茨城県の湖、霞ヶ浦は、ナショナルサイクルルートにも指定されており、国内でも有数のサイクリングルートである。この霞ヶ浦を舞台に、JBCFロードシリーズにおける上位リーグ「Jプロツアー」の2連戦が開催された。初日は個人タイムトライアル、2日目は…

茨城県の湖、霞ヶ浦は、ナショナルサイクルルートにも指定されており、国内でも有数のサイクリングルートである。この霞ヶ浦を舞台に、JBCFロードシリーズにおける上位リーグ「Jプロツアー」の2連戦が開催された。
初日は個人タイムトライアル、2日目はロードレースという構成だが、リーグ戦は、この2戦を含めても3戦を残すのみ。とても重要なレースとなった。

初日のタイムトライアルは、Jプロツアー第16戦「第2回かすみがうらタイムトライアル」として開催された。この土地で、昨年に続き2回目の開催となる。今大会では、霞ヶ浦湖畔の道路を往復する区間を加えての3.7kmにコースレイアウトが変更された。



霞ヶ浦湖畔で開催されたタイムトライアル。スタートゲートから一人ずつ出走する

コースは、ほぼフラット。だが、コース幅の狭い直角コーナーが4カ所設定されており、減速を強いられる。スピードを維持する能力だけでなく、テクニックも求められる設定となった。
一人ひとりスタートして行く中で、トップタイムを叩き出したのは、今年の全日本選手権でも見事に優勝した金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)。全日本タイムトライアルチャンピオンジャージ姿で、ジャージに恥じない圧巻の走りを見せた。



タイムトライアルの全日本チャンピオンジャージ姿で圧倒的な強さを見せつけた金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)



すばらしい走りで2位となり、ネクストリーダージャージを奪還した山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

2位に山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が入り、この獲得ポイントでU23個人総合首位の証であるネクストリーダージャージの奪還に成功した。

そして、この翌日(10月23日)は、Jプロツアー第17戦「第2回かすみがうらロードレース」が開催された。最終戦はクリテリウムであるため、これが今季最後のロードレース大会となる。
コースは、前日のタイムトライアルで使用された3.7kmに、アップダウンのある区間を加えた4.8kmのショートコース。これを25周する120kmの設定で競われる。
1周内の高低差は30mほどだが、直角コーナーに加え、大きく道路幅が変わる場所もあり、その都度、減速が強いられ、集団は長く伸び、再加速するたびに消耗されていく。ゴール手前には、木々のトンネルを抜ける狭い道を使った上り区間も設定されており、このコースを25周回、集団で走る。勝機を得るには、どこに位置し、いかに走るかという「巧さ」も必要になるだろう。



湖沿いのエリアもルートに組み込まれている



距離は短いながらも、上りも含まれ、コーナーや、道路の幅員も変わるテクニカルなコース。ゴール前には、道幅の狭いやや勾配のある上りが待ち受けている

かすみがうら市歴史博物館前に設定されたスタートラインには、ネクストホワイトジャージを前日獲得した山本と、個人総合リーダーのレッドジャージを着た小林海(マトリックスパワータグ)が先頭に並ぶ。美しい秋空の下、選手がスタートして行った。



市歴史博物館前をスタート

今季残すはあと2戦。ここで上位に食い込みたい選手も多く、スタート直後から、激しいアタック合戦となり、スピードが上がった集団は1周目から長く伸びた。
ほどなく、シマノレーシングのメンバーを多く含み、マトリックスパワータグ、愛三工業レーシングチーム、弱虫ペダルサイクリングチームら、主要チームのメンバーから構成される7名の集団が先行した。



早々に7名の先頭集団が形成された

難コースながら、選手はハイスピードで駆け抜けて行く。周回が小さいため、耐えきれなくなり、遅れた選手たちは、早々にレースから除外されることになる。序盤から集団の人数が減り、非常にシビアな展開になった。先頭を追う追走集団が形成され、4周目終わりまでに先頭に追いついた。



先行したメンバーに追走集団が迫る



上り区間で長く伸びる先頭集団

先頭は21名の大きな集団となり、主要選手を多く含んでいた。この頃までに後続集団も20名程度の集団となっており、ほぼ同じサイズの2集団が構成される形となった。先頭と後続集団との差は50秒まで開いたが、懸命の引き上げで、30秒前後まで縮まった。



先頭集団は好ペースを保ち、順調に周回をこなして行く

だが、この動きの中で長く伸びた後続集団はいくつもの分断箇所が生まれ、集団と言えるようなまとまりも欠いた状態に。後部にちぎれてしまった選手はレース続行が難しい。9周目を終えた時点で、なんと半数近くがレースから除外される事態に。レースは大きく人数を絞り込んでいった。

※サバイバルレースとなった優勝争いの結末は……!?
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先頭は、すでにまとまっていた21名に向け、さらに追走がかかり、選手が合流、30名ほどの大集団になっていた。まだレースは半分以上を残しているが、事実上、この集団がメインとなったと言えるだろう。この集団の中に、各チームの主要メンバーも入っており、この中でレースが争われることになった。



合流を経て、先頭集団は30名ほどの大きな集団に

この新たなメイン集団から、次の動きが生まれ始める。
13周目、昨年この大会を優勝し、リーグの中でも後半に活躍し、めざましい追い上げを見せていた入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)が単独で飛び出した。



入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)がアタック。入部は吸収されたが、ここから動きが活発化した

15周目には、小森亮平(マトリックスパワータグ)と岩田聖矢(弱虫ペダルサイクリングチーム)の2名も飛び出したが、集団の先頭を固め、コントロールを始めた愛三工業レーシングチームがどの逃げも許さず、吸収した。



小森亮平(マトリックスパワータグ)と岩田聖矢(弱虫ペダルサイクリングチーム)の飛び出し

ラスト5周、しびれを切らしたフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)が単独で飛び出し、独走するが、愛三工業レーシングチームが先頭を固めた集団に捕らえられてしまう。



ベテラン、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)が自ら飛び出す



最後のスプリント勝負に向け、集団のコントロールをする愛三工業レーシングチーム

ラスト3周に入り、愛三工業レーシングチームのコントロールを打破しようと冨尾大地(シエルブルー鹿屋)が飛び出した。これをきっかけに、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)と寺田吉騎(LEOMO Bellmare Racing Team)が飛び出し、3名で先行していく。



先行するホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)と寺田吉騎(LEOMO Bellmare Racing Team)

冨尾が遅れ、トリビオと寺田が粘ったが、この動きも最終周回に入る手前の坂で、集団に吸収されてしまい、決定打にはならなかった。この頃までに、集団からは疲弊した選手たちがこぼれ落ちており、人数はさらに絞り込まれていた。ここまで残った12名で最終周回に突入することになった。



最終周回に入り、牽制も生まれる先頭集団

ここから小森亮平(マトリックスパワータグ)と寺田が抜けだし、全力で先行。愛三工業レーシングチームと同様、スプリント勝負に持ち込みたいTEAM BRIDGESTONE Cyclingが2名を追った。
2名を追い、かわした山本は、そのまま先頭に躍り出て、最後の坂に差しかかるが、マトリックスパワータグのメンバーが山本に迫る。
混沌とした最終局面を経て、トップでホームストレートに現れたのはトリビオだった。得意の登坂力で後続を引き離すと、両手を挙げてガッツポーズでフィニッシュ。この大混戦を見事に制したのだった。



この戦いを制したのは、最後の坂で抜け出したトリビオ。久々の優勝に喜びを爆発させた

1年半ぶりの優勝となったトリビオは、笑顔でインタビューに応じ「うれしい」と、日本語で喜びを伝えた。「チームメイトもしっかりと仕事をしてくれて、最後につなげられて、すばらしい」と、感謝を語る。シーズンも終盤だが、まだレースも残っている。「チーム全員で最後までがんばる」と決意を語った。



表彰台の3名。3位には昨年の全日本チャンピオン草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が食い込んだ

レッドジャージに移動はなく、この日も2位に入る活躍を見せた山本は、もちろん文句なしでホワイトジャージを守っている。Jプロツアーも残すはあと1戦。リーダージャージに動きは生じない見込みだが、初開催の今治での最終戦に、注目が集まった__。

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【結果】Jプロツアー第16戦・第2回かすみがうらタイムトライアル(3.7km)
1位/金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)4分45秒75
2位/山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+3秒19
3位/香山飛龍(弱虫ペダルサイクリングチーム)+5秒37
4位/寺田吉騎(LEOMO Bellmare Racing Team)+11秒49
5位/伊藤舜紀(CIEL BLEU KANOYA)+12秒73

【結果】Jプロツアー第17戦・第2回かすみがうらロードレース(120km)
1位/ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)2時間46分5秒
2位/山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+0秒
3位/草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)+1秒
4位/フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)+2秒
5位/中井唯晶(シマノレーシング)+3秒

【Jプロツアーリーダー】
小林海(マトリックスパワータグ)

【U23リーダー】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling) 

画像提供:JBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)

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