フットサル日本代表/清水和也インタビュー フットサル日本代表は、9月27日から10月8日にかけて開催されたAFCフットサ…

フットサル日本代表/清水和也インタビュー

 フットサル日本代表は、9月27日から10月8日にかけて開催されたAFCフットサルアジアカップクウェート2022で、8年ぶり通算4度目の優勝を成し遂げた。このチームのエースとして大きな期待が寄せられていたのが、Fリーグのフウガドールすみだに所属する清水和也だった。
 そこで、帰国後に清水をインタビュー。選手目線から今回のアジア制覇を振り返る。

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グループ首位通過を決めた2得点

 フットサル選手になってから、この優勝は清水にとって初のタイトルとなった。

 清水は、「日本に帰ってきて、あらためて優勝したんだということと、壮絶な大会だったと実感しています。注目度が高かったので、帰国してからのイベントでも、多くの方に『見ていました。おめでとうございます』と声をかけてもらいましたし、Fリーグとは違う試合展開に驚いていた方もいました。すごく嬉しい反響をいただけていると思います」と、はにかんだ。



フットサルアジアカップで3ゴールを挙げ、優勝に貢献した清水和也

 今大会、清水は日本の全6試合に出場して3得点を記録。このゴールはいずれも、大きな意味を持った。

 大会初ゴールと2点目が決まったのは、グループステージ第3節のベトナム戦。この試合、日本がグループ首位通過のためには2-0以上のスコアでの勝利が必要だったなかで、第1ピリオド6分、U-20日本代表時代から互いに知る石田健太郎(バルドラール浦安)からのパスを受けると、相手を背負いながらも力強く反転し、GKを外してシュートを突き刺した。

「前半の最初から自分のなかではリズムよくプレーができていました。(石田)健太郎には『相手DFから遠いほうの足にパスを出して』と話していたなかで、注文どおりのパスをくれました。そうすると(相手を背負いながら)回れるチャンスも来ます。自分のなかで反転したあとは、相手に引っ張られて窮屈でしたが、(足を)振りきれると確信を持っていましたし、GKが寝ることもわかっていました。その先にカバーがいるのも見えていましたが、そこは構わずに打ち抜きました」

 第2ピリオド16分にも、左サイドでボールを受けると、反転してGKの股下を射抜くシュートをゴールに叩き込み、1試合で2ゴールを記録。この試合の全ゴールを挙げて2-0の勝利の立役者となり、日本をグループ首位通過に導いた。

強豪イランを破ってアジア王者に

 もう一つのゴールが生まれたのは、決勝のイラン戦だった。イランは過去15回あったこのアジアカップで12回優勝。昨年のフットサルワールドカップでもベスト8に入った強豪だ(日本はベスト16)。

 第1ピリオドの15分に先制点を許した日本だったが、その直後にGK黒本ギレルメ(立川アスレティックFC)のロングボールからチャンスを作る。清水をマークしていた相手がボールの処理をミス。流れてきたボールをコントロールした清水が、冷静にゴールネットを揺らして同点に追いついた。

「あのシーンは、イメージとは全然違いました。黒本さんから直接、僕にボールが来ると思っていなかったんです。ロングボールが出た時、相手が一瞬早く前に出たので『先を越された』感覚でした。ただ、その時に相手に体をぶつけることができたんです。それによって、彼がイメージしていたボールへの到達点と、少しズレた部分があったと思います」

 ロングボールに反応した相手は、清水に体を寄せられて思い描いたコントロールができなくなり、ボールを後ろにこぼす形となった。こぼれ球に即座に反応した清水は、相手が戻ってくる前に右足を振り抜く。ボールはシュートコースを消しに前に出てきたGKの脇を抜き、ゴールに決まった。

「体を当てた時は、『ここにボールが落ちる』とは思わなかったですね。クリアミスを誘発してマイボールにできたらいいという感覚でした。ボールが転がった時には、事前情報でGKが(前に)ブロックしに来るのはわかっていたので、顔の横にボールを蹴ることができれば入るなと思っていました。それよりは低くなったのですが、すり抜けて入ってくれたのでよかったです。ボールが落ちてからは、勝手に体が反応した感じでしたが、スムーズでしたね。パーンと落ちて、クルッと反転させて、あとは打つだけだったので」

 準々決勝のインドネシア戦(3-2)、準決勝のウズベキスタン戦(2-1)と先制されながらも二度の逆転勝利を収めていた日本は、このエースの一撃で乗った。一方、これまでにリードされてから追いつかれることのなかったイランは、これまでとは異なる試合展開に焦燥感が出始める。

 第2ピリオド、日本はオリベイラ・アルトゥール(名古屋オーシャンズ)の直接FKでリードを広げると、試合終盤にはイランのパワープレーに耐えてオウンゴールを誘発。残り1秒でゴールを決められたが、3-2で逃げきってアジア王者に返り咲いた。

苦しい連戦からの成功体験

 優勝を喜ぶ清水だが、さらなる成長へのヒントも得られたようだ。

「勝てたことも大きいですが、何ができて、何ができなかったかを冷静に分析していけば、また選手としてグッと上がっていけると思います。各々がよい課題を持ち帰れました。自分の課題で言えば、スコアの面に関して波がありました。その波を一定にできるように、セットプレーやカウンターの部分でも仕留めきる。日頃のリーグ戦から、得点を取る選手にならないといけません。

 また、代表で得たやり方をここから先に成熟させていかないといけないなかで、次までに頭をもっとクリアにして、成功体験をピッチ上でスムーズに出せる作業を取り入れていきたい」

 清水が言うように、今大会で日本が得られた経験値は非常に大きい。例えば、大会初戦でサウジアラビアと対戦したが、過去にアジア杯で一度も勝利を挙げたことがなかった相手に日本は1-2で敗れた。



初戦敗戦からの優勝で大きな経験値を得たフットサル日本代表

「自分たちで苦しい試合にしてしまった。決めきるべきところで決めきれず、相手のGKを使った攻撃も対策はしていたのですが、失点してしまった。対策を練っていてもすべてを防ぎきることはできなかったし、負けるべくして負けた印象が強かった」と、清水は振り返ったが、この日の夜には選手が集まってミーティングが行なわれている。

 8年前の優勝を経験していた吉川智貴(名古屋オーシャンズ)と内村俊太(湘南ベルマーレ)が、チームの雰囲気を変える必要があると感じ取り選手たちを集めたのだった。

「仲間を励まさないといけない時に『あのパスミスが...』というように、どうしてもミスを指摘するような雰囲気になってしまっていて、あまりよくなかった。ピッチ上で起きたことは、ピッチ上で返さないといけないのに、自分自身も焦りを感じていたし、嫌なところが重なるゲームになってしまった」と清水。

 ミーティングの際には「技術的な話をするよりは、戦い方、気持ちのこと。『みんなで助け合い、誰かができないなら自分が助けてあげる"プラスワン"を出していこう』と話しました」と、一人ひとりが腹を割って話したなかで、チームメートたちに伝えたことを明かした。

 チーム状況が良い時は、多くのことをする必要はない。だが、悪い時にどうすればいいのかを多くの選手たちが経験できたのは大きな財産だ。8年前のベトナム大会では若手だった吉川と内村も、グループリーグ2戦目のウズベキスタン戦で敗れた経験があり、それが今回の行動につながった。今後、苦しい状況になった時には、チームを修正できる選手がこのチームからきっと出てくるはずだ。

インドネシアのフェアプレーに学ぶ

 また、今回の大会では、大きな話題となった場面があった。日本とインドネシアの準々決勝で、日本が2-1とリードしていた試合終盤のできごとだ。

 両チームがカウンターの応酬になる。日本がカウンターを仕掛けたが、ゴールを決められなかった。今度はインドネシアがカウンターを仕掛ける場面になったが、この際にインドネシアのシャウキ・サウードは石田がピッチに倒れていることを確認して、プレーを止めてボールをピッチ外に蹴り出した。

 日本のゴール前にはGK黒本ギレルメだけ、インドネシアはサウードに加え、フィールドプレーヤーがもう一人いる状況だっただけに、攻め続ければ確実に同点ゴールを奪える場面だった。この時、ピッチ上にいた清水は何が見えていて、どのように感じたのか。

「あの時間帯、当事者としてピッチに立っていましたが、自分がボールを持ってカウンターに出た時、僕自身は(石田)健太郎は一切、見えていないんです。ボールを奪って前を向いた時に倒された事象が起きていた。その時に『ボールを切れ』という声もなかった。

 だから、僕らの攻撃で点が入らなくて、インドネシアのカウンターになった時、健太郎が倒れているのが見えた。『なんでだ?』と疑問に思いながら戻っている時に、彼がボールを出してくれたんです。何かがあったから、彼らも『これは攻めてはいけない』となってボールを外に出してくれた。まずは、彼のところに行き、『ありがとう』と伝えた。僕らは、何が起きたかも知らなかったので、試合後に映像を見て、こういうことがあったんだなと把握しました」

 日本がカウンターに移った際、ボールを失ったインドネシアの選手が石田の足を引っ張って倒していたのだ。この行為によって、石田は古傷だった右ヒザをかなり痛めてしまった。だがその後「アドレナリンが出ていて痛みを感じなかった」石田は、プレーを続行。これが火に油を注ぐ形となり、インドネシア国内では「日本は攻撃を仕掛けたのに、なぜ私たちにだけフェアプレーを要求したのか」という日本に対する批判と、攻撃を止めたサウードに対する誹謗中傷の声がSNSには溢れた。

 試合翌日には両チームがそろって集合写真を撮影し、両協会からも声明を発表して、サウードが見せたフェアプレー精神を称えるとともに、両チーム間にわだかまりがないことを示した。

 清水も「いち選手として、ああいう状況でプレーを切るのは、僕が想像している以上に心苦しい判断になったと思う。しかも、1点差で負けているなかで、同じことができるかと言われたら、『はい』と即答できる自信もない。そのなかで、ああいう行動が取れるのは学ぶべき姿勢だし、スポーツをやりながらもリスペクト、相手を思う気持ちは常に持たないといけない。彼の行動から、ピッチ内外でより模範的な行動を心掛けたいなと思いました」と、サウードの判断を称賛した。

「今回の優勝を起爆剤にフットサルを盛り上げたい」

 8年ぶりにアジアを制した日本だったが、その活躍が日本国内で大きな話題になったとは言い難い。

 4シーズンを過ごしたスペインから戻り、現在は再び日本でプレーしている清水は、最後に競技全体の発展を目指す志を口にした。

「今回、選手たちは優勝という結果を残すことができました。あとはFリーグを含めて、どうやってマネジメント、マーケティングしていくかが重要になってくると思います。僕たち競技者も自分たちの魅力をどれだけ発信できるか。見てもらって『よかったね』で終わるのではなく、そこからいかにフットサルという競技に絡ませて、盛り上げられるかが大事ですね。今回の優勝を起爆剤に、盛り上げていきたいです」

清水和也 
しみず・かずや/1997年2月6日生まれ。東京都出身。小学生の時にフットサルを始め、高校時代はフウガドールすみだの育成組織でプレー。17歳の時にトップチームでFリーグデビューを果たした。左右両足から放たれる強烈なシュート力を武器にするピヴォとして頭角を表す。2018年からは4シーズンスペインで活躍し、今季2022年シーズンからフウガドールすみだに復帰してプレーしている。日本代表には2015年にデビュー。2021年のフットサルワールドカップに出場している。
Twitter:@0206_kazuya
Instagram:fuga11kazuya

フウガドールすみだ
http://www.fuga-futsal.com/
Fリーグ
https://www.fleague.jp/