4失点目を喫したジャンルイジ・ブッフォンがネットからボールを取り出し、ピッチに何度も弾ませる。64分に3点目を決め…

 4失点目を喫したジャンルイジ・ブッフォンがネットからボールを取り出し、ピッチに何度も弾ませる。64分に3点目を決められ、84分にフアン・クアドラードが退場した時に実質的には勝負は決まってしまったが、それからも39歳の主将は手を叩いて仲間を鼓舞してきた。落ち着け、コンパクトな形を維持しろ、そして最後まで諦めるな、と。



ブッフォンが闘志を見せるも、CL決勝で敗れたユベントス しかし、90分にマルコ・アセンシオにダメ押しのゴールを決められた時、いつもはポジティブな守護神でさえ、うつむき、所在なさげにボールをただバウンドさせることしかできなかった。失望か、諦念(ていねん)か。その脳裏には何が浮かんでいたのだろうか。

 1-4の敗北。イタリアの”老貴婦人”ユベントスと、スペインの”白い巨人”レアル・マドリードによるクラシック・ファイナルは、接戦になることも予想されたが、最終的には後者が格の違いを見せつける結果となった。これにより、ユーベはチャンピオンズリーグ(チャンピオンズカップ時代を含む)決勝で7度目の黒星を喫し、不名誉な記録を更新。自身3度目の正直を狙ったブッフォンも、またしても頂にたどり着けなかった。

「前半、我々は見事なパフォーマンスを見せ、レアルの手を焼かせた」とブッフォンは試合後に話した。

「後半にあんな風になってしまった理由は、僕には説明できない。ただ、このような極めて重要な試合を勝つには、いかなる困難にも立ち向かう強さが必要なのだろう」

 確かに、序盤から主導権を握ったのは彼らだった。その流れに逆行して先制されたとはいえ、マリオ・マンジュキッチの壮観な同点ゴールにより、イーブンでハーフタイムを迎えた。後半のピッチに先に出てきたのもユベントス。試合開始前から明らかに逆サイドより熱量で勝るサポーターの後押しを受けて、21年ぶりの悲願──前日会見でダニエウ・アウベスとブッフォンは夢と表現した──を彼らと共に叶えようと決意していたはずだ。

 ところがその想いとは裏腹に、時間の経過と共に相手との地力の差がピッチ上に表れていく。カゼミーロのゴールはディフレクションして左下のコーナーに飛び、ブッフォンに防ぐチャンスはなかった。しかし、その3分後には右サイドを完全に崩され、不運とは言えないゴールでさらにリードを広げられてしまう。

 今季のCLでは3失点しかせず、鉄壁に見えたベテランたちの要塞が音を立てて崩れていく様には、レアルの破壊力と頂上決戦の不条理を感じずにはいられなかった。試合後の会見でマッシミリアーノ・アッレグリ監督は否定したが、その展開は2年前のバルセロナとの決勝を思い起こさせるものだった。

 欧州フットボールを好むほとんどの人間が、愛すべきキャラクターを持つ偉大なGKへの同情を禁じ得なかったことだろう。来年の1月で40歳を迎えるブッフォンにとって、これがCL制覇の最後のチャンスだった可能性も高い。

 それでもフットボールは続いていく。品格と歴史、組織を備えるユベントスなら、間違いなく、これを糧にしてまたひとつ上の高みを目指せるはずだ。

 その意味で、パウロ・ディバラがこの敗戦からいかに立ち上がっていくのかが重要になる。次世代の旗手として期待される23歳は、初のCL決勝で本来の姿を披露できなかった。アッレグリ監督は前日の会見で、「ディバラは今季、すごく成熟した。決勝でも重圧を感じることはないだろう」と話していたが、試合後には「メンタル面がプレッシャーにさらされていた」と認めるほかなかった。

 チームで最もCL優勝経験の多いアウベスを筆頭に、チームメイトたちはこの若きエースの重圧を少しでも軽減しようと、試合前の練習から背番号21に声をかけ、スキンシップをはかっていた。開始早々にフェイントで相手をかわしていつものようにファンを沸かせたが、12分にイエローカードを受けると、そこから少しずつ歯車が狂っていく。ボールを失う機会が増え、味方との呼吸も合わなくなり、フラストレーションを表に出すようになった。

 守備のタスクはそれなりにこなしていたが、持ち味の攻撃性は見せられないまま、78分には交代を命じられた。その後はタオルを頭からかぶって、ベンチで長くも短くも感じられる時間を過ごしたのではないか。

 試合終了後、遠くの記者席からオペラグラスを覗くと、ディバラが自分の顔を拭く様子が何度か見えた。汗なのか涙なのか判じかねるものだったが、彼の悔しさと無力感は十分に伝わり、チームメイトやスタッフの誰もが、彼の頭や肩に触れた。やがてディバラは座り込み、芝生に目を落とす。それを目に留めたアウベスが彼を立ち上がらせて、肩を叩いた。「ユベントスの夢のCL制覇はお前にかかっているんだぞ」とでも言うように。

「今、私たちは休息を必要としている。しっかり休んで、また新たにモチベーションと勢いを取り戻そう。フットボールは次の年にまたチャンスをくれるのだから」とアッレグリ監督は言い、ブッフォンも「契約はあと1年残っているから、CL制覇のチャンスはもう一度ある」と前を向いた。

 またしても叶わなかったユーベの夢。それでも、フットボールは続いていくのだ。