ツアーの取材現場で聞いた「ためになる話」を紹介 23日まで行われた女子ゴルフの国内ツアー・NOBUTA GROUPマスターズGCレディースは、19歳ルーキー・川崎春花(フリー)のツアー2勝目で幕を閉じた。今大会の取材を通じ、出場者から一般ゴ…

ツアーの取材現場で聞いた「ためになる話」を紹介

 23日まで行われた女子ゴルフの国内ツアー・NOBUTA GROUPマスターズGCレディースは、19歳ルーキー・川崎春花(フリー)のツアー2勝目で幕を閉じた。今大会の取材を通じ、出場者から一般ゴルファーにとっても「ためになる話」がいくつか聞けた。ショットの際に「背中」「左目」など選手がそれぞれに意識し、工夫しているポイント。その一部を紹介する。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田通斉)

 NOBUTA GROUPマスターズGCレディースに出場した選手たちの技術に関するコメントを振り返ると、一般ゴルファーでもスイング、パッティングが崩れた際などにヒントとなりそうな言葉があった。以下、取材で聞けたポイントをいくつか記したい。

◆岩井千怜
「背中を意識しながら、腕と体を一体化してテークバックをするようにしました」

 岩井は、8月にNEC軽井沢72ゴルフトーナメントでツアー初優勝を飾ると、翌週のCATレディースでも優勝。史上3人目の初優勝からの2連勝を最年少で決めたが、その後は4試合連続予選落ち。「ショットのばらつき」に苦しんだ末に、「腕から始動して手打ちになっている」ことに気づいた。今週から背中で軸を感じながら、腕とクラブを同調させながらバックスイング。その上で、体の正面でボールをヒットすることを意識した結果、「左右のブレ幅が減りました」と話していた。

◆川崎春花
「初日はパッティングで苦しんだので、打ち方を変えました。体とボールとの距離が遠くなっていたので、6センチぐらい近くにして、手元を上げて構えるようにしました」

 川崎は調子が悪くなるとハンドダウンになることを思い出し、キャディーを務めた大阪学院大高ゴルフ部の同期、森田彩聖さん(大阪学院大1年)にフォームチェックをお願いした。川崎のパットが好調だった6月のリゾートトラストレディスで撮った動画を確認。「ボールに近づいて手元を上げるフォーム」を思い出した。いわゆるハンズアップで、手首の無駄な動き抑制する効果があるとされる。現実に川崎は「手打ちのイメージがなくなりました」と言い、第2日からブレのないストロークが実現したという。

◆竹内美雪

「『左目でボールを見て打つように』と言われています。そうすることで、体の起き上がりが防げるので」

 竹内は現在、ジュニアからプロまで幅広く指導する三觜喜一コーチに師事しており、このアドバイスを受けていると明かす。一般的には左目でボールを見ることで、頭を残しやすく、ヘッドアップを防げるとされるが、三觜コーチは「彼女は体が早く開くクセがあるので、その防止にもなっています」と話した。期間中、竹内はアドレスで首が右に傾いていることにも気づいて修正。「右へのミスがなくなった」と話している。

小祝さくら、勝みなみも…修正の日々でどうしようもない時も

 今季の取材では、日本女子オープンで2連覇を達成した勝みなみが「インサイドアウトが足りていないと気づいて、後半から修正しました」と話したことが印象的だった。勝はオープンに構えながら、内側から外側に軌道するスイング。勝ならではの感覚的なものかもしれないが、「これでドライバーが曲がらなくなりました」と声を弾ませていた。

 その他、小祝さくらが優勝したリゾートトラストレディスで、「軸をぶらさなければ、斜面でもシャンクは出ません」と話したことも頭に残っている。当日、小祝はコース左側斜面の急激な前下がりから2オンに成功。一般ゴルファーならシャンクが出やすい状況だが、小祝は体の正面でボールをヒットし、クラブを左に振り切った。映像を確認すると、軸のブレは一切なし。プロなら当然の技術かもしれないが、それを時間をかけず、サラリとやってのけたところに凄みを感じた。

 ツアーを戦う選手たちは工夫を凝らして調整、修正を繰り返しているが、どうしようもできない日がある。今季3勝でメルセデス・ランキング首位、ツアー史上3位の13試合連続トップ10入りの山下美夢有は、NOBUTA GROUPマスターズGCレディースで予選落ち。第2日を通算5オーバーの88位で終えると、「何か修正できなかったですね。(これまでは)修正して戦えていたと思うんですけど、足りない部分がたくさんあるので、しっかりと見直して切り替えてやっていけたらいいなと思います」などと話した。

 こんな時こそコーチの出番だが、山下の場合は父・勝臣さんがその役割を務めている。山下が5歳でゴルフを始めた時から同時にクラブを握り、側で娘が進化する様を見続けていた。だからこそ、スイングのリズムや軌道にズレがあるとすぐに気づけるという。山下も父のコーチングを全面的に信頼しており、これまでも復調につなげてきた。3試合連続予選落ち後に出場した5月のワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップでも、練習日に「トップで少し間を入れて」とアドバイスされたことを境にショットが冴え、優勝するに至った。

 次戦は28日開幕の樋口久子・三菱電機レディス(埼玉・武蔵丘GC)。山下だけでなく、全96選手がさまざまな手法で「良い感覚」を探り、初日を迎えるだろう。そして、自他との戦いが展開されていく。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)