バルセロナが、ルイス・エンリケの後任監督として、今シーズンはアスレティック・ビルバオを指揮していたエルネスト・バル…
バルセロナが、ルイス・エンリケの後任監督として、今シーズンはアスレティック・ビルバオを指揮していたエルネスト・バルベルデ(53歳)の就任を発表したのは5月29日のことだった。

バルセロナの新監督に就任、会見に臨むエルネスト・バルベルデ氏「クラブ、そしてこのチームのプレースタイルを理解していること。下部組織を重用することができること。判断力、経験、そしてバルセロナの哲学を持った人物」
バルセロナのジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は、こうバルベルデ選出の理由を述べている。
これに対して地元メディアは、バルセロナの新たな時代を築くのに最適な監督だと評価し、さまざまな特集を行なっている。選手たちも同監督就任を「心待ちにしている」と、新監督を受け入れる態勢ができているニュースが伝えられるなど、歓迎ムードに包まれている。
バルベルデが優秀な監督であることは、これまで残した成績を振り返れば間違いないだろう。特に2度指揮しているアスレティック・ビルバオでは、毎シーズン、欧州のカップ戦への出場権を獲得してリーガを終えている。2015年にはスペインスーパーカップでバルセロナを破り、1984年以来31年ぶりのタイトルをもたらした。
志向するサッカーは縦に速いダイレクトなサッカー。ジョゼップ・グアルディオラよりはルイス・エンリケのスタイルに近い戦いをする監督であり、リオネル・メッシ、ネイマール、ルイス・スアレスが共演する、バルセロナ自慢の3トップの破壊力が活きるサッカーを見せてくれるはずだ。
ただし、それでも今回のバルベルデのバルセロナ監督就任には、レアル・マドリードの監督として失敗したラファ・ベニテスの面影がちらついてしまうところがある。
バルトメウ会長の言う「クラブをよく知る」とは、バルベルデがバルセロナでプレーした経験があることを指しているが、それは1988から1990年までの2シーズンであり、27年も前のことである。当時は欧州の覇権を争うのではなく、レアル・マドリードに勝つことだけが絶対だった時代で、チームの立ち位置は全く異なる。
ラファ・ベニテスもレアル・マドリードの下部組織で選手として12歳からプレーをし、レアル・マドリードBの監督を2年務めており、クラブのことをよく知る監督だった。
「下部組織を重用することができる」に関しては、アスレティック・ビルバオでの成功イメージが大きいのだろう。だがビルバオには、バスク純血主義をとり、バスク地方に関連する選手だけでチーム構成を行なっている特殊な台所事情がある。
一方、エスパニョール、バレンシア、ビジャレアル時代に同監督が起用して先発に定着した選手は、カシージャ(現レアル・マドリード)やダビド・フステル(現ヘタフェ)など、ごく少数だ。フェルナンド・ジョレンテ(現スウォンジー)、アンドニ・イラオラ、イニャキ・ウィリアムスが主軸として成長したアスレティック・ビルバオとは、だいぶ様相が異なる。すでに確固としたヒエラルキーのあるバルセロナのロッカールームに変化をつけることは、容易ではないはずだ。
レアル時代のラファ・ベニテスも、アスレティック・ビルバオ戦で8人の下部組織選手を起用するなど、積極的な内部登用を行なっていた。だが、その代償として、ハメス・ロドリゲスやイスコといった高額の違約金で獲得してきた選手たちの出場機会が減り、メディアから起用法に疑問を投げかけられた。
なにより危惧されるのは、バルベルデにはヨハン・クライフやジネディーヌ・ジダンのような、ビッグクラブを率いるうえで、スター選手たちを納得させるだけの現役時代の実績とカリスマ性がないことだ。その点でも、現役選手として世界トップクラスのキャリアを獲得できなかったラファ・ベニテスとかぶってしまうのだ。
現役時代はバルセロナのアンタッチャブルであったグアルディオラでさえ、監督退任を決意した理由のひとつに、ロッカールームをまとめることに疲れ果てたことを挙げていた。ルイス・エンリケもメッシの起用方法を巡り衝突している。
最近では、一時は監督候補に挙げられていたルイス・エンリケのセカンドコーチ、フアン・カルロス・ウンスエに「今のような姿勢のままだとロナウジーニョのようになるぞ」と叱責されたネイマールが、同氏が監督になるのであれば「チームを退団する」と話したと言われている。
強力なタレントが揃うバルセロナのロッカールームをいかにまとめ、選手たちを気持ちよくプレーさせられるかどうか。ピッチの上でのライバルとの戦い以上に、ベンチの奥で自軍の選手をコントロールできるかどうか。そのあたりがラファ・ベニテスの二の舞いになるかどうかの分かれ目になるだろう。