鍵山優真の欠場で一気に混戦模様 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズは第4戦(アメリカ、カナダ、フランス、イギリス)までを終え、いよいよ佳境に入ってきた。各カテゴリーで上位6選手が出場できる12月8日開幕のGPファイナル進出争いで…

鍵山優真の欠場で一気に混戦模様

 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズは第4戦(アメリカ、カナダ、フランス、イギリス)までを終え、いよいよ佳境に入ってきた。各カテゴリーで上位6選手が出場できる12月8日開幕のGPファイナル進出争いで、大きなカギになるのが11月18日から札幌で始まる第5戦、日本大会(NHK杯)だ。

 男子は、これまで世界を牽引してきた羽生結弦と北京五輪優勝のネイサン・チェン(アメリカ)が競技からいなくなったうえ、昨季、北京五輪と世界選手権でともに銀メダルを獲得した鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)がケガで欠場し、一気に混戦になっている。

 史上初の4回転アクセル成功を含め、複数の4回転ジャンプを跳ぶイリア・マリニン(アメリカ)が新スター候補として登場するなか、GPシリーズ第4戦終了時点でトップに立っているのが、10月のスケートアメリカとスケートカナダを連戦で出場し、ともに2位になって26ポイントを獲得した三浦佳生(オリエンタルバイオ/目黒日大高)。三浦はGPファイナル進出がすでに決まっている。

 マリニンは、スケートアメリカでショートプログラム(SP)4位発進ながら、フリーでアクセルを含む4回転4種類5本の構成で194.29点を獲得し、合計280.37点で優勝。2戦目に第6戦のフィンランド大会を予定しているが、順当ならその大会で勝利しポイントを30点にするはずだ。



スケートカナダを制した宇野昌磨。NHK杯優勝を狙う

 また、スケートカナダではSP、フリーともにミスを出しながらも273.15点で優勝する底力を見せている宇野昌磨(トヨタ自動車)も自身2戦目のNHK杯は優勝候補筆頭で、順当に勝ち上がるはずだ。

 そんななかでGPファイナル進出の基準となってきたのは、スケートアメリカ4位ながらも第4戦のイギリス大会を264.35点で制したダニエル・グラスル(イタリア)が獲得している24ポイント。彼の場合は優勝があるため、他の選手は同じ24ポイントで並んでも優勝がなければ総合順位で並ぶことができない。

 イギリス大会で3位になり、フィンランド大会を残している佐藤駿(明治大)は、マリニンを破って優勝すれば26ポイントで抜け出せるが、2位だと24ポイントでグラスルの下位に甘んじることになる。

戦いはNHK杯でほぼ決まる

 GPファイナル進出争いは、これまでの大会で3位以内に入っている選手が6人も出場するNHK杯でほぼ決まるといっていい。

 一歩抜け出しているのは、スケートアメリカ優勝の宇野と、フランス大会を268.98点で制しているアダム・シャオ イム ファ(フランス)だ。

 ふたりは3位以上になれば26ポイントを超え、進出争いから一歩抜け出せる状況。もし4位でも、宇野は合計248.89点以上を出せばグラスルの上位に立ち、シャオ イム ファは253.06点以上なら2試合の合計得点でグラスルを上回る。

 前大会の実績を見ればそれ以上の得点を獲得する可能性の高いふたりが、その条件をクリアした場合、他の4選手の条件は厳しくなる。フランス大会2位の山本草太(中京大)は2位以上、スケートアメリカ3位のチャ・ジュンファン(韓国)とスケートカナダ3位のマッテオ・リッツォ(イタリア)、フランス大会3位の友野一希(上野芝スケートクラブ)はともに優勝するのが第一条件になるからだ。

 マリニンがフィンランド大会で優勝すると仮定した場合、NHK杯でチャとリッツォ、友野のなかから優勝者が出て、2位が山本、そして宇野とシャオ イム ファが4位以上という結果になれば、その6人がグラスルを上回ってファイナル進出者はほぼ確定する。

 だが、宇野とシャオ イム ファ以外が条件をクリアできず、山本が3位、他の3人のうちいずれかが2位となって24ポイントで並べば、あとはフィンランド大会で2位になる可能性のある佐藤も含めた、2試合のポイント合計の比較になってくる。

 その場合に有利になってくるのは、スケートアメリカで264.05点を出しているチャで、それに続くのがフランス大会で257.90点を出している山本だ。だが、昨季までの自己ベストを見れば、チャが282.38点、友野が269.37点で続き、佐藤は264.99点、リゾは260.53点、山本は257.90点となっていて予断は許されない。

 フランス大会の記者会見後、友野はNHK杯について「めちゃくちゃ大変。宇野くんもチャも出てくるし」と思わず漏らしていたが、GPファイナルを狙う選手たちにとっては熾烈な大混戦だ。

羽生結弦の「ドラマ」再来なるか

 2014年のNHK杯では、前戦の中国大会フリーの6分間練習で他選手と激突する事故がありながらも2位になった羽生結弦が、GPファイナル進出を狙って強行出場しSPは5位発進。翌日のフリーも得点を伸ばせず、上位4人が残った状況で229.80点にとどまり、演技終了後はファイナルを諦めていた。

 だがあとの選手もミスが続き、羽生は4位に終わったものの、SP2位だったジェレミー・アボット(アメリカ)が5位に落ちたことでポイントが並び、羽生が2試合の合計で0.15点上回って6位でGPファイナル進出を決めるドラマがあった。

 そんな驚くようなドラマが、今回のNHK杯でも待っているかもしれない。