2022年12月14日。街にクリスマスソングが流れ、街路樹がライトアップされるこのシーズン、3年目を迎えたDリーグのラウンド4が今回も東京・有明ガーデンシアターで開催された。◆ラウンド3 うまいだけでは勝てない、ますます総合芸術の色合いを強…
2022年12月14日。
街にクリスマスソングが流れ、街路樹がライトアップされるこのシーズン、3年目を迎えたDリーグのラウンド4が今回も東京・有明ガーデンシアターで開催された。
◆ラウンド3 うまいだけでは勝てない、ますます総合芸術の色合いを強めるDリーガーたち
今シーズンからルールが変わり、12チームが2チームずつ6つのマッチで戦う対戦型=バトル形式の総当たり戦となり、各マッチでの勝者と勝ち点が決まりながらラウンドが進行してゆく。そのため、各ラウンドでどちらのチームが勝者となるかを見極めながら観戦するという“観る楽しみ”が加わった。
各ラウンドでの対戦相手はシーズン初めに事前に発表されているため、対戦相手を見据えての作品作りをすることにもなっていると思われ、各チームの闘い方、即ち選曲や作品作りにも、より注目があつまっている。そして、各マッチでの対戦相手の存在によって、チームそれぞれの個性が浮き彫りとなり、際立ち、Dリーグの舞台がさらにビビッドな色合いを帯びてきたようだ。今ラウンドも、その彩り豊かな対戦を振り返ってみよう。
■登場プレゼンテーションの重要度が増す
【1st MATCH】 KADOKAWA DREAMS vs. FULLCAST RAISERZ
Dリーグでは舞台から左右に延びる花道を伝って各チームの選手がステージ中央に上がっていくのだが、バトル形式となってから、その登場のプレゼンテーションが対戦する2チームの顔見世的な意味合いをともない、そこでいかに観る者の心を掴むか、どんな登場を果たすか、その効果と意味合いが試合結果にまで影響を及ぼすようなさらに深長なものになっている。
トップバッターのカドカワドリームは季節に合わせ、全員がサンタ帽をかぶって可愛くラブリーに登場。対するレイザースはブラックのジャケットを纏い男らしさ全開で舞台に集結。2チームの対比が際立つ愉しいスタートを切った。
本番ではカドカワドリームスは登場とはガラッと違ったイメージを打ち出し、ジョーカーをモチーフにしたショーを展開。黒い布とダンサーで棟を作り上げ、曲調も手伝って運命的な物事を想起させる印象的で新しい雰囲気のヒップホップを踊りきった。
対するレイザースは小道具の箱を効果的に使い、立体的な面白味で舞台を盛り上げた後に、その箱の上で全員がタップを踏み、最後にはジャケットを脱ぎ捨てレイザースのお家芸ともいえる上半身むき出しの姿となり、会場を沸かせた。このバトルは4対2でレイザースが勝利。レイザースの男気に軍配が上がった。
【2nd MATCH】 LIFULL ALT-RHYTHM vs. CyberAgent Legit
前ラウンドまでのトータルランキング2位と1位の対決である。
先攻のアルトリズムのテーマは「Zone(ゾーン)」。今回も“アルトリワールド”全開のこのナンバーはゲーミングを表現し、カリムを中心にゲームという架空の世界に没入する様を表現し、まさにゲームを見ているような興味深い舞台を繰り広げた。
また、今最も勢いのあるチームともいえる芸達者揃いのレジットは、「Long Long Name」というテーマで全員が紫、ブルー、赤のスーツ姿で、コミカルなサラリーマンの名刺交換シーンから始まり、音楽も名刺のネームを読み上げながらという可笑しみと、勤め人の日常を想起させつつも意外性のあるナンバーで会場の笑いを攫った。どちらも秀逸で惹き込まれるものだったが結果は2対4でレジットの勝利となった。
■魅力が増したI‘moonの力強さ
【3rd MATCH】 USEN-NEXT I‘moon vs. avex ROYALBRATS
アイムーンはクリスマスカラーの衣装で正しく可愛く登場し、唯一のガールズオンリーチームながら、激しいリズムでのジングルベルを力強く踊りきった。この可愛さと力強さのコントラストは間違いなくここ数ラウンドでアイムーンの新たな魅力となっている。
対するロイヤルブラッツはパープルのバスケットボールウェアを想起させる衣装で登場し、今ナンバーのテーマも「DAM DAM DAM!」バスケットボールのドリブル音に合わせ、バネと音遊びに富んだ、全員がバスケットボールに匹敵するような弾力性を感じさせる動きで思わず見ている自分も一緒に弾んでしまいたくなるような見応えあるナンバーが届けられた。
アイムーンの健闘も光ったが結果は0対6。ロイヤルブラッツの見事なSWEEP勝利となった。
【4th MATCH】 dip BATTLES vs. SEPTENI RAPTURES
ディップ・バトルズは毎回個性的なナンバーが光るチームだが、今回はシルバーのぬめるような衣装で花道を這いずり回りながらステージへと進み、登場から凄いインパクトを投げかけた。本番でも音にはまった動きと衣装の効果で液体とも金属ともいえるような不思議な質感を湛えながら、観る者を釘付けにするナンバーが展開。
また、見ていて「ダンサブル!」という言葉が毎回頭に浮かんでしまう“踊る”ラプチャーズは今回はブラックとシルバーの少し硬質な感じを受ける衣装で登場。風の音から始まる楽曲と共にスキルの高さを存分に発揮した高速な振り付けでダンサブル・ラプチャーズの愉しさとノリの良さを存分に発揮してくれたが軍配はディップバトルスに上がった。
■ディフェンディング・チャンピオンが圧勝
【5th MATCH】 KOSE 8ROCKS vs. Valuence INFINITIES
昨シーズンの王者エイトロックスと今シーズンから参戦のインフィニティーズの闘いは、どちらもパリ五輪の新種目となるブレイキンを主体とするチームの対決となり今ラウンド注目の一戦。今回エイトロックスのテーマは「トライブ」。ニューヨーク生まれのブレイクダンスと、トライブ(民族)のフレーバーとの掛け合わせでブレイキンの原点と新しさを同時に感じさせる秀逸なナンバーに仕上がっていた。インフィニティーズもストーリートスタイルを前面に打ち出し、ゲストダンサーのTSUKKIのツーサウザントはなんと13回転!! その人間離れした荒業を見るだけでも十分価値があるので見逃した人はぜひDリーグのサイトか、YouTubeでも視聴可能なのでチェックして欲しい。両チーム共に圧巻のブレイキンを見せてくれたが、結果は6対0でエイトロックスのSWEEP勝利。技術にフレーバーをしっかり盛り込んだエイトロックスの圧勝となった。
【6th MATCH】 SEGA SAMMY LUX vs. Benefit one MONOLIZ
こちらは、男の色気と女の色気対決と言ってもよい一番。ジャッジポイントで1位のセガサミー・ルクスは今回、顔と頭をすっぽり覆うマスクに始まり全身を光沢ある赤い衣装で包み、いつもの香り立つ色気を封じ込めたような出で立ち。顔が見えず誰だかわからない姿なため、ファンにとっては少しお楽しみが減ってしまっている気もするが、その不思議で妖しい空気感を活かした滑らかな動きで液体のようにも炎のようにも感じさせる迫力のナンバーを踊りきった。一方女性の妖しさを「花魁の恋路」というテーマにのせて表現したモノリスは、着物や障子で和のテイストを打ち出しながらも足元はモノリスのトレードマークであるハイヒールという出で立ち。のびやかでゴージャスな廓ワールドをモノリスならではの世界観で繰り広げたが、結果は4対2でセガサミー・ルクスが勝利を飾った。
以上の白熱した6つの対戦を終え、ラウンド4はコーセー・エイトロックスが優勝を収め、最優秀ダンサーMVDは同エイトロックスのYUKIに贈られた。
バトル形式となり、より白熱した見応えある闘いを届けてくれるDリーグ。トータルランキングの上位6チームで行われるチャンピオンシップは2023年4月23日だが、それまで、この新しきルールのもと展開されるレギュラーシーズンは残すところ8ラウンドだ。2週間に一度の、熱く、厳しく美しき闘いはまだまだ長く果てしなく続いてゆく。
◆ソフトバンクがダンス界で実現させた近未来的3D映像の衝撃 3Dバトルも提供スタート
◆2年連続MVD “B BOY” ISSEIの“これまで”と“これから” 「パリ五輪だけがダンスじゃない」
◆全選手が命を削ってきたセカンドシーズン・フィナーレにダンスのさらなる可能性を見た 栄冠はエイトロックスに
著者プロフィール
Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター
『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。