パリ大会でブレイク必至のスター候補を紹介するシリーズ「TOP PROSPECT(=トップ・プロスペクト。「有望株」の意味)」。第2回は、世界ランキング1位の車いすラグビー日本代表、小川仁士選手です。 ヤンチャに見えるけれど……⁉以前はフル…
パリ大会でブレイク必至のスター候補を紹介するシリーズ「TOP PROSPECT(=トップ・プロスペクト。「有望株」の意味)」。第2回は、世界ランキング1位の車いすラグビー日本代表、小川仁士選手です。
ヤンチャに見えるけれど……⁉以前はフルタイムで働いていたのですが、車いすラグビーで世界一を目指している現在はアスリートとして企業に雇用してもらっています。それで「今しかできない!」と思って、髪をブリーチしたんです。大会を迎えるたびに、髪色を変えていて、今ではそれが欠かせないルーティンになっています。
うれしかったのと同時に、驚きました。誰も自分が選ばれるとは思っていなかったんじゃないですか。東京パラリンピック期間は、家族旅行をする計画を立てていたくらいです(笑)
日本代表の実感がなかった東京大会とは違って、2022年10月の世界選手権はそこに照準を合わせてトレーニングをして、勝ち取った日本代表。その分、「やってやるぞ」という強い気持ちが湧いています。
クールな背中を追ってこれは“車いすラグビー選手あるある”エピソードなのですが、入院中に車いすラグビーを題材にした映画『マーダーボール』を観ました。幼いころからバスケットボールは苦手意識があったので、新たに始めるなら車いすラグビーの一択でした。同じ施設で行われていた、日本代表の合宿も見学し、激しい攻防戦に心奪われました。でも、始めた頃は、ラグビーつまんねぇって思っていました。今振り返ると当然なんですが、教えてもらったのは、地味な車いす操作技術ばかりでしたから。
自分の障がいは、モトクロスの草レース中の事故によるものです。モトクロス選手はケガが多く、鎖骨の骨折はかすり傷といわれます。実際に自分も毎年のように腕や脚を骨折していました。だから、今回のケガも治るだろう。当時はそう思っていたので、車いすスポーツもほどほどに取り組めばいいかなと考えていたんです。
リハビリのために、施設に行ったとき、体の大きい車いすの男性が通ったんです。理学療法士の先生に、「あれが島川選手だよ」と教えてもらいました。すごいの一言でしたね。もう、一目惚れです。自分と同じ障がいだと聞いてびっくりしたことを覚えています。その後、しばらくして、その島川選手らに施設にある体育館の裏に呼び出されたんです。「何だろう」とびくびくしていたら、チームへの勧誘でした。それで強豪クラブのBLITZに入ることになったんです。
最初はつまらないと思っていた車いすラグビーですが、入院仲間とプレーしていくうちに楽しくなっていきました。もともとフットサルやサッカーをやっていたこともあり、チーム競技は好きでしたしね。リハビリ施設から卒業した後も、当時、選手数の少なかったBLITZに入ったおかげで、競技歴の浅いうちから日本選手権にフル出場できました。やはり試合は楽しくて。日本代表の池崎大輔選手とか、障がいの軽いハイポインターに立ち向かっていくのが面白くてハマっていきました。
ローポインターとは何か一番重度の0.5クラスよりはボールを扱える分、最後にトライで得点を取るシチュエーションが少なくありません。一方、ボールを持ちながら走る場面は、障がいゆえ、リスクがあるのであまりないです。1.0クラスの選手は(1.5クラスなどと比べると)スピードがないので、相手より先回りすることが求められます。
本当に、そうですね。自分たちローポインター(持ち点の低い選手のこと)はボールを持つことも少ないし、到底メイン料理にはなれません。でも味付けは料理には欠かせないですからね。自分ですか? 例えるなら、「一味唐辛子」かな。好きな人は好きだけど、合わない人は合わないみたいな……。
はい、常に選択肢の中から正解を考えてプレーしなければならないので、頭はけっこう疲れます。
日本代表の合宿後は、脂っこいものを食べたくなります。同じクラブチームの菅野元揮くんと焼肉屋に寄って帰るのが定番です。ホルモンのミノが好きで、焼肉奉行の元揮くんに焼いてもらいます。
3人家族で、妻は高校の同級生です。ケガをする前からつきあっていて、入院時は毎日お見舞いに来てもらっていたし、感謝しているんです。もうすぐ3歳になる娘は、まだ競技について理解していませんが、いつか日本代表として試合をしている姿を見せたいですね。
趣味はつり。それから、1年前くらいに「車いすでも、できるじゃん」と思ってやるようになったのがボウリングです。家族でワイワイ盛り上がれるからいいですね。
同じ親の元に生まれたいです。バイクレーサーだった父の影響を受けながら、モトクロスをやっていたのもありますし、小さいときからどこに行くにも「くっつき虫」のようについていきました。モトクロスも自由にやらせてくれていて……ある程度のレベルまでは行くけど、中途半端だった自分が車いすラグビーで日本代表になった。日本国内で行われる国際大会は会場に来てもらい、活躍している姿を見てもらいたいですね。
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text by Asuka Senaga
photo by Hiroaki Yoda