岩佐亮佑が1年6か月ぶり再起戦 ボクシングの元IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑(セレス)は25日、東京・後楽園ホールの62.0キロ契約10回戦でゼネシス・カシミ・セルバニア(カシミ)に4回1分46秒KO勝ちした。世界王座陥落から1…

岩佐亮佑が1年6か月ぶり再起戦

 ボクシングの元IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑(セレス)は25日、東京・後楽園ホールの62.0キロ契約10回戦でゼネシス・カシミ・セルバニア(カシミ)に4回1分46秒KO勝ちした。世界王座陥落から1年6か月ぶりの再起戦で、2019年12月7日以来1053日ぶりの白星。前日計量を62.6キロで体重超過した相手を退けた。試合後は自らが望んでリングに上がったことを明かしつつ、残りは長くないボクサー人生だけに「生き急いでいる」と振り返った。観衆は1382人。戦績は岩佐が28勝(18KO)4敗、セルバニアが34勝(16KO)4敗。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 初回、サウスポーの岩佐は右ジャブで様子を見る静かな立ち上がり。2回以降もジャブを中心に組み立て、ガードの隙間からパンチを当てた。決着は4回。距離が詰まったところで左アッパーをモロに当てた。相手は尻もちでダウン。そのまま立ち上がれなかった。

 リング上では「怖かったっすよ、本当に。この試合で勝っても、負けても引退という文字も正直ありました。やり切れれば、納得できればいつでも辞めれる覚悟ができています」と吐露。取材では「だってスーパーライト級(相当の体重)でしょ。体重が重いとパンチも強いのは、世界の第一線でやってきて誰よりも知っている。怖かったですね」と振り返り、試合について続けた。

「ポイントアウトして終わるつもりはなかった。覚悟は決まっていたし、打ち合いも覚悟していた。3回から強弱をつけていけた。右をコツンともらった時に、しっかりもらうとまずいなと思いました。(相手が)62キロからどれだけ戻すか関係なくやりました」

 当初、この試合は57.1キロ以下のフェザー級で発表されていたが、落とせないことを理由にセルバニアが岩佐陣営に契約体重を上げるように要望。59キロ、62キロと2度、引き上げていた。さらに24日の前日計量は62.6キロで体重超過。2時間以内に再計量できたものの、1度目でギブアップした。

 異例の状況により、岩佐は減量終盤に難しい微調整を強いられた。普段の65、6キロからの減量幅は小さくなったとはいえ、慣れない体重での減量。それでも、最後は61.8キロまで落とし、プロとしてルールを守っていた。

岩佐「だから、試合を成立させてほしかった」

 17年9月にIBF世界スーパーバンタム級王座を奪取。初防衛後の18年8月に王座を失ったが、19年12月に同級暫定王座決定戦を11回TKOで制して返り咲いた。しかし、昨年4月にWBAスーパー&IBF統一王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との王座統一戦で5回TKO負け。ストップのタイミングに対し、海外メディアやファンから「早すぎる」との声が上がるなど不完全燃焼に終わっていた。

 現役引退もよぎりながら試合1か月半後に再起を発表。今年12月に33歳になる。日本での試合は4年2か月ぶり。何としてもリングに立ちたかった。

「やっぱり悔いを残したくない。控室でチームにも言いましたけど、『もう長くない』と。今回で引退もあると考えていたし、一戦、一戦が全てだと思っていた。ウズベキスタンで(完全燃焼が)できなくて終わった。悔いだけ残さないように。打ち合う時は打ち合う、逃げないと思っていた。恐れず覚悟を決めていけた」

 本人も美談にしているわけではない。何か起きれば一大事だった。危険な試合だったことは誰よりも理解している。

「スポーツのルールに則るのは大前提。ただ、それ以上に僕が生き急いでいる。1年半も試合をしていなくて、これで試合が飛んで、また体を作り直して、交渉もしないといけない。それが嫌だった。だから、試合を成立させてほしかった。むしろ、相手には逃げずにリングに上がってくれて感謝しています。例えば何も言わずに計量オーバーして、試合がなくなるのは嫌。逃げずにリングに上がってくれたことに感謝したい」

 今後はフェザー級で世界王者を目指す。(THE ANSWER編集部)