昨年と同じ顔合わせとなったヤクルトとオリックスの日本シリーズがいよいよ開幕する。日本選手歴代最多となるシーズン56本塁…

 昨年と同じ顔合わせとなったヤクルトとオリックスの日本シリーズがいよいよ開幕する。日本選手歴代最多となるシーズン56本塁打を放ち、史上最年少で三冠王に輝いた村上宗隆を筆頭に強力打線を擁するヤクルト。史上初めて2年連続"投手四冠"を成し遂げた山本由伸をはじめ、12球団随一の投手力を誇るオリックス。昨年は4勝2敗でヤクルトが日本一に輝いたが、今年はどんな展開になるのだろうか。5人の解説者に2022年日本シリーズの勝敗を予想してもらった。


史上初めて2年連続

「投手四冠」を達成したオリックス・山本由伸

建山義紀氏

 昨年の日本シリーズと同じように「打」のヤクルト、「投」のオリックスの戦いになるでしょう。ヤクルトは村上宗隆選手が圧巻の数字を残し、若手選手も着実に力をつけている。打線は昨年よりも確実にレベルアップしています。一方のオリックスは先発、リリーフとも層が厚く、大量失点するイメージが湧きません。とくにリリーフ陣については、昨年よりも強力になっています。

 今回の日本シリーズで注目しているのが第1戦です。なかでも、山本投手のピッチングがシリーズの行方を左右するのではないかと思っています。

 というのも、山本投手は今シーズン初めて神宮球場で投げるわけですが、ここのマウンドが難しいからです。神宮のマウンドを苦手にしている投手は多く、実際、私も投げづらかった印象があります。

 あくまで私の現役時代の話ですが、ブルペンとマウンドの傾斜が違っていて、しかもキャッチャーに向かって投げる時に角度が感じられない。フラットな感じがして、いつもどおりに投げるとボールが高めにいってしまう。感覚をつかむのに時間がかかってしまう。山本投手の今シーズンの成績を見ると、なんの不安もないのですが、唯一不安を挙げるとすれば"神宮のマウンド"になるのかなと......。仮にフィットせずに打ち込まれることになれば、オリックスは苦しい戦いを強いられることになるかなと思っています。

 とはいえ、対応力の高さは山本投手の特長ですし、杞憂に終わる可能性は高いと思っています。ですので、今年の日本シリーズは4勝2敗でオリックスです。

秦真司氏

 昨年同様、投手力のオリックス、打撃力のヤクルトという図式は変わりません。そのなかでヤクルトは昨年よりもリリーフ陣の層は厚くなったような気がします。先発陣が序盤で打ち込まれる展開になっても、リリーフ陣が耐えて、終盤に逆転するという試合が多かった。ヤクルトとすれば、なんとか接戦に持ち込んで終盤に勝ち越し、逆転する展開に持ち込みたい。

 一方のオリックスは、序盤から得点を奪って強力投手陣で逃げ切りたい。ヤクルトのように一発を打てる選手が多いわけではないので、しっかりつないで得点できるかどうか。積極的に足を使ってくるチームではありませんが、ひとつの走塁、作戦がポイントになってくると思います。チームの主砲である吉田正尚選手の前にランナーを置くことができるかどうか。その形をどうつくっていくのか注目です。

 今年の日本シリーズについては、例年以上に第1戦の勝敗が大きなウエイトを占めると思っています。オリックス先発の山本由伸投手を打ち崩して勝つようなことになれば、シリーズの流れは大きくヤクルトに傾くでしょうし、逆に完璧に抑え込まれたらオリックスが優位になる。

 注目はそこに尽きますが、山本投手が打ち込まれるシーンを想像できないですし、昨年以上のピッチングをしてくるのではないかと思っています。そうしたことも含め、今年は4勝3敗でオリックスが勝つのではないかと。いずれにしても、最後までもつれる展開になるのは間違いないと思います。


史上最年少で

「三冠王」を達成したヤクルト・村上宗隆

鈴木尚広氏

 ともにクライマックス・シリーズを危なげなく勝利し、さすがシーズン優勝チームだなと思いました。当然、日本シリーズは拮抗した戦いになるでしょうし、ひとつのプレーで大きく流れが変わる可能性がある。そういう意味で、最後まで目が離せない戦いになるのは間違いありません。

 昨年と同じチームの顔合わせになりましたが、一番の違いは今年がヤクルトの本拠地である神宮球場からスタートすることです。おそらく第1戦、オリックスはエースの山本由伸投手が先発すると思いますが、DH制がないなかでどのような戦いをするのか。

 たとえば僅差の終盤、山本投手に打席が回ってきた時に代打を送るのか、それともそのまま打たせるのか。とくに1、2戦はシリーズの流れを左右しますので、両監督の采配、駆け引きは注目です。

 シリーズの予想ですが、今年は投手陣の層の厚さ、質の高さでオリックスが4勝2敗で勝つと思います。いくらヤクルト打線が強力とはいえ、山本投手を打ち崩すのは容易ではありません。山本投手で2勝計算できるとなると、オリックスとしてはかなりラクな展開になる。ほかの投手陣にもいい影響を与えてくれるのではないでしょうか。

 それにオリックスとしては、昨年の雪辱を果たしたいという思いもあるはずです。それが気負いにならなければいいのですが、シーズン終盤のプレッシャーのかかる試合も経験し、そこに関しては大丈夫かなと......。そういうことも含め、今年はオリックスが日本一になると思います。

野田浩司氏

 昨年と同じカードになりましたが、オリックスの一番変わったところはリリーフ陣の顔ぶれです。宇田川優希投手、山﨑颯一郎投手、ジェイコブ・ワゲスパック投手、阿部翔太投手が新たに加わり、変わっていないのは平野佳寿投手ぐらい。しかもボールが強くて、強力ヤクルト打線でも簡単には打ち崩せないんじゃないかと思います。

 一方、打つほうでは杉本裕太郎選手が苦しみましたが、吉田正尚選手が万全。昨年はケガ明けということもあって、本来のバッティングができなかったのですが、今年はやってくれるのではないかと。オリックスとしては、吉田選手の前にランナーが置けるかどうか。とくに福田周平選手、宗佑磨選手の出塁がカギになるような気がします。

 ヤクルトは、三冠王を獲得した村上宗隆選手は昨年以上にすごいですが、山田哲人選手の状態が気になるところです。山田選手が本来の調子を取り戻せばヤクルト打線はさらに強力となり、オリックス投手陣は相当苦労すると思います。

 とはいえ、今年のヤクルトは奥川恭伸投手がいませんし、先発陣の層の厚さはオリックスのほうが上でしょう。今年の日本シリーズは、4勝2敗でオリックスが勝つと予想します。

川崎憲次郎氏

 昨年の日本シリーズはヤクルトが4勝2敗で勝利しましたが、最大の要因は山本由伸投手に勝ち星をつけなかったこと。第1戦こそサヨナラで負けましたが、山本投手に抑え込まれたわけではありませんでした。なので、ヤクルトが山本投手に対してどう挑むのかがポイントになると思います。

 山本投手は、誰がどうみても球界ナンバーワン投手です。今年の成績からしても、容易に得点できる投手ではありません。そのなかでどうやって突破口を見つけ出すかですが、終盤勝負に持ち込むしかありません。そのためには、どれだけ山本投手に球数を投げさせられるかどうか。山本投手と言えども、球数が増えれば失投の可能性も高くなりますし、ボールの威力も落ちてきます。

 そこでキーマンに挙げたいのが宮本丈選手と長岡秀樹選手です。阪神とのCSファイナルでもすごくいい見逃し方をしていましたし、彼らが打席で粘りを見せてくれたら面白い展開になると思います。

 勝敗予想ですが、本当に難しい(笑)。投手戦になればオリックス有利ですし、打撃戦になればヤクルトに分がある。どっちが自分たちの野球に持ち込めるかがポイントになりますが、短期決戦は攻撃力のあるチームが乗っていきやすいのではないか......そういう意味で、今年はヤクルトが4勝3敗で勝つのではないかと。OBとして勝ってほしいという希望も込めて、ヤクルトを推したいと思います。