WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス ジャック・ニクラウスがホストを務めるメモリアル・トーナメント(6月1日~4日/オハイオ州ダブリン・ミュアフィールドビレッジ)。最終日に優勝争いを演じたのは、リッキー・ファウラー(…



WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 ジャック・ニクラウスがホストを務めるメモリアル・トーナメント(6月1日~4日/オハイオ州ダブリン・ミュアフィールドビレッジ)。最終日に優勝争いを演じたのは、リッキー・ファウラー(28歳/アメリカ)とジェイソン・ダフナー(40歳/アメリカ)だった。

 ふたりは同じ組だったが、最終組ではなかった。ダフナーは2日目まで首位を守っていたが、3日目に「77」と崩れて通算9アンダー、首位と4打差の3位タイに後退。最終日は、これに1打差で続く6位タイのファウラーとともにスタートした。

 上位陣がスコアを崩す中、最初に抜け出したのはファウラーだった。11番でこの日4つ目のバーディーを奪って、通算12アンダーとして首位に浮上した。一方、ダフナーも12番を終えて、ふたつスコアを伸ばして通算11アンダー。1打差でファウラーを追った。

 最終組よりふたつ前の組で優勝を争ったファウラーとダフナー。最終的には終盤に粘りを見せたダフナーがさらにスコアを伸ばし、逆に終盤で崩れたファウラーを振り切って優勝した。2位に終わったファウラーは、雷雨による中断後、14番パー4でボギーを叩くと勢いを失ってしまった。


メモリアルトーナメントで2位に終わったリッキー・ファウラー

 ファウラーが2位で終わるのは、これでキャリア10度目だ。どうにも「最後で勝てない」というイメージが払拭できない。

 昨季は、ウェイストマネジメント・フェニックスオープンで松山英樹とプレーオフを戦った。4ホールに及ぶ熱戦の末に敗れると、ファウラーは悔し涙を流した。もちろん、松山が粘って強さを見せたのだが、ファウラーは距離の短い17番パー4で、レギュレーションラウンドとプレーオフと、2度も池に入れたのだから”自滅”とも言える。

 現在、28歳のファウラー。世界ランキング9位、PGAツアー通算4勝。その他、欧州ツアーなどで3勝を挙げているが、いまだメジャーは未勝利。2015年に「第5のメジャー」と呼ばれるプレーヤーズ選手権で優勝し、それが最も大きいタイトルかもしれない。

 2014年は、メジャー4大会すべてでトップ5入りした。マスターズ5位、全米オープンと全英オープンが2位、全米プロ選手権は3位だった。それだけ悔しい思いをした分、翌年からは”メジャー制覇”に大きな期待がかかっていたが、実はそれ以降はメジャーで際立った成績は残せていない。昨季にいたっては、マスターズ、全米オープンで予選落ちを喫している。

 メモリアル・トーナメントでは、ダフナーを2打差で追いかけていた18番パー4。ダフナーがティーショットをラフに打ち込んでトラブルに見舞われたが、ファウラーもフェアウェーから打った第2打をグリーン左奥のラフという難しいところに外してしまい、ダフナーにプレッシャーをかけることができなかった。結果、ダフナーは10mのパットを沈めてパーセーブ。あっさりと逃げ切りを許してしまった。

 ニクラウス夫妻が18番グリーンサイドで勝負の行方を見守る中、またもあと一歩で優勝に届かなかったファウラー。戦いを終えてニクラウスと握手をかわすと、少し長い会話がなされていた。

 ニクラウスはメジャー通算18勝。今もメジャー勝利の最多記録を保持している。だが、メジャー大会で2位に終わったことが19回もある。そう、勝った数よりも、あと一歩で負けた数のほうが多いのだ。

「ジャックのメジャー記録を見るとわかる。勝つためには、まずは優勝争いをすること。そして、そこで自分がやらなければいけないことができるかどうかだ。無論、どれだけいいプレーをしても、勝てないことはたくさんある」

 ファウラーはそう言って、今回は涙を見せなかった。

 印象的だったのは、ダフナーが勝利を決める18番のパットを沈めたときのこと。ガッツポーズをするダフナーを見て、彼以上に喜んでいたのはファウラーだった。ダフナーがパットを外してボギー以下が確定し、ファウラーがチップインバーディーを決めれば、プレーオフに向かうチャンスがあったにもかかわらず、だ。

 ダフナーとファウラーは、とても仲のいい友人なのである。トレーナーが同じで、前夜もコースのクラブハウスでジョーダン・スピース(23歳/アメリカ)、ジャスティン・トーマス(24歳/アメリカ)らも交えてディナーをともにしたという。その際は、首位から崩れたダフナーを励ましていたのだろうか?

「ダフ(ダフナー)が落ち込む心配なんて、何もしなかったよ。みんなでいろいろな話をしていたんだ。当然、ゴルフの話もする。良かったショット、悪かったショット……いろんなことさ。そうして、最終日は僕とダフはマッチプレーのようなシチュエーションとなった。もちろん、僕は勝ちたかったけど、彼の素晴らしいプレーがうれしかったんだ」

 戦いを終えたファウラーは清々しかった。

 ファウラーは、今週のフェデックス・セントジュードクラシック(6月8日~11日/テネシー州)に出場し、翌週は今季のメジャー2戦目となる全米オープン(6月15日~18日/ウィスコンシン州)に臨む。

「まずは”優勝争い”に入ること。その数が増えれば、必ず勝利する数が増えるのだから」

 今季のメジャー初戦、マスターズは11位。はたして、全米オープンではどんな活躍を見せてくれるのだろうか。本人が言うとおり、まずは優勝争いに加わっていくことを期待したい。