ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)は、「全仏オープン」(フランス・パリ/5月28日〜6月11日/クレーコート)の女子シングルス4回戦で、観客たちが自分の対戦相手----地元フランスのクリスティーナ・ムラデノビッチ----を応援したそのやり方…

 ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)は、「全仏オープン」(フランス・パリ/5月28日〜6月11日/クレーコート)の女子シングルス4回戦で、観客たちが自分の対戦相手----地元フランスのクリスティーナ・ムラデノビッチ----を応援したそのやり方をよく受け取っていなかった。

 騒がしい観客で埋まったスザンヌ・ランラン・コートで、ムグルッサは第13シードのムラデノビッチに1-6 6-3 3-6で敗れ、タイトル防衛の試みに終止符が打たれたあと、ロッカールームに向かい歩きながら、観客席に向かって戒めるように指を左右に振った。

「観客は今日、本当にタフだったわ」

 ムグルッサは試合後の記者会見でこう言った。その記者会見は、ムグルッサが一時(感情的になって)声をつまらせたため、彼女が落ち着きを取り戻せるよう一時、間を空けてからまた再開された。

「ときに観客たちは、もう少し礼儀をわきまえるべきよ」とムグルッサは言い添えた。

 この日行われた4回戦の4試合すべてで、少なくとも一度はグランドスラム・タイトルを獲ったことのある選手(ムグルッサ、ビーナス・ウイリアムズ、スベトラーナ・クズネツォワ、サマンサ・ストーサー)が、一度もその大舞台で優勝したことのない選手と対戦することになった。そしてそのすべてでチャンピオンたちは敗れ、挑戦者たちが勝者となったのである。

 ムグルッサ敗退の約1時間後、第10シードのビーナスは第30シードのティメア・バシンスキー(スイス)に7-5 2-6 1-6で敗れた

「今日、彼女はたくさんの答えを持っていたわ」とビーナスは言った。彼女は一年前にも4回戦でバシンスキーに敗れていた。

 2009年全仏オープンと2004年全米オープンの優勝者であるクズネツォワは、第11シードのカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)に1-6 6-4 2-6で敗れた。ウォズニアッキはグランドスラム大会で2度決勝に進んだが、優勝経験はない。一方、2011年全米チャンピオンのストーサーは、19歳のエレナ・オスタペンコ(ラトビア)に6-2 2-6 4-6で屈した。

 準々決勝でムラデノビッチはバシンスキーと、ウォズニアッキはオスタペンコと対戦する。加えて、月曜日に準々決勝進出をかけてプレーする女子選手の全員が、初のグランドスラム・タイトルを目指していることも言い添えたい。つまりこれは、全仏オープンの準々決勝にグランドスラム大会の優勝経験者がいない、1977年以来のケースとなる。四大大会すべてに関して言えば、1979年の全豪オープン以来、起こっていなかったことだ。

 起きたことについての考えを尋ねられたビーナスは、「まったくわからないわ。もうそれは過去のこととなった。だからこの大会で何が起ころうと、もはや私の関心事ではないの」と答えた。

 この全仏オープンに先立ち、多くの専門家たちはビーナスの妹セレナ、マリア・シャラポワ(ロシア)の不在ゆえ、女子のドローは非常にオープンで誰にでも勝つチャンスがあると考えていた。彼らはなんと正しかったことか。

 これはムグルッサにとって、グランドスラムでタイトル防衛を目指す初めての試みだった。そして彼女は、母国の選手を大声で応援する観客に支えられた、決意に満ちたムラデノビッチに遭遇することになったのである。観客たちは試合を通し、ムラデノビッチのニックネーム『キキ』をコールし続けた。

「私は母国でプレーしているんですもの。もちろん観客たちは興奮しているわ。雰囲気は、ただただ素晴らしかった」とムラデノビッチは言った。

 ムグルッサが観客について不平を言っていたことを聞かされると、ムラデノビッチは、自分が勝つことを見込んでいる何千という観客たちからの期待の重さに対処しなければならないため、自分にとっても同じくらい厳しいことだと思う、と言った。

「彼らが(常識的な応援レベルの)限界ラインを超えていたとは思わないわ」とムラデノビッチは言った。「率直に言って、スポーツマンシップに反するとか、アンフェアだとか、そういうものだったとは思わない」。

 全仏オープンで優勝した最後のフランス人女子選手は、2000年のチャンピオンとなったメアリー・ピアスだ。24歳のムラデノビッチは、この母国のグランドスラム大会で一度も3回戦を超えたことがなく、すべてのグランドスラム大会を対象にしても一度しか準々決勝に進出したことはなかった。

 しかしムラデノビッチは、16本ものダブルフォールトをおかしたにも関わらず、キャリア最大の勝利を引き出すことに成功した。気温が15、16度程度で、風が強かったこの日、彼女は第2セットと第3セットに7本ずつダブルフォールトをおかしていた。

「すべてが完璧だったわけじゃない。いくつか心配ごともあったけど」とムラデノビッチは言ってから、「今日、私は35本くらいダブルフォールトをおかしたわね。でもすべて問題ないわ」とジョークを飛ばした。

 ムグルッサは昨年の全仏オープン決勝でセレナを倒して優勝した。彼女は2015年ウィンブルドンでも決勝に進み、そこではセレナに敗れて準優勝に終わっていた。

 ムグルッサはこのところ、グランドスラム・チャンピオンとなった今、期待度は以前と違うか、この手のプレッシャーがコート上でよくない影響を与えるか、という類の質問に繰り返し答えてきた。

「明らかに私は少しナーバスだった」とムグルッサは言った。「試合を通し、時間を追うごとにますますナーバスになっていったわ」。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は「全仏オープン」4回戦で地元フランスのクリスティーナ・ムラデノビッチに敗れたディフェンディング・チャンピオンのガルビネ・ムグルッサ(スペイン)(撮影◎毛受亮介/テニスマガジン)

【ハイライト】ガルビネ・ムグルッサ vs クリスティーナ・ムラデノビッチ/4回戦