開幕から3年目を迎え、全ダンサーに、いよいよ脂がのってきたと感じさせるDリーグ22-23シーズンのRound3が2日、有明ガーデンプレイスで開催された。◆ソフトバンクがダンス界で実現させた近未来的3D映像の衝撃 3Dバトルも提供スタート今シ…

開幕から3年目を迎え、全ダンサーに、いよいよ脂がのってきたと感じさせるDリーグ22-23シーズンのRound3が2日、有明ガーデンプレイスで開催された。

◆ソフトバンクがダンス界で実現させた近未来的3D映像の衝撃 3Dバトルも提供スタート

今シーズンから2チームごと6MATCHでの対戦方式となり、その結果によって勝ち点が加算されてシーズンの順位が付き、チャンピオンシップへの進退も決まってゆく。そのため、どのチームと対戦するのか、そのチームにどのようにして勝つのかが、重要事項となる。このルール変更で戦い方が変わってくることは予想できたが、このラウンド3は、ことさらその変化を感じることとなった。

各MATCHの闘いを振り返ってみたい。

■ファーストマッチから常勝チームの戦い

【1st MATCH】CyberAgent Legit [4-2] FULLCAST RAISERZ

ファーストマッチは現在トータルランキング1位のレジットと、常勝集団のレイザースというトップ同士の闘いとなった。毎回レジットの演技は、見ていて「うまい!」と悶えてしまうチームだが、今回はホワイトハットとパンツ、そこに紫に光るシャツという陽気な衣装で登場。しっかり叩かれるドラムの音と共にストリートダンスの王道を行き、スピーディな中にも抜け感漂う、緩急が素晴らしい踊りを披露してくれた。

対するレイザースは、今回は上半身裸ではなくシックなチョッキ姿で登場。全員が機械仕掛けのおもちゃに扮し、表情豊かに、レイザースの鍛え上げられた身体ならではの難易度高い踊りと、仕掛けたっぷりの愉しいナンバーが届けられたが、結果は4対2でレジットが勝利した。

【2nd MATCH】SEGA SAMMY LUX[3-3]USEN-NEXT I‘moon

セカンドマッチは対照的ともいえる、男性集団ルクスとDリーグ唯一のガールズオンリーチームであるアイムーン。男性的なセクシーさが際立つルクスはグリーンのスーツに身を包み、色気と共に風格あるダンスで独自の世界を創り出した。一方、可愛さが先行していたアイムーンは今シーズンからどんどん力強さを増し、パープルのレインコートと傘を効果的につかった振り付けで、可愛さの中にある強さを表現。最後は雨の音と共にパープルのレインコートを投げ捨て解き放たれたパワフルなダンスを繰り広げた。結果は3対3のドロー。男らしさと女の強さの対決は引き分けとなった。

【3rd MATCH】dip BATTLES[0-6]KADOKAWA DREAMS

サードマッチは毎ラウンド個性的な世界観で観客を魅了するディップ・バトルスとエネルギーの強さが際立つカドカワ・ドリームス。ディップバトルスは浮世離れしているようないつもの雰囲気とは違い、今回はしっかり現世的に黄色と紫の衣装でロッキンのど真ん中を踊り、また違った一面を見せてくれた。対するドリームスはストリートダンスの凄みで迫り、そのスタイルを爆発。年季が入りまくった風合いのブルージーンズとホワイトジーンズ素材のジャケットで、ステージ上にストリートが立ち現れたかのような熱いダンスが展開し、結果0対6での圧勝、かつSWEEPポイントの獲得となった。

サードマッチはKADOKAWA DREAMSの圧勝に終わった©D.LEAGUE22-23

【4th MATCH】Valuence INFINITIES[1-5]Benefit one MONOLIZ

フォースマッチは今シーズンから参入のヴァリュエンス・インフィニティースと妖艶さが光るベネフィット・ワン・モノリス。インフィニティースは柔らかな毛布のような素材で出来たスポーツウェアで、その柔らかさに負けない柔らかく自由自在な動きで目の覚めるようなヒップホップを踊りきった。一方、妖艶さを押し出すモノリスは今回はディレクターのハルも加わり、ファラオ、そしてクレオパトラをテーマにゴールドに輝く衣装に炎色のフラッグを効果的に使って更なる妖艶な世界を作り上げた。結果、1対5でテーマを上手く使ったモノリスが勝利。インフィニティースの踊りの上手さは今回もしっかりと光っていたが、テーマと仕掛けにおいて勝ったモノリスに軍配が上がった。

【5th MATCH】SEPTENI RAPTURES[1-5]avex ROYALBRATS

ラスト2のフィフスマッチは、芸達者ぞろい同士と言いたくなる劇団のようなロイヤルブラッツとセプテニ・ラプチャーズの対戦。下着のような白いランニングシャツと黒のパンツだけで現れたロイヤルブラッツのテーマは「ドレスアップ」。舞台に置かれた衣装を踊りながら身に着け、踊りながら靴を履き、パーティーへ繰り出す男性がドレスアップしていく様子そのものがショーとなり、今回もエンタメ度の高いナンバーが繰り広げられた。対するラプチャーズは飾り気のない衣装で勝負。見ていると嬉しくなってくるダンサブルな特長は健在だったが、今回は“愉しさ”が光ったロイヤルブラッツが勝利した。

■ブレイキンで大盛りあがりの会場、しかし勝敗は…

【6th MATCH】KOSE8ROCKS[2-4]LIFULL ALT-RHYTHM

ラストのシックスマッチ。毎回コンセプトをしっかり打ち出してくるライフル・アルトリズムは今回は「クルクル」と呼ぶゴールドの衣装でキラキラとヘッドスピンで回り続ける“仕掛け”を象徴的に使い、その煌めきを中心に独特の世界を繰り広げ、観る者の心を奪った。

一方、ブレイクダンスの世界チャンプのShigekixをSP(ゲスト)ダンサーに迎えて挑んだコーセー・エイトロックスはブレイキンのど真ん中のナンバーを披露。やはりブレイキンは会場を盛り上げるという意味では出色で、今回もナンバーのラストで観客席から沸騰したような声援があがり大いに会場を沸かせることとなった。が、結果は4対2でアルトリズムが勝利した。

KOSE8ROCKSは世界チャンピオンのShigekixをSPダンサーに迎えた©D.LEAGUE22-23

12チームが6つのマッチを闘うルールに変わり、各対戦での闘い方が変わった点として、以前より、よりテーマ性を持たせたナンバーが目立つようになってきた。

ダンスは総合芸術であるため、スポーツのように、上手いだけでは勝てないということが浮き彫りになってきたようだ。ダンスのスキル、腕前だけではなく、作品のクリエイションや小道具の上手い使い方、アクティング等々の総合力と統合力で、より印象に残る作品に軍配が上がっている。

これは進化と呼んでよいのだろうか。正直、若干の疑問を感じないでもない自分が居るが、22-23シーズンも次回12月14日のラウンド4から来年4月5日のラウンド12を経て、4月23日のチャンピオンシップへと続いてゆく。現在の変化がしっかりとした進化となり、2024年のパリオリンピックの結果にも結びついてくれることを祈りながら、次のラウンド4での展開を楽しみに待ち受けたい。

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著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター

『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。