ボクシングファン垂涎のカードのゴングがまもなく鳴ろうとしている。11月1日、さいたまスーパーアリーナで、WBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗とWBA世界ライトフライ級スーパー王者・京口紘人が激突する。実力派王者同士の統一戦は日本のみな…

 ボクシングファン垂涎のカードのゴングがまもなく鳴ろうとしている。11月1日、さいたまスーパーアリーナで、WBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗とWBA世界ライトフライ級スーパー王者・京口紘人が激突する。実力派王者同士の統一戦は日本のみならず、海外のファン、関係者の熱い関心を惹きつけるに違いない。



統一戦を行なう拳四朗(左)と京口

 一時は8度の防衛を果たし、王座陥落後もすぐにタイトルを取り戻した拳四朗が底力を見せるのか。はたまた、過去2戦をアメリカ、メキシコで戦い、連続KO防衛を果たして波に乗る2階級制覇王者・京口が統一を果たすのか。

 注目の戦いを占うべく、アメリカ、イギリスに本拠を置く4人の記者に、今戦に関する3つの質問をぶつけてみた。ウェブ討論に参加してくれたパネリストの言葉から、この試合の意味と価値が見えてくる。

11月1日 さいたまスーパーアリーナ

WBAスーパー、WBC世界ライトフライ級王座統一戦 12回戦

◆WBC王者 寺地拳四朗
(B.M.B/30歳/19勝<11KO>1敗)

VS

◆WBAスーパー王者 京口紘人
(ワタナベ/28歳/16戦全勝<11KO>)

【パネリスト】

●ジェイク・ドノバン(『Boxingscene.com』のシニアライター。全米ボクシング記者協会(BWAA)でもエグゼクティブを務める。Twitter : @JakeNDaBox)

●トム・グレイ(『リングマガジン』の元マネージング・エディター。イギリス在住で来日経験もある。Twitter : @ Tom_Gray_Boxing)

●カルロス・トロ(フリーランスのボクシング記者。プエルトリコ出身で、現在はクリーブランド在住。Twitter : @ CarlosToroMedia)

●エイブラハム・ゴンサレス(『NYFights.com』のエディター。ニューヨーク出身、ノースカロライナ在住。Twitter : @abeG718)

Q1.拳四朗vs京口戦の勝敗予想は?

ドノバン : この試合はほぼ50/50の戦いだと思っている。拳四朗は昨年9月の矢吹正道戦で王座陥落したが、今年3月のリベンジマッチでKO勝ちした時の戦いぶりには感心させられた。一方、京口が敵地で真っ向から打ち合ってKO勝ちした、エステバン・ベルムデス(メキシコ)戦の内容も見事だった。

 私はこれまで「拳四朗こそが世界ライトフライ級で最高の選手だ」と考えてきた。今回の試合でも拳四朗がわずかに優位ではないかと見ている。予想するなら、拳四朗の僅差判定勝ち。10年前の2012年に行なわれた井岡一翔vs八重樫東戦のように、"ファイト・オブ・ジ・イヤー(年間最高試合)"の候補となるような激しい打ち合いになるだろう。

グレイ : 拳四朗の3-0の判定勝ち。

トロ : 試合中、いつでも相手をKOするだけのパワーがあるボクサー同士の対戦だけに、予想は難しい。京口はより規律の取れたボクサーであり、好調時ではなくとも相手の弱点を炙り出す力を持つ。拳四朗も好選手だが、必要以上に被弾する傾向があるのが気になるところだ。

 京口がフルラウンドにわたって主導権を保てれば自ずと勝ちが見えてくるが、拳四朗のパワーには常に警戒が必要。今年度の最高レベルの緊張感あふれる激戦の末、京口が判定勝ちを飾ると見る。

ゴンサレス : 拳四朗、京口のようなハイレベルの世界王者が統一戦で対戦することは、ボクシング界にとっての喜びだ。接戦になると思うし、少し若い京口が有利という予想が多いが、私は経験豊富なベテランの拳四朗が相手のミスにつけ込み、僅差の判定勝ちを収めると見ている。

Q2.勝負を分けるカギは?

ドノバン : 京口は馬力のある選手だが、パンチ力では拳四朗が上だと感じている。京口のよさは、より規律が取れた攻めができるところであり、状況に応じてアウトボクシングをするのもいいかもしれない。拳四朗のほうも一発に頼らず、コンビネーションで攻め続ける必要があるだろう。

グレイ : スピード、スキル、機動力では拳四朗が上回っている。彼はディフェンスにも気を配ることができるから、京口が勝つためにはかなりの奮闘が必要になるのではないか。

 京口のほうがよりパワフルかもしれないが、拳四朗は巧さで穴埋めできる。リマッチでの内容を見る限り、拳四朗が敗れた矢吹との1戦目は地力が反映されたものではなかった。彼は本物で、この試合でも勝ち残るだろう。

トロ : いかに先手を取るかではなく、試合中にどちらが有効なアジャストメントを行なうかがカギになる。両者ともにシャープかつアグレッシブで、相手にプレッシャーをかける馬力ある。ただ、後退しながらでも戦えるのは京口のほうだろう。

 矢吹戦で初黒星を喫した時の拳四朗は、後ろに下がった際に顔面に強打を浴びていた。アウトボクシングができるのは実は京口のほうで、それに適応する術を見出せなければ、拳四朗にとって厳しい戦いになるかもしれない。

ゴンサレス : アグレッシブな攻めの京口と、辛抱強く的確な拳四朗の激突という構図になるだろう。京口は前に出てジャブをつき、左ボディと右オーバーハンドにつなげようとするはずだ。

 一方、拳四朗は相手のジャブをはね除け、コンビネーションやカウンターを放つ距離にいようとするに違いない。ボクシングは"スタイル次第(Styles make fight)"という言葉があるが、この2人は完璧に噛み合うはずだ。

Q3.統一戦に勝利した者は今後、どんな道を進むと予想するか?

ドノバン : 京口が勝ったとすれば、ライトフライ級に残り、アンダーカードに登場するWBO同級王者ジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)との対戦といった統一戦路線に進むのではないか。それに対して拳四朗のほうは、勝っても負けてもフライ級に上げ、さらなる挑戦を目指す可能性が高いと見ている。

グレイ : 勝者がフライ級に上げ、前WBO世界フライ級王者の中谷潤人(M.T)と対戦すれば最高のカードだっただけに、中谷が王座を返上して昇級したのは残念だった。中谷は減量が厳しかったのであれば仕方ないが。今戦の勝者には、ライトフライ級WBO王者のゴンサレス、IBF王者のシベナシ・ノンティンガ(南アフリカ)といった対立王者と、統一戦を盛り上げてほしい。

トロ : 今戦の勝者はライトフライ級のトップとなり、フライ級への昇級を前に統一戦が視野に入るはずだ。勝者はアンダーカードで行なわれるゴンサレスvs岩田翔吉(帝拳)の勝者と3団体統一戦を行なうことになるのではないか。その後、4団体が統一されるのかどうかは予測できないが、少なくとも、もう1戦は統一路線が続くと見る。

ゴンサレス : 今回の試合は期待通りの激闘になり、リマッチが考慮されるのではないかと思う。そうならなかった場合、勝者はゴンサレスvs岩田の勝者との3団体統一戦に進むだろう。いずれにしても、この階級ではまだまだエキサイティングなカードが組まれるはずだ。