10月29日、世界ランキング10位のラグビー日本代表は、東京・国立競技場で「オールブラックス」こと世界4位のニュージーランド代表を迎え撃つ。オールブラックスとは2018年、東京・味の素スタジアムで対戦して31−69で完敗。過去の対戦成績0…

 10月29日、世界ランキング10位のラグビー日本代表は、東京・国立競技場で「オールブラックス」こと世界4位のニュージーランド代表を迎え撃つ。オールブラックスとは2018年、東京・味の素スタジアムで対戦して31−69で完敗。過去の対戦成績0勝6敗と、いまだ勝利することはできていない。

 2023年にフランスで行なわれるワールドカップで「ベスト8以上」を目標に掲げる日本代表にとって、「ラグビー王国」との対戦は現在地を図る絶好の試合となるだろう。ワールドカップで過去3回優勝しているニュージーランド代表は、もちろん来年のフランス大会でも優勝候補の一角。日本でも人気の高いオールブラックスの注目選手たちを紹介したい。


オールブラックスの

「ハカ」がW杯以来3年ぶりに日本で見られる

 まずBKで取り上げるべきは、15人制の最高峰「ワールドラグビー年間最優秀選手賞」に2度輝いているSO(スタンドオフ)ボーデン・バレット(31歳)だろう。キックを交えた冷静なゲームコントロールだけでなく、隙があればスピードのあるランでトライを取る決定力を持ち合わせた攻撃的BKで、SOだけでなく、WTB(ウィング)、FB(フルバック)でもプレーできるユーティリティな選手だ。

 2015年ワールドカップでは主にバックスリーとしてプレーし、レジェンドSOダン・カーターが去ったあとからオールブラックスの10番を継承。2016年はスーパーラグビーで得点王に輝き、所属していたハリケーンを優勝に導いた。 2019年ワールドカップでは主にFBとして出場し、初戦の南アフリカ代表戦や準々決勝のアイルランド代表戦でPOM(プレーヤー・オブ・ザ・マッチ)に選ばれている。

 2021年には、トップリーグのサントリーサンゴリアスに加入。プレーオフ決勝で敗れて優勝は逃したものの、得点王とベスト15に選ばれてあらためて存在感を示した。昨年10月のウェールズ代表戦に出場、一流選手の証である100キャップを達成している。

 LO(ロック)スコット・バレット(28歳)、FBやCTB(センター)でもプレーできる万能BKジョーディー・バレット(25歳)とともに、3兄弟でのワールドカップ出場も可能性は高いだろう。ちなみにボーデンは豚骨ラーメンが大好きで、今回の来日でもラーメンを食べることを楽しみにしているに違いない。

日本に縁のあるスターも来日

 そのボーデンとオールブラックスの10番を争っているのが、成長著しいリッチー・モウンガ(28歳)だ。身長176cmと決して大柄ではないものの、キックやパスのスキルに長けており、ラインブレイカーとしても評価が高い。

 2016年にスーパーラグビーデビューを果たすとクルセイダーズの10番に定着し、絶対的な司令塔として君臨。2019年はチームの3連覇に貢献して、2020年のスーパーラグビー・アオテアロア(コロナ禍で始まった特別大会)では優勝のみならず得点王にも輝き、最優秀選手賞を獲得した。さらに今年のスーパーラグビー・パシフィックでも優勝にも導くなど、まさしく優勝請負人である。

 オールブラックスでは2018年6月のフランス戦で初キャップを獲得。同年の日本代表戦でも来日し、すばらしいパフォーマンスでSOのポジション争いに名乗りを上げた。2019年ワールドカップには正SOとしてプレーしたがオールブラックスを3連覇に導くことができず、2023年大会ではその悔しさを晴らしたいところだろう。

 私生活では元オールブラックスPR(プロップ)オーウェン・フランクスの妹と結婚して2児の父。SOとしてゲームコントロールも年々長けてきた。日本の地で4年前の対戦より成長した姿を見せてくれそうだ。

 そしてもうひとり、BKではCTBリーコ・イオアネ(25歳)を取り上げたい。サモア代表でも活躍した父エディーは元リコーの選手で、会社(リコー)の名前とお世話になった方の娘(レイコ)の両方にちなんで「リーコ」と名づけたという。身長189cmながらスピードも兼ね備えた若手有望株だ。

 リーコは17歳の若さでニュージーランドのセブンズ代表に選ばれ、瞬く間にスターダムにのし上がった。2016年のリオ五輪にも出場し(日本代表と対戦して負けている)、オリンピック後はオールブラックス史上8番目(当時)の若さとなる19歳239日でデビューを飾った。

 2017年からはオールブラックス のWTBのレギュラーに定着。ワールドラグビーのMVP候補にも選出され、2017年ワールドラグビー最優秀新人賞に輝いた。2019年ワールドカップでは3試合の出場で1トライと不振に終わったが、翌年のスーパーラグビーではアウトサイドCTBに転向して再び輝きを増し、今やオールブラックスに欠かせぬBKのひとりだ。

 リーコは現在、オールブラックスとの契約延長を2023年までにとどめている。来年のワールドカップ後はヨーロッパ、もしくは縁のある日本でプレーする決断を下すかもしれない。

W杯後には神戸製鋼でプレー

 そして最後に取り上げたいのは、FL(フランカー)やN0.8(ナンバーエイト)でプレーするアーディー・サヴェア(29歳)だ。海外でもプレーすることが認められた「サバティカル」を利用し、来年のワールドカップ後にコベルコ神戸スティーラーズでプレーすることが先日発表されたスターFWである。

 サモアにルーツを持ち、兄ジュリアンは「ジョナ・ロムー2世」と言われ、2015年ワールドカップではトライ王にも輝いたオールブラックス のWTBだ。

 弟アーディーはセブンズ代表でプレーしていたが、2019年6月のウェールズ代表戦でオールブラックスとして初キャップを獲得。激しいバックローのポジション争いで、最初はなかなか出場機会に恵まれなかった。だが、徐々に存在感を示して、2019年はワールドカップでも躍動。ニュージーランドの国内最優秀選手に選出された。

 ボールキャリーとしての能力が高く、接点での激しいプレーが持ち味で、リーダーシップも合わせ持つ。現在ではオールブラックスのNo.8としてすっかり定着し、67キャップを誇る。

 今年に入って、アイルランド代表、南アフリカ代表、アルゼンチン代表に黒星を喫し、ファンを心配させたオールブラックス。ただ、9月に入ってアルゼンチン代表に大勝し、オーストラリア代表に連勝をするなど、復調の兆しを見せている。国立競技場では日本代表を相手に、果たしてどんなプレーを見せてくれるのか。