11月3日に開催された『BreakingDown6』は、過去最多となる31試合(1試合中止)が行なわれた。BreakingDownのスペシャルアドバイザーを務める朝倉未来。今後の安全性に関する対応にも注目が集まる。 初回大会(2021年7…

 11月3日に開催された『BreakingDown6』は、過去最多となる31試合(1試合中止)が行なわれた。



BreakingDownのスペシャルアドバイザーを務める朝倉未来。今後の安全性に関する対応にも注目が集まる。

 初回大会(2021年7月4日)から1年4カ月。迎えた『BreakingDown6』の柱企画は、『THE OUTSIDER』と『BreakingDown』による6対6の対抗戦。他の試合とは一線を画す緊張感があり、注目度も高かった。

 対抗戦が始まると、BreakingDown勢が先鋒の山川そうき(少林寺拳法で全国優勝)を皮切りに4連勝。格闘技経験で勝るTHE OUTSIDER勢を飲み込んでいった。同大会で審査員を務めた、元総合格闘家の大沢ケンジ氏(和術慧舟會HEARTS主宰)は、「1分間の戦い方に慣れているかどうかが大きい」と振り返った。

 苦境のTHE OUTSIDER勢で初勝利を挙げたのは、セミファイナルの"濱の狂犬"黒石高大。現在は俳優として活動し、これが約7年ぶりのリング。それでも"闘う料理人"こめおとの延長戦で、終了間際に右のハイキックを顎にヒットさせてダウンを奪い、判定勝利。試合後のマイクでは「メチャクチャ楽しかったです。この刺激はリングの上でしか味わえない。本当にありがとうございました。押忍」と男泣きした。

 メインイベントの大将戦は、"キング・オブ・アウトサイダー"啓之輔(65-70㎏級初代・第4代王者)vs『BreakingDown』の新たなエース、飯田将成(元プロボクサーで日本ウェルター級10位)。序盤は飯田がパンチの連打を浴びせ、開始10秒でダウンを奪う。それでも啓之輔は慌てることなく、飯田のパンチに合わせて左ヒザを2発。2発目がドンピシャで決まると飯田はうずくまり、逆転のTKO勝利を飾った。

 試合後、啓之輔は「(2勝4敗と)アウトサイダーが負けちゃったからあまりデカいこと言えないけど、俺がアウトサイダーだから」と語り、さらに「最後、朝倉未来選手とリベンジマッチ(2015年のTHE OUTSIDER 第36戦、65-70kg級タイトルマッチで啓之輔は未来に敗れた)をブレイキングダウンでやらせてもらって引退したいです」とラストマッチの相手として対戦を要求した。

 啓之輔のKO勝利には、大沢氏も「狙ってあのタイミングでヒザを入れられるのはすごい」と絶賛。今大会から設定されたベストKO賞にも選ばれ、啓之輔には10万円が贈られた。

 大会後、囲み取材に応じた朝倉未来は、「(かつて自らも戦っていた)『THE OUTSIDER』が全勝するかと思っていたので、ちょっと悲しい気持ちもあったりして。でも『BreakingDown』(のアドバイザー)としては嬉しいみたいな、複雑な感じでしたね」と胸の内を語った。

 啓之輔からの対戦アピールについては、「う~ん......見たいですかね? そのへんの選手と一緒にしないでほしいなとは思います」と現時点では頭にない様子。しかし、以前から示唆してきた自身の参戦については「来年は絶対に出ます」と明言し、「相応の相手を用意して、本当に勝負論のある人とやりたいです」と意気込みを口にした。

露呈した問題点

 さらに朝倉未来は、大会前日の11月2日の会見で、"会津の喧嘩屋"久保田覚が、対戦相手のアドリブまさお(元プロボクサー&YouTuber)をパイプ椅子で殴打し、まさおがケガを負って試合が中止になったことについて、「もちろん本人の反省も大事だと思うし、僕らもセキュリティーの強化だったり、度がすぎたことをしないようなアナウンスだったり、同意書だったりとか、そういったところもしっかりしていく」と、安全面を強化していくとした。

 初回大会からここまで、賛否両論を巻き起こしながら拡大してきた『BreakingDown』だが、今回の前日会見でのアクシデントは大きな波紋を広げた。大会後、審査員を務めた大沢氏に安全面について話を聞いた。

――まず、前日会見での騒動について、率直な感想をお願いします。

「盛り上げようとする気持ちが間違った方向にいってしまった印象です。やりすぎ、いきすぎということ。以前にもパイプ椅子が飛んだことはありましたが、今回は相手がケガをして試合が流れたわけですからね。武器を使う、物を投げるといった行為は、予期せぬ大きな被害につながる。盛り上げ方の度合の問題ですね」

――どこまでがやりすぎなのか、そのボーダーラインを個人に委ねるのはリスクもあると思います。未来選手は「アナウンスや同意書」の必要性も話していました。

「越えてはいけないラインは人それぞれ違いますし、ましてプロではない人たちが多く参加しているわけですから。目立ちたい、爪痕を残したいという思いから過激な行動をする人も出てきます。運営側が椅子を投げることを禁止したり、乱闘自体に制限を設けることもできますが『どこまで?』という難しさもあるでしょう。事故が起きないようにするのは必須として、安全性を保ちながら"BreakingDownらしさ"をどう残すのか、が課題じゃないでしょうか」

――「やったもん勝ち」になっている部分もある?

「やりたい放題にやった人が結果的に本戦出場するとなると、それが成功例になってしまう。『とにかく暴れればいい』みたいなことは避けたいですね。

 ただ、『BreakingDown』はヒリヒリしたオーディション(『BreakingDown4』から導入)からの試合という流れがウケているのも事実で、制限のかけ方によっては通常の格闘技の大会と変わらなくなってしまう。そうなると『BreakingDown』じゃなくてもいいじゃないか、となってしまいます。トラッシュトークなど方法はいろいろありますが、お互いに絶対負けられない状態で試合を迎えるから価値が出るエンターテインメントですから、それがないとローリスクな、ただの技術が低い人同士の戦いになってしまいます」

――『BreakingDown』は1分間の勝負だけでなく、その前後のストーリーも見せることをコンセプトのひとつにしています。

「そうですね。結局は、視聴者が『BreakingDown』をどう見ているかによると思いますが、僕は競技としてではなく、エンタメというかバラエティー番組のようなものとして見ています。出演者が『BreakingDown』という企画に乗って名前を売る場所という感じ。ひとことでエンタメと言っても幅広いですが、いずれにしてもパフォーマンスで盛り上げようとしてケガをしてしまうと本末転倒ですし、もちろん安全面は問われますが。

 格闘技として見てしまうと、より整備が必要な面が出てきます。例えば、選手と同じチームのメンバーが審査員を務めていることや、どこで勝ち、負け、ドローを判断するかという判定のレギュレーションがきっちり決まってないこともそう。ただ、そこを突っ込む声があまり聞こえてこないのは、見る側も勝敗だけではなくエンタメ性に重きを置いている人が多いからじゃないかという印象です」

――修正・改善を繰り返し、回を重ねるごとに大きくなった『BreakingDown』が新たな局面を迎えているように感じます。

「パフォーマンスがエスカレートしてきた流れはここで一度終わると思います。『BreakingDown』は次回から3つ目のフェーズに入るんじゃないかと。試合中心だった1~3回までが第一章で、オーディションを導入してブレイクした4~6回までが第二章。今回の課題をどう乗り越えるかが注目される次回以降は、第三章になるでしょうね」

――安全性を考慮したマイナーチェンジではなく、まったく別の見せ方にフルモデルチェンジする可能性もあるのでは?

「未来選手は、そのへんの対応能力に長けていますからね。これまでも、問題を起こした選手とすぐに動画で共演して話をしたりと、解決に向けた動きは早かったですよね。未来選手がどう舵を切るのか、注目したいと思います」