4年に1度のサッカーの祭典、FIFAワールドカップ カタール 2022もいよいよ終盤となりました。日本代表はPK戦の末惜…

4年に1度のサッカーの祭典、FIFAワールドカップ カタール 2022もいよいよ終盤となりました。
日本代表はPK戦の末惜しくもベスト16で敗退したものの、ドイツやスペインという強豪を破り「死の組」を首位通過したことで大きな感動を呼びました。
そこでこの記事では「今大会で初めてサッカーを見た」という初心者の方を中心に、日本代表の試合を振り返りながらサッカーの面白さをお伝えしたいと思います。

日本代表が成し遂げた「下克上」

冒頭で触れたように、ドイツ(世界ランク11位)やスペイン(世界ランク7位)という強豪を破った日本(世界ランク24位)。
この2試合では日本の強みであるスピードと、以前は課題とされていた決定力が大きな勝因となりました。
ドイツ戦での日本のポゼッション(ボール保持率)は26%とドイツを大きく下回り、シュート数はなんと12本とドイツの半分以下でした。

しかしタックル成功やシュートブロックなど、守備的な数値はドイツを上回っており、この試合最優秀選手に選ばれた権田選手を中心とした堅い守備で最少失点にとどめることに成功しました。
高い守備意識は日本の選手全体で統一されており、特にスペインから奪った1点目では、前田選手を中心に前線の選手が粘り強くプレスをかけたことで相手のミスを誘いゴールに結びつきました。
また日本がドイツとスペインから奪ったゴールは全て、ボールを保持してから1分以内のゴールであり、いかに速攻が有効であったかを示していると言えるでしょう。

海外で活躍する選手が代表の中心となり、フィジカル面で強豪国の選手に引けを取らなくなったことでロングボールやセットプレーも大きな武器になりつつあります。
今大会で強豪国に対して日本の堅守速攻が結果として現れたことで、今後の戦い方の中心となるのではないでしょうか。

見えてきた課題

では日本がさらに上の順位を目指すために必要なことは何なのでしょうか。
日本はグループステージでコスタリカに、ベスト16でPK戦の末クロアチアに敗れています。敗れた試合のデータを見てみると、大金星をあげた2試合とは全く別の試合であったことが分かります。

コスタリカ戦での日本のポゼッションは57%でした。
ある程度ボールを保持する時間がありながら状況を打開することに苦戦し、前がかりになったところで失点してしまう。日本がドイツやスペインを破った時と全く逆の状況となっていたことになります。W杯予選でアジア諸国相手に苦戦を強いられたことについても同じことが言えるのではないでしょうか。
日本の堅守速攻は、ドイツやスペインのようにボールを保持しながら攻め上がってくる相手に対しては有効でした。しかし、ボールを保持しながら相手の陣形をかき乱して好機を作ることはまだできていません。中盤でボールを保持しながら相手を崩すためには、選手の流動性と距離感が重要になります。

日本が対戦したクロアチアやスペインは特に、中盤の選手がピッチの至る所に顔を出し、細かいパスを繋ぎながら動くことでマークを剥がすことに長けています。
このように連動性のあるプレーには戦術理解とイメージの共有が不可欠であり、決して一朝一夕でできることではありません。スペインは長期に渡りパスサッカーを磨いてきた国であり、自国リーグで活躍する選手の多くは優れたパサーとしてチームに貢献しています。
日本がワールドカップでさらに上の順位を目指すために、自らの力で試合を組み立てるための土台作りが大きな課題となりそうです。

日本代表の活躍はサッカーファンのみならず、多くの国民に勇気と感動を与えたことかと思います。
ワールドカップは4年に1度ですが、選手たちはそれぞれのクラブで日々努力を重ねています。今大会で初めてサッカーを見たという方々が、いつか日本が優勝できる日を信じてサッカーをさらに好きになる。サポーターの声援が選手の力になると信じて、4年後に向けて応援していきましょう!

【筆者プロフィール】
映像とデータの両面からの試合分析、戦術理解が得意。
ボルシア・ドルトムントのファンで毎試合をフルタイムで視聴。
好きな選手はマルコ・ロイス。