「本当は、もっといいことを言った」のに DeNAの伊藤光捕手は9日、横浜市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、現状維持の…

「本当は、もっといいことを言った」のに…

 DeNAの伊藤光捕手は9日、横浜市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、現状維持の年俸1億1000万円(金額は推定)でサイン。プロ16年目の来季が4年契約の最終年となるベテランは、更改後の会見で、9月に起こった“しばくぞ事件“の真相を明かした。

 会見中にこの件について聞くと、伊藤は「やっばり、僕が『しばくぞ』と言ったと思われているのですね……」とため息をついた。経緯はこうだ。9月9日に本拠地・横浜スタジアムで行われた阪神戦。先発の上茶谷大河投手は、長い2軍調整を経て3か月ぶりの1軍マウンドだった。立ち上がりに緊張したのか、初回先頭打者に四球を与え、2番打者のカウントも2-0に。早速捕手の伊藤がマウンドへ駆け寄り、何ごとか言葉をかけた。

 上茶谷はこの回に2点を先行されたものの、2回以降立ち直り、5回2失点で今季3勝目をゲット。試合後のヒーローインタビューでは、伊藤から「おい、お前しばくぞ!」と檄を飛ばされたと明かし、「それでちょっと笑いが出て、何かが解けて良くなりました」と感謝も口にした。これを聞いた三浦大輔監督は「本当にしばかれればよかったのに」とジョークを重ねたのだった。

 しかし伊藤はこの日、「あれは本当に言ってなくて! 『しばくぞ』というのは、上茶谷自身が『そう言われるだろうな…』と思っていただけだと思う」と訴えた。事実無根だと言うのだ。それどころか「本当は、もっといいことを言ったんですよ」と続けた。

お立ち台で“ウソの証言”も許されるムードの良さ

「自分でハードルを上げるのは変ですが、『お前が(2軍調整で)過ごしてきた3か月は、ここで終わるような3か月ではなかったでしょ? 打たれてもいいから、ストライクゾーンで勝負しよう。このまま四球で終わったら、次はないぞ』と言いました」と振り返る。さらに、試合前のミーティングでは外角中心で配球するはずだったが、「ピッチャーというものは、内角に投げる時には神経を使い集中力が増すので、感覚が戻るのではないかと思って」(伊藤)、内角球を増やすこともこの場で打ち合わせたのだ。

「しばくぞ」は、お立ち台でファンを盛り上げようとした上茶谷の創作だったのだろうか? 伊藤は「みなさんにそう思っていただいて、笑いになっているのならいいのかな、と(上茶谷と)2人で話しています」と言いつつ、「僕はあちこちで(真相を)言っている。いつまで訂正し続ければいいのかな」と笑わせた。

 大先輩が言ってもいないことを創作しても怒られないのは、チームきってのムードメーカーの上茶谷ならではかもしれないが、昨季最下位から今季2位に大躍進したDeNAからはいつも、こうした“ノリの良さ“がうかがえた。来季こそ、1998年以来25年ぶりのリーグ優勝&日本一につなげたいところだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)