矢地祐介インタビュー 後編(前編:RIZINで再び輝くために。「理想は青木(真也)さん。総合格闘技に『きれいに闘う』とかまったく必要ない」>>) 2016年末のRIZINデビュー戦から5連勝を飾り、大会の"顔"となりつつあった矢地祐介。しか…

矢地祐介インタビュー 後編

(前編:RIZINで再び輝くために。「理想は青木(真也)さん。総合格闘技に『きれいに闘う』とかまったく必要ない」>>)

 2016年末のRIZINデビュー戦から5連勝を飾り、大会の"顔"となりつつあった矢地祐介。しかし2018年8月のルイス・グスタボ戦以降、外国人選手を中心に苦戦が続いている。状況を打開するため、フリーとなって格闘技を学び始めてから、「今がすごく楽しい」と話す矢地。彼が目指すところとは。



技術を学び、格闘家として進化を遂げる矢地

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――10月23日の試合は、オファーからあまり時間がありませんでしたが、ライト級(-71kg)に落とすまで減量は厳しくなかったですか?

「体重は普段から75kg前後なんで、減量はほぼしないんです。最後に水抜きをさくっとやって終わり、という感じ。もともと食事の好みもヘルシーですしね。脂の乗ったステーキより赤身のステーキのほうが好きだし、天ぷらやフライとか脂っこいものはあんまり好きじゃない。結果として、普段から絞れてます(笑)」

――ライト級(-71kg)は、外国人の層もグッと厚くなりますね。

「険しいですけど、そこは勝敗の言い訳にはできないですね」

――以前、今まで対戦した相手の中では「(現UFC世界フェザー級王者の)アレクサンダー・ヴォルカノフスキー選手がぶっちぎりで強かった」と話していましたが、そこは変わらないですか?

「段違いですね。でも、ホベルト・サトシ・ソウザもだいぶ強かった。俺は同じボンサイ柔術のクレベル・コイケともかなり昔に試合をしていますが、(サトシとクレベルでは力に)差があると思います」

――クレベル選手とは、パンクラス時代(2016年4月24日)に闘っていますね。

「俺は減量で苦しんでいた時代で、ライトに上げる前のフェザー級最後の試合でしたね。そのクレベル戦は敗けましたけど、『こんなもんか』っていう感じで。サトシに関しては、ちょっと想像を超えていました。何より体がデカかった」

――確かにサトシ選手は、胸板の厚みなど体の大きさが目立ちますね。

「アマチュア時代、フェザー級時代も含めていろんな選手とやってきましたけど、初めて『デカっ!』っと思いましたよ。たぶん、試合当日は80kgを超えてたんじゃないかな」

――重く大きい相手で、体力的にも相当厳しかったのでは?

「1ラウンドはずっと防戦一方でめちゃくちゃ消耗しました。まぁ、作戦っちゃ作戦だったんですけど。相手は出力が高い選手だから、ずっと凌いで"マラソン"して俺が競り勝つみたいな感じで、疲弊したところを決めるイメージだったんですけど、俺もすごい疲れちゃって。1ラウンドであんなに疲れたのは初めてかもしれない。重たい上に延々とアタックしてくるんで、精神的にも肉体的にも削られました」

――仮に、サトシ選手がUFCで戦ったとしたらどうなると思いますか?

「けっこういいところまでいくと思いますよ。チャンピオンといきなりタイトルマッチとかになったら、むしろ勝つ可能性があるんじゃないかと。1個ずつランキングを上げていく感じじゃなくて、相手がよく知らないうちのほうが。そのくらい強いと思います」

"シン・ヤッチくん"に進化

――矢地選手は、YouTube『ヤッチくんチャンネル』で武術や相撲も学んでいることを公開していますね。総合格闘技に活かせる部分は?

「ダイレクトに影響があるわけではないけど、体の使い方、立ち振る舞い、人間的な部分などで学ぶことは多いです。体の使い方に関しては、師範、達人と呼ばれる人たちになると、みんな理に適っている。流派による違いなどもあるんですけど、言っていることは一緒。そういうところを活かしていきたいですね」

――UFC、ボクシングで闘うことも夢とのことですが?

「もちろん今でも夢は夢なんですけど、"黄信号"が灯っているというか......ホントは26、27歳までにUFCに行ってベルトも獲って、引退してからボクシングに転向ってイメージだったんです。今年32歳で予定はだいぶずれ込んでますし、ボクシングはちょっと難しそうですけど、UFCはまだ目指してる。ここまでは『目指している』なんて言えないぐらいの戦績ですけどね。でも、全然腐ってないし、折れてない。自分の可能性をまだ信じてます」

――格闘技の向き合い方、考え方は変わってきましたか?

「少し前までは何もできていなかったのに、ある程度のところまで行けちゃった。それがよくなかったですね。今はいろんな技術を学んで、格闘家っぽくなってきてます(笑)。格闘技を競技として、スポーツとして捉えられるようになってきた。状況に合わせてどうするかを頭でちゃんと理解して、理論的に格闘技を理解し始めたというか......とにかく今はすごく楽しいです」

――「お祭り男」と言われる矢地選手でも、気分が落ち込んだり不安になったりすることもあると思います。そういう時の回復方法などはあるんですか?

「俺は運動したらすぐポジティブになれる人間なんで(笑)。グスタボ戦に負けた時も、直後は落ち込みましたけど、練習したら大丈夫。1週間くらい練習を休んで、その間に落ち込んで、練習が始まったらもう『次に向けて』っていう感じです」

――グスタボ戦後は、YouTubeでも共演した金原正徳選手が控室に入ってきて「やるしかねーんだよ」と言葉をかけていましたね。

「ホント、周りにいい先輩がたくさんいますね。そういう人たちの言葉を聞いて、糧にしている感じです。青木真也さん、金原さんとか、すごい選手たちばかりで説得力がすごい。俺が今経験していることを、とうの昔に経験していて、しかも現役で強いですから」

――練習環境が変化し、進化した自分を"ブランニューヤッチくん"と呼んでいましたが、さらに進化した新たな矢地選手のキャッチコピーはありますか?

「なんでしょうね......"シン・ヤッチくん"じゃないですか?『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』に続いて、シン・ヤッチくん。ベタなのしか思いつかないっすよ(笑)。とにかく、進化した姿を福岡で見せられたらいいなと思います!」

「今、格闘技が楽しい」と笑顔を見せた矢地選手。再起を賭けた10月23日の『RIZIN.39』で『シン・ヤッチくん』が見せる戦いに期待したい。

【プロフィール】
 Instagram:usk_yachi>>