極私的! 月報・青学陸上部 第35回

 関東インカレ、最終日――。

 この日は朝から日差しが強く、気温がグングン上がっていた。9時スタートだが、ロードの周りの気温はすでに25度近くある。暑さとの戦いで厳しいレースになりそうだ。

 ハーフマラソンを走る選手たちを応援するために、コースの沿道には各大学の応援や父兄、大学関係者が陣を取っている。青学陸上部の選手やマネージャーたちも数名単位でコースに散らばっている。

今年のチームでは4年生・下田裕太に大きな期待がかかる

 青学からは下田裕太(4年)、山田滉介(3年)、林奎介(3年)の3名がエントリーしていた。

 関カレのハーフマラソンは青学がここ3年間、神野大地、池田生成(2連覇)で3連覇している。4連覇をかけてのレースになるが、この種目は箱根につながるレースでもある。昨年、原晋監督は池田が連覇したことを喝采し、箱根での起用を決めた。そして、池田は9区を走り、箱根3連覇に貢献したのだ。

 箱根を目指す山田、林にとっては大きなチャンスだった。

 しかし、林は1周目から遅れ始め、周回遅れになって途中棄権。昨年は箱根駅伝のメンバーに登録され、今年の飛躍が期待されたが、新シーズンの朝練に寝坊して原監督に激怒され、坊主になり出直しとなった。ただ、それ以降、レースでなかなか結果が出ていない。

 山田は、「スピードがないので、長い距離で勝負したい」というタイプ。ハーフマラソンは自らが思い切り勝負できるレースで、箱根では9区を希望している。結果を出せば、箱根を争ううえで優位に立てるが、記録は1時間08分13秒で31位に終わった。汗にまみれ、ちょっと落胆した表情を浮かべ、足早に青学の待機場所に戻っていった。

 トップは大会新記録の1時間02分38秒で優勝したサイモン・カリウキ(日本薬科大)で、この暑さの中での好記録に日産スタジアムがどよめいた。

 下田は暑さにもめげず2位(1時間04分14秒)でフィニッシュした。ケニア人の超人的な走りには負けたが、走り自体は力強さが宿っており、ようやく調子が戻ってきたようだ。今シーズンはいいスタートとなった。

 箱根では8区を走り、7区・田村和希が失ったタイムを挽回し、3連覇に大きく貢献した。

「最後にようやくチームに貢献できてよかった。やっとゆっくり眠れます」

 弾けた笑顔が印象的だった。調子が上がった状態で箱根を終え、マラソン合宿へ。2月の東京マラソンでは昨年以上のインパクトとタイムを残してくれるのではないかという期待が膨らんだ。しかし、1月末の都道府県対抗男子駅伝で膝を故障し、最終的に東京マラソンの出場を断念。リハビリに専念し、ようやく走れるようになったのが3月末だった。そこから急ピッチで調整し、関東インカレに間に合わせてきた。

「ここまで100%ではないですし、5000m、1万mでは勝負できないけどハーフだったら勝負できるところまで仕上げてきて、結果を残すことができた。今日の走りもまだ100%ではないですけど、80 %は戻ってきているので、これから気合いを入れて走り直して、夏につなげていければいいですね」

 思ったよりも走りの手ごたえを感じたのだろう。表情は非常に明るい。

 下田が調子を戻しつつあるとなれば、気になるのは他の4年生だ。関カレでは田村はサポート役に回り、キャプテンの吉永竜聖も走らず、応援に専念していた。貞永隆佑はまだリハビリ中だ。

 中村祐紀は1500m に出走。予選を突破して決勝に進出したが、6位に終わった。本人曰く関カレ1週間前に足がつり、ぶっつけ本番だったので、まずは予選突破し、6月に平塚で行なわれる個人選手権に向けて自分の感覚を取り戻すためのレースをしたという。つまり、まだ万全ではない状態だということだ。

 4年生の調子が気になるのには理由がある。原晋監督はこう言っている。

「4年生のがんばりでチームは右にも左にも振れるし、4年生の思いがチーム全体を強くするんです。それほど4年生の存在は大きい。中には箱根を走れない選手もいるけど、4年生一人ひとりのがんばりがあるから、下級生もあの人のためにがんばろうとなる。そのためには4年生が元気にチームを引っ張っていかないとダメなんだよ」

 大学スポーツは、やはり4年生が強いチームが強いのだ。

 下田は、4年生の調子が上がらない状況に責任を感じているという。

「今年は僕と田村の2枚看板が故障してしまって、中村と吉永も調子が上がらない。それは僕が故障してしまってから広がってしまった悪い連鎖だと思うんです。だから、今回はしっかりと結果を出して、悪い連鎖を断ち切っていい連鎖につなげていきたかった。ここまでチームとしてはいい状況じゃなかったかもしれませんが、これから僕らがしっかりとチームを固めていきたいです」

 昨年で言えば、この時期は安藤悠哉キャプテンも故障から復帰した頃で、調子はまだまだだったし、秋山雄飛はドン底状態だった。安定していたのは一色恭志と茂木亮太ぐらいだった。だが、夏合宿を過ぎてから4年生のペースが一気に上がり、出雲駅伝は4区の茂木、5区の安藤、アンカーの一色ら4年生が快走して優勝した。もちろん箱根でも一色、秋山、池田、安藤ら4年生の活躍があってこその3連覇だった。

 下田は「4年になってみて、昨年の4年生は強かったなぁと感じた」というが、そのレベルにまで全員が届くようになるのは簡単なことではない。
 
 今は橋詰大慧(はしづめ・たいせい)ら3年生に加え、5000mで日本人2位(全体6位)になった鈴木塁人(すずき・たかと/2年)など、下級生の好調が目立つ。しばらくは彼らがチームを引っ張っていくことになりそうだが、4年生はいつ浮上してくるのか。

 今月の個人選手権大会で、底力を見せてくれるだろうか……。