「このチャンスをみすみす逃すことは出来ない。行けるところまで行け、と思って投げました」。今季初先発となったソフトバンクの山田大樹投手は決死の覚悟で、マウンドへ上がった。■千賀離脱で今季初先発5回1失点…「やべーな、今日」から監督助言で一変「…

「このチャンスをみすみす逃すことは出来ない。行けるところまで行け、と思って投げました」。今季初先発となったソフトバンクの山田大樹投手は決死の覚悟で、マウンドへ上がった。

■千賀離脱で今季初先発5回1失点…「やべーな、今日」から監督助言で一変

「このチャンスをみすみす逃すことは出来ない。行けるところまで行け、と思って投げました」。今季初先発となったソフトバンクの山田大樹投手は決死の覚悟で、マウンドへ上がった。

「緊張感は最初ありましたけど、マウンドに立ったら、途端に抜けました。ただ『よく粘られるな』『やべーな、今日』と思いましたけど」。初回、阪神打線に粘られ、25球を要したが、3者凡退。その後も走者を出しながらも、粘りの投球で、失点は4回に梅野に許したソロの1点のみに抑えた。

 千賀滉大投手が左背部の張りを訴え、登録抹消となり、巡ってきたこの日のマウンド。6日のウエスタンリーグ・オリックス戦(タマスタ筑後)で5イニングを投げ、中4日での先発だった。

「長いイニングは期待されていないと思っていた。行けるところまで、行こうと」

 余計な雑念を捨て去り、必死に腕を振った。5回で100球に到達してマウンドを降りたが、スクランブル先発だったことを考えれば、役目は十分に果たしたと言えるだろう。

■新婚左腕、妻に捧げるウィニングボール「僕1人の人生ではないので」

 この日の試合中、左腕は変わった取り組みを取り入れた。

 通常、ベンチ前で行うイニング間のキャッチボールを、3、4回の攻撃時はブルペンで行った。発案者は工藤公康監督。「平らなところでキャッチボールしてマウンドに行くと、ボールが高くなる。ブルペンでキャッチボールをした方が、そのまま投げられるだろうと。傾斜ですね。傾斜で投げた方がスムーズに行くだろう」と狙いを指揮官は明かした。

「監督に言われて、そうしました。外でキャッチボールをやるより良かった。お客さんもいなくて静かなので」と左腕は言う。3回まで75球だった球数は、4、5回の2イニングで25球。効果はあったようだ。

 昨年7月に入籍し、オフに挙式したばかりの新婚。「僕1人の人生ではないので。嫁さんの分もしっかりやらないといけないな、と。だから、みすみすチャンスを逃すことは出来ないな、と思っていました」

 決して、自らに満点をあげられる投球内容ではなかった。それでも、山田にとって大きな1勝に違いはない。2軍でチャンスを待ち続けていた今季。ようやく手にしたウイニングボールは、夫人に贈る。

福谷佑介●文 text by Yusuke Fukutani