闘を続ける先発PR山本幸輝。他のFW選手も異口同音に「(ジャパンが優勢になると)落としてくる」と語ったルーマニアとのスクラム戦は、一進一退。
 一方、全体のプランに関しては、手応えがあった。
「僕たちが作り上げているゲームで、相手がしんどい、ということを肌で感じることができました。前半20分を越えたくらいから(相手が)動かなくなっていました。これ(ゲームプラン)を信じてやっていくんだ、ということは思いました」

 そのPR山本に代わり、後半からピッチへ投入されたPR稲垣啓太。エディー・ジャパンでポゼッション重視のラグビーも経験した27歳も、好感触をつかんでいる。
「イメージはあります。良い感触はありますし、アタックもディフェンスも機能していました。なるべく相手のセットピースを避けて、相手を走らせて走らせて――というのがひとつのプランニングで、走らせて疲れさせることには成功していました」
 ただこの日の試合に関しては、ジャパンにペナルティが頻発、結果的に避けるはずだったセットピースが増えてしまったという。
「セットピースが多くなった要因は(ジャパンの)ペナルティから、(相手の)タッチキック、モール――。今日はこのケースが何回もありましたよね。そこでちょっと我慢が足りなかったかなと」
 
 指揮官のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ。記者会見でジャパンの試合内容に関して、まず以下の点に言及した。
「我々のゲームプランを全員がしっかりと遂行できるときには、非常にいい形でプレーできる、ということが明確になったと思います」
 信頼して役割を遂行すれば、試合を有利に進め、勝利することができる――。ジョセフ ヘッドコーチにとっても、コーチ陣が提示するプランの有用性は強調したいポイントだった。

 ルーマニア戦の勝利により、ファンを含めた“チーム・ジャパン”内の結びつきはより強まっただろう。
 では果たして、ジャパンの戦術・戦略は次戦の相手にも通用するか。
 この日、日本代表初キャップを獲得したCTBデレック・カーペンターは、日本語でアイルランド代表こそ難敵だと語った。
「今日の私たちのマインドセットは、キックとラインプレッシャーだった。ルーマニアには(効果があり)大丈夫だったけど、アイルランドは違う」
 まさに真価の問われる2連戦だ。アイルランドとの第1テストは6月17日、静岡・エコパスタジアムでキックオフを迎える。チーム・ジャパンのさらなる一体感は生まれるか。(文/多羅正崇)