今年の「ダート王決定戦」GIチャンピオンズC(12月4日/中京・ダート1800m)は、連覇を狙うテーオーケインズ(牡5…

 今年の「ダート王決定戦」GIチャンピオンズC(12月4日/中京・ダート1800m)は、連覇を狙うテーオーケインズ(牡5歳)の"1強"ムードだ。

 確かにこの馬は強い。衝撃的だったのは、昨年のチャンピオンズC。直線に入って先行馬を早々に捕まえると、あとは後続を離す一方で、6馬身差をつける圧勝劇を演じた。

 さらに、それ以前に地方交流GIの帝王賞(大井・ダート2000m)を勝っていて、今年も前走で地方交流GIのJBCクラシック(11月3日/盛岡・ダート2000m)を快勝。GI勝利は計3勝を数える。

 もともと能力が一枚上でありながら、前走もラクに勝っているように、状態面は万全。連覇の可能性は高く、おそらく単勝は1倍台となり、「1強」評価となることは間違いない。

 とはいえ、そんなテーオーケインズにも、重箱の隅をつつけば、つけ入る隙がまったくないわけではない。

 そのひとつが、昨年の帝王賞を3連勝で制して以降、連勝が一度もない、ということだ。その昨年の帝王賞勝利から前走のJBCクラシックまでの着順を記せば、1→4→1→8→1→4→1。連勝がないことはもちろん、勝ったレース以外はすべて、馬券圏外に沈んでいるのだ。

 これは、王者の成績としてはいささか"らしくない"と言えるのではないか。ついでに言えば、再び勝ちと負けを繰り返すようであれば、今度のチャンピオンズCでは馬券圏外に敗れることになる。この点について、関西の競馬専門紙記者はこう語る。

「もともとこの馬はスタートに難がある。それがだいぶマシになって成績が上がってきたわけですが、それでも時々、出遅れや出負けのクセが顔をのぞかせる。負ける時は、決まってそういう時です」

「ただ」と言って、同専門紙記者は続ける。

「勝ちと負けが交互にきているからといって、そのなかには海外GIのサウジカップ(2月26日/サウジアラビア・ダート1800m)の結果(8着)も含まれています。これはノーカウントにしていいでしょう。それに、今回のレースに関して言えば、メンバー構成からして明らかに抜けた存在。その相手関係から見て、たとえ出遅れの危険があったとしても、取りこぼすことはないと思います」

 専門紙記者はそう言うが、懸念材料は他にもある。ジャパンCダートからチャンピオンズCへと名称が変更され、舞台が中京・ダート1800mになってから、連覇を果たした馬は1頭もいない、ということ。ホッコータルマエやクリソベリル、チュウワウィザードといったトップクラスのダート馬でも実現することはできなかった。

 また、JBCクラシックからチャンピオンズCというステップを踏んできた馬が、これら2レースを連勝した例は一度もない。昨年のテーオーケインズを含めて、このステップでチャンピオンズCを制した馬は4頭いるが、いずれもJBCクラシックでは敗れている(JBCレディスクラシック2着から挑んで勝利した2015年のサンビスタは含まない)。

 反対に、JBCクラシックを制してチャンピオンズCに挑んできた馬は延べ7頭いるが、すべてチャンピオンズCでは敗れている(JBCレディスクラシック勝利から挑んで4着に敗れた2014年のサンビスタは含まない)。先に触れたクリソベリルも連覇を狙った2020年、JBCクラッシクを完勝し、チャンピオンズCでは1.4倍という断然の支持を得ながら4着に沈んでいる。

 それだけ、チャンピオンズCの連覇、JBCクラシックとの連勝というのは、ハードルが高いチャレンジと言える。まさしく"重箱の隅"かもしれないが、連覇、JBCクラシックとの連勝を狙うテーオーケインズにはなんとも嫌なデータだ。

 それでも、専門紙記者が先に指摘したとおり、テーオーケインズは今回、かなり相手に恵まれていることは確かだ。少なくとも、すでに勝負づけがすんだ感のある古馬勢に大きな期待はかけられない。

"スキを突く"可能性があるとすれば、まだまだ伸びしろがあり、この秋のGIシリーズでの活躍が際立っている3歳世代だろう。チャンピオンズCには、クラウンプライド(牡3歳)、ノットゥルノ(牡3歳)、ハピ(牡3歳)の3頭がエントリーしている。



チャンピオンズCでの勝ち負けが期待されるクラウンプライド

 はたして、この3頭に"打倒テーオーケインズ"の可能性はあるのだろうか。先述の専門紙記者はこう分析する。

「前走のJBCクラシックで、テーオーケインズの2着に食い込んだのが、クラウンプライド。しかし、最後の直線では並ぶ間もなくかわされ、2馬身半の差をつけられての完敗でした。これが、現在のテーオーケインズと、3歳馬との力の差と考えていいでしょう。つまり"打倒テーオーケインズ"はかなり厳しいということです」

 そうは言いながらも、同専門紙記者は最後にこうつけ加えた。

「それでも、ハピとクラウンプライドには、わずかながら可能性があります。先行争いが激化し、ペースが異常に速くなった場合は、後方からの一発を狙うハピの台頭は十分に考えられます。

 一方のクラウンプライドは、確かにJBCクラシックではテーオーケインズに完敗しました。でも、もともと引っかかりクセのあるこの馬には、本質的に2000mの距離は長かった。今回は距離が200m短縮されますからね、その恩恵を一番受けるのはこの馬でしょう。

 加えて、この時期の3歳馬には"成長力"という強みがある。そうしたプラス要素が加味されれば、前走の着差は縮まるでしょうし、場合によっては、逆転の目も少しは見えてくるかもしれません」

 過去8回のチャンピオンズCで、3歳馬は2勝している。テーオーケインズの壁は分厚いが、決して打ち破れないほどの壁ではない。

 芝戦線だけでなく、ダート界でも3歳世代の躍進はあるのか。注目である。