3月末に行なわれたオールスター戦。今後、Vリーグの改革はどう進んでいくのか 日本バレーボール機構(Vリーグ機構)は5月31日、昨年9月に発表していたスーパーリーグ構想についての会見を行なった。そこで、スタート時期は2018年秋シーズンに…



3月末に行なわれたオールスター戦。今後、Vリーグの改革はどう進んでいくのか 日本バレーボール機構(Vリーグ機構)は5月31日、昨年9月に発表していたスーパーリーグ構想についての会見を行なった。そこで、スタート時期は2018年秋シーズンになること、チーム数は現在のトップリーグであるV・プレミア男女各8チームから、男子10、女子12に増やし、女子は東西カンファレンス制を採ることなどが発表された。

 改革の目玉は、これまでVリーグ機構と各都道府県協会が持っていた試合の開催権を各チームに譲渡し、ホームゲームをこれまでより増加させることだ。開催権は各都道府県協会に再譲渡したり、イベント会社などに委託することも可能とした。ホームゲームを一定数増やすことで、チームと地域の密着を図る。新リーグでは、ホームチームが試合を行なう曜日や会場の装飾、演出を決めることができ、ファンサービスの向上につなげる狙いがある。

 初年度のホーム試合は1チーム5~8試合で、順次増やしていく予定。各チームの試合数は従来の30試合から最多で男子は36試合、女子は32試合に増える。また、外国人枠を現在の1名のみから、アジア枠1名をプラスする。これにより、アジアでの放映権の販売を見込んでいるという。

 チーム名には企業名と地域名、いずれの使用も認める。参加チームについては、新たに導入されるライセンス制度に基づいて決められる。ライセンス取得条件には財務面や成績面も含まれる。発表された構想では「プロ化」ではなく、「ビジネス化」という言葉を使っている。

 嶋岡健治会長は、「世界につながるリーグにし、バレーボールを日本のトップアリーナスポーツにする。企業スポーツのいいところは残しながら、ビジネス化を目指す。ファンファーストで、お客さんをどう呼び込むかを、(機構ではなく)チームの自主性に任せる」と話した。

 昨年9月、最初にこのスーパーリーグ構想を発表した際には、チームの分社法人化、初年度からの完全ホーム&アウェー、将来的なプロリーグ化などを掲げ、3ヵ月後の締め切り時までに賛同したチームだけでも開始するというスタンスだった。これに対して、先月になって「賛同したチームはゼロだった」という報道も出たが、嶋岡会長によると、「賛同したチームはあった。しかし、リーグを割ってまで実現しようとはならなかった」という。

 V・プレミアリーグ女子に参戦中の市民クラブチーム、岡山シーガルズ監督・河本昭義氏はこの発表を肯定的に受け止め、以下のようなコメントをくれた。

「基本的には歓迎したい。ホームゲームを増やし、開催権をチームに譲渡していただいて、利益を上げられるのは嬉しいこと。とはいえ、他の企業チームさんにとっては、なかなかハードルが高いのではないでしょうか。独立採算をとるのであれば、ホームゲームを増やし、ローカルなスポンサーを、頭を下げて獲得しなければならない。

 しかし、私が(1990年代に)東芝シーガルズで監督をしていたときに、はっきりと言われたのが、『1000万円程度の利益は、バレーチームを持つような大企業にとっては、会計上どうするか”困ったお金”にしかならない』ということ。(企業側が)その状態のままならば、ファンに対する意識も変わらない。そこをいかにクリアして、ビジネス化していけるか。我々はノウハウがあるので、いくらでも貢献したい。そして、将来的にはもっとプロクラブが増えて、完全プロリーグ化を目指していただきたい」

 また、ある中堅選手に意見を求めると、積極的ではないものの、今回の”改革”を次のように支持した。

「スーパーリーグが、(プロリーグ化を目指す)最初の構想のまま18年に実現していたら、その時点で引退して社業に専念しようと思っていた。今の体制でも、プロになりたい選手はプロで契約できるし、プロでやりたいチームはプロチームとして参加できているし、(現在のVリーグの)何が悪いのかわからない。焦ってほかの競技のマネをしなくてもいいと思う」

 もっとも、中学や高校の指導者たちからは別の意見も出ている。

「サッカーがあれだけ普及したのも、やはりプロ化したから。目標、夢がないと、他競技に流れがちな子供たちをバレーに引き込めない。そういう意味で、もっと時間をかけてでも、プロ化を目指してほしい」

 バスケットBリーグ1年目のシーズンが終わるのと、ほぼ時を同じくして発表された「スーパーリーグ」。プロスポーツと企業スポーツをめぐる思惑が交差するなかで、はたして「ビジネス化・世界のトップリーグ化」という目論みはうまくいくのだろうか。