「やっぱりオシムさんのサッカーは、しっかり走らないと勝てないなと思いました。要するに今日の勝者はオシムさんなんだと思います(巻誠一郎)」 元サッカー日本代表・巻誠一郎を擁するジェフのオシムチルドレンたち。彼らが試合後、口々に発言していた言…

「やっぱりオシムさんのサッカーは、しっかり走らないと勝てないなと思いました。要するに今日の勝者はオシムさんなんだと思います(巻誠一郎)」

元サッカー日本代表・巻誠一郎を擁するジェフのオシムチルドレンたち。彼らが試合後、口々に発言していた言葉がある。

「(今日の試合)オシムさん、きっと怒るんじゃないかなぁ」

20日、J2/ジェフユナイテッド市原・千葉は(今春5月に亡くなった)元サッカー日本代表監督イビチャ・オシム氏の追悼試合を千葉市・フクダ電子アリーナで開催。9436人のサッカーファン・サポーターをジェフのホーム・フクアリに大集結させ、故・オシム氏を偲ぶ時間が営まれた。

試合キックオフ直前、あいにくの雨に見舞われたものの熱心なファン・サポーターによる雨・防寒対策が施されるなか、極寒のピッチで開催された追悼試合。16時、オシムジェフ・レジェンド対オシムジャパン・レジェンドのスペシャルマッチがいよいよキックオフの時を迎える。名将がかつて指揮を執っていたクラブ・ジェフ、そして日本A代表。共に両チームOBたちがピッチに登場するとフクアリは熱気と歓声に包まれた。

ピッチ上には(今季限りで現役引退となった)中村俊輔をはじめとする超豪華メンバーが参戦し、ファン・サポーター待望の笛が鳴る。なかでもフクアリのピッチを大いに沸かせたのは、オシム・ジェフレジェンドの6番・阿部勇樹がキャプテンシーを付けて、千葉に帰還した瞬間だ。

30分ハーフで行われた試合は、1-3でオシムジャパン・レジェンドが勝利を収め、オシムジェフ・レジェンドは沢山の課題を残す一戦となった。(オシムジャパン・レジェンドの)我那覇、加地、梅崎にゴールを奪われ3失点。オシムジェフ・レジェンドが得点に辿り着いたのは試合後半59分、水野晃樹の右足がかろうじてゴールを奪ったのみ。

和やかなOBマッチを題材にリーグ戦のような課題や切り替えなど到底ありえないが、サッカーは勝負の世界。フクアリに集結したジェフサポーターの多くが勝利を望んでいたはずだ。試合後のジェフOBに話を聞くと口を揃えて「オシムさん、きっと怒るんじゃないかなぁ」と答えてくれた。オシム語録と呼ばれるオシムさんの言葉が多く存在するが、今もなお、その言葉は多くの人々の心にそれぞれ響き続けているのだと確信する。

「オシムさんが目指した日本サッカーに一歩でも近づけるように、皆んなで(佐藤勇人)」

今日の試合やクラブが企画したセレモニーは、きっと天国のオシムさんに届いていると勝手に思い込みたい。そして天国のオシムさんは今日の戦いをなんと思うのか気になって仕方がない。きっと厳しい言葉で、顔色ひとつ変えず私達メディアに言葉を残してくれそうだ。

今夜だけは雨の夜空の向こうで「ジェフはジェフだ」と笑っている気がする。奇しくも20日は、カタールで4年に一度のワールドカップが開催される日。日本サッカーを愛し、可能性を信じた名将を偲びながら今夜はオシムさんの大好きな日本酒を片手にサッカーファン・サポーターの1人として、笑って過ごしたいと思ってしまう。きっとオシムさんは天国から「いつまでもジェフの想い出に浸ってはいけない。そんなことより今日はW杯だ。どんな大会も初戦が最も重要なんだ」と世界中に叱咤激励をしているかもしれない。

改めて色んな感情が込み上げて、胸がきゅうっとなる試合を魅せてくれた全てのオシムチルドレンや関係者、ファン・サポーターに拍手を贈りたい。そして今日から始まる4年に一度の祭典の安全と成功を祈らずにはいられない。

文/スポーツブル編集部
撮影/株式会社運動通信社

この試合で得た収益の一部は、サッカーを志す少年や少女の選手への還元されるほか、オシム氏の指導理念の伝承などに活用するとクラブが明かしている。試合当日は、スタジアムに新設された「オシムゲート」のお披露目会やオシム・イズムを継承するキッズサッカー教室も行われた。

完成したばかりのオシムゲートの前でセレモニーに登壇した羽生直剛さんは自身のサッカー人生を振り返り、未来と希望を語った 撮影/株式会社運動通信社