フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日〜6月11日/クレーコート)の大会13日目は男子シングルス準決勝が行われる。 第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)は、今季プレーしたクレーコートでの18試合のうち17試合に勝…

 フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日〜6月11日/クレーコート)の大会13日目は男子シングルス準決勝が行われる。

 第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)は、今季プレーしたクレーコートでの18試合のうち17試合に勝ち、準備万端で全仏にやってきた。彼はまた、ロラン・ギャロス(全仏)で9度優勝した男でもある。

 金曜日にナダルが準決勝で対戦するのは、第6シードのドミニク・ティーム(オーストリア)だ。ティームもまた、今季2つ目のグランドスラム大会にいくつかの成功をひっさげて乗り込んできた。彼はクレーの2大会で決勝に進み、ナダルに唯一の黒星を手渡している。

 2015年全仏チャンピオンで、今年もまた準決勝に進んだ第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)は、全仏が始まる前週のジュネーブでクレー大会のタイトルを獲ったばかりだ。

 では、金曜日に、2016年全仏準決勝の再現でワウリンカと対戦する、第1シードのアンディ・マレー(イギリス)についてはどうだろうか。

「ここに来たとき、僕は本当にひどいプレーをしていた」とマレーは笑みを浮かべて言った。「僕はこの準決勝でちょっと異質な存在だ」。

 それは事実だ。全仏前の彼の最後のクレー前哨戦だったローマにおいて、マレーは初戦で敗れていた。その前には、モンテカルロとマドリッドの双方で3回戦負けを喫していた。

 さらにハードコートの期間にまで遡ってみても、マレーの全仏到着時点での戦績は16勝7敗に過ぎなかったのである。

 これは「世界1位」の座につく者にふさわしい戦績ではない。彼はウィンブルドン優勝やオリンピック2連覇、全豪と全仏での準優勝など、昨年の一連の好成績のおかげで、その首位の座に至っていた。

 そして、マレーが風邪を克服して調子を戻し、ここ2週間は試合を追うごとによりよいプレーをするようになっているとしても、やはりこの全仏に勝ち残ったほかの3人ほどいい調子ではないだろう。マレーはここまでの5試合で3セットを落としているが、ワウリンカ、ナダル、ティームはここまでのところ、プレーしたすべてのセットを獲得している。つまりセットを落としていない。

「言うまでもなく、彼らは皆、非常にいいプレーをしている」とマレー。「ラファは素晴らしいクレーコート・シーズンを送り、ティームも同じだ。スタンは今大会で素晴らしいプレーをしている。彼はまたジュネーブで優勝したので自信に満ちているだろう」。

 ここで2つの男子準決勝に目を向けてみよう。

●マレー対ワウリンカ

 この準決勝は、ともに3度ずつグランドスラム大会で優勝した者同士の対決だ。マレーは、ふたりの間の対戦成績で10勝7敗とリードしており、その中には、昨年の全仏準決勝の4セットの末の勝利もある。

「彼が常に僕を追い立て、プレッシャーをかけてきていたから、僕にとって解決策を見つけるのが難しかった」と、32歳のワウリンカはその試合を振り返る。

 32歳のワウリンカは、1985年のジミー・コナーズ(アメリカ)に次いで年齢の高い、全仏準決勝進出者だ。

 ワウリンカが華やかな片手打ちバックハンドを打ち込めば、マレーが並外れたコート・カバーリング能力とディフェンス力を発揮してラリーを長引かせる。彼らはきっと壮観な打ち合いを見せることだろう。

 2016年のマレーのプレーぶりを今年のそれと比べ、ワウリンカはこう言った。「おそらく彼は昨年ほど自信に満ちていないかもしれない。今の彼には少し躊躇がある。そこにつけ込むことができるよう願っているよ」。

●ナダル対ティーム

 ナダルは10度目の全仏タイトルを目指して戦っている。これは、一つのグランドスラム大会で一選手が勝った数としては最多のものであり、もしナダルが優勝して、グランドスラム・タイトル獲得数を「15」としたら、18タイトルでトップのロジャー・フェデラー(スイス)に次ぐ2位として、ピート・サンプラス(アメリカ)とのタイ記録を破るものとなる。彼は今、ケガに悩まされた辛い2016年のあと、特にクレーでは、"かつての強さ"とでもいうものに見合うプレーを見せている。

「ラファはメンタル的にも肉体的にも回復したんだ」と、ナダルの叔父でありコーチのトニーは言った。トニーは今、ナダルを1998年全仏チャンピオンのカルロス・モヤ(スペイン)といっしょにコーチしている。「今や、ずっとよくなったよ」。

 ナダルは今大会でプレーした5試合で22ゲームしか落としておらず、すべてのボールに追いついて、あの重いトップスピンのフォアハンドを打ちまくっている。

「あのフォアハンドはテニス界でも指折りの、最高のショットの一角だと思う」とティーム。「だからいずれにせよ、僕はあれをずっと避け続けることはできない。何本かのウィナーを取られてしまうだろうね」。

 昨年も全仏準決勝に進出しているティームは、準々決勝で前年度優勝者で第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)をストレートで破ったばかりだ。そして、過去の対戦成績ではナダルが4勝2敗でリードしているとはいえ、ティームは直近の、先月に行われたローマのクレーでナダルに対し勝利をおさめている。

 第3セットの0-6を含め、ティームに打ちのめされたあと、ジョコビッチは23歳のティームを『トップを倒し、グランドスラム優勝杯に手をかけることに飢えている、上昇中の期待の星』と呼んだ。「彼は優勝するための非常によいチャンスを手にしていると思う」とジョコビッチはコメントした。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は「全仏オープン」大会13日目、スタン・ワウリンカ(スイス)との準決勝を前に練習するアンディ・マレー(イギリス)(写真◎Getty Images)

Photo: PARIS, FRANCE - JUNE 08: Andy Murray of Great Britain trains prior to his mens singles semi-finals match against Stan Wawrinka of Switzerland on day twelve of the 2017 French Open at Roland Garros on June 8, 2017 in Paris, France. (Photo by Alex Pantling/Getty Images)