東京ヤクルト・スワローズ対オリックス・バファローズの日本シリーズはたけなわ、メジャーリーグはこれからワールドシリーズが始…
東京ヤクルト・スワローズ対オリックス・バファローズの日本シリーズはたけなわ、メジャーリーグはこれからワールドシリーズが始まる。
プロ野球のクライマックス・シリーズはレギュラーシーズンの上位チームのホーム球場で全試合が行われるが、メジャーリーグでは地区シリーズ、リーグ優勝決定シリーズ、ワールドシリーズと両チームの本拠地で数試合ずつ開催される。
■プロ野球ではあくまでも「ホーム」と「ビジター」
最近はサッカー人気が日本を支配し、テレビ番組の野球コーナーでも司会者や出演者が「アウェイの雰囲気」などと発言することが多い。野球関係者はしっかり「ビジター」という言葉を使ってほしいと私は思う。日本の野球ではあくまで「ホーム・チーム」と「ビジター・チーム」なのは言うまでもない。
それはさておき、地元で負けると世の中が終わったような報道になったり、敵地で勝つともう優勝は確定的になったように評論家諸氏も発言したりすることが多いように思う。
確かにポストシーズンの一戦一戦、満員のスタジアムを埋め尽くした地元の大歓声は、ビジター・チームの選手を圧倒するような雰囲気にはなるものの、それはそれであって、実際の試合で選手はそれほど影響されるものではないと思う。地元の悲鳴の中でビジターが優勝したシーンをいくらでも思い出すことができるからだ。
サッカーだと、アウェイで勝つのはホームで勝つより困難という共通認識があり、野球のように片方の本拠地で4試合ともう一方で3試合というのは不公平と考えられているのだろう、ホーム・アンド・アウェイを1戦ずつ開催する形式が多い。そしてアウェイでの得点はホームでのそれと比べ重い価値を持つ。
そこで日本シリーズのホームチームの勝率を調べてみた。
■3勝2敗の王手からホーム2連敗は実に7例
1950年に行われた第1回は、毎試合球場が変わるシステムだったため、第2回の1951年から2021年までの71回、ホームチームは219勝192敗、勝率は5割3分3厘である。世間が騒ぐほど地元が有利ではないとわかる(1981年の全戦後楽園球場で行われた日本ハム・ファイターズ対読売ジャイアンツのシリーズは後攻チームをホームチームとしてカウントしている)。
また、優勝が決まる試合は、ホームが71回中34回であり、ビジターが勝ち越している。特に7戦までもつれたシリーズのうち1955年、1958年、1964年、1986年(引き分けをはさみ第8戦まで)、1989年、2004年、2008年は、ホームチームが3勝2敗で王手をかけた状態で地元に戻って連敗、ビジターに優勝をさらわれたケースで、実に7例もある。
この7度の例には入らないが、1976年の日本シリーズを私は忘れることができない。
阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)3連勝のあと読売ジャイアンツが3連勝、しかも第6戦は7-0からの逆転勝利とあって、ホーム後楽園球場で迎えた第7戦は大騒ぎとなっていた。その時点で史上二度目の3連敗からの逆転優勝を巨人が果たすものと思った人は多かったのだろう。高校生だった私も巨人の勝利を疑わなかった。
しかし、運命の第7戦で阪急は福本豊のホームランなどで巨人の先発ライトを打ち崩し、阪急の先発・足立光宏は超満員の巨人ファンに囲まれながら2失点完投勝利を挙げた。この時、足立は「騒ぐなら騒げ」とつぶやきながら投げたと囁かれている。当時の私にとって、この試合は呆然とするような、信じられない結果だった。だがこの後から、勢いだの流れだの、いろいろ取り沙汰されようと、先発投手がしっかり仕事をこなせば、それが勝利に結びつくと考えるに至った。
そして前述した通り、試合結果を振り返れば、その通りである。
さて、今年のシリーズ、オリックスが第5戦で劇的な勝ち方をして気分よく移動できるという解説が多いけれども、ここでも私は「それはそれ」と思う。第6戦と7戦の投手陣と打線、そして監督の采配など、いつもどおり野球は両軍の力量、そして少しの時の運で結果が出る。
◆日本シリーズ第2戦はヤクルトのサヨナラ勝ちだった…… 失点を広げる“前進守備”は正解か
◆オリックスの優勝を危うくした福田周平の走塁 無死または一死における二塁走者の難易度
著者プロフィール
篠原一郎●順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授
1959年生まれ、愛媛県出身。松山東高校(旧制・松山中)および東京大学野球部OB。新卒にて電通入社。東京六大学野球連盟公式記録員、東京大学野球部OB会前幹事長。現在順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授。
■日本シリーズ、ホーム・チーム勝敗表
年度
優勝チーム
相手チーム
ホーム勝
ホーム負
ホームで優勝決定
1951
巨人
南海
2
3
☆
1952
巨人
南海
5
1
☆
1953
巨人
南海
4
2
☆
1954
中日
西鉄
5
2
☆
1955
巨人
南海
2
5
1956
西鉄
巨人
3
3
1957
西鉄
巨人
2
2
1958
西鉄
巨人
4
3
1959
南海
巨人
2
2
1960
大洋
大毎
2
2
1961
巨人
南海
3
3
1962
東映
阪神
4
2
1963
巨人
西鉄
4
3
1964
南海
阪神
2
5
1965
巨人
南海
2
3
☆
1966
巨人
南海
3
3
☆
1967
巨人
阪急
1
5
1968
巨人
阪急
3
3
☆
1969
巨人
阪急
3
3
1970
巨人
ロッテ
3
2
1971
巨人
阪急
4
1
☆
1972
巨人
阪急
3
2
1973
巨人
南海
4
1
☆
1974
ロッテ
中日
3
3
1975
阪急
広島
2
2
☆
1976
阪急
巨人
2
5
1977
阪急
巨人
3
2
1978
ヤクルト
阪急
3
4
☆
1979
広島
近鉄
6
1
1980
広島
近鉄
3
4
☆
1981
巨人
日本ハム
3
3
1982
西武
中日
1
5
1983
西武
巨人
5
2
☆
1984
広島
阪急
3
4
☆
1985
阪神
西武
1
5
1986
西武
広島
2
5
1987
西武
巨人
3
3
☆
1988
西武
中日
4
1
☆
1989
巨人
近鉄
4
3
1990
西武
巨人
2
2
☆
1991
西武
広島
5
2
☆
1992
西武
ヤクルト
4
3
1993
ヤクルト
西武
2
5
1994
巨人
西武
3
3
☆
1995
ヤクルト
オリックス
2
3
☆
1996
オリックス
巨人
2
3
☆
1997
ヤクルト
西武
4
1
☆
1998
横浜
西武
5
1
☆
1999
ダイエー
中日
1
4
2000
巨人
ダイエー
1
5
☆
2001
ヤクルト
近鉄
4
1
☆
2002
巨人
西武
2
2
2003
ダイエー
阪神
7
0
☆
2004
西武
中日
2
5
2005
ロッテ
阪神
2
2
2006
日本ハム
中日
4
1
☆
2007
中日
日本ハム
4
1
☆
2008
西武
巨人
2
5
2009
巨人
日本ハム
3
3
2010
ロッテ
中日
3
3
2011
ソフトバンク
中日
1
6
☆
2012
巨人
日本ハム
5
1
☆
2013
楽天
巨人
3
4
☆
2014
ソフトバンク
阪神
4
1
☆
2015
ソフトバンク
ヤクルト
3
2
2016
日本ハム
広島
5
1
2017
ソフトバンク
DeNA
5
1
☆
2018
ソフトバンク
広島
4
1
2019
ソフトバンク
巨人
2
2
2020
ソフトバンク
巨人
2
2
☆
2021
ヤクルト
オリックス
3
3
219
192
.532847(勝率)
71回を数える過去の日本シリーズでは、ホームで34回、ビジターで37回、優勝が決まっている。