四国IL徳島の日隈モンテルは成長痛、球団の活動休止、野手転向と波乱万丈 悲喜こもごものドラマを生んできたドラフト会議。四…
四国IL徳島の日隈モンテルは成長痛、球団の活動休止、野手転向と波乱万丈
悲喜こもごものドラマを生んできたドラフト会議。四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスの日隈モンテル内野手は、今年をNPB入りへのラストチャンスと位置づけている。プロ入りした憧れの兄を追いかけるも、高校では成長痛でベンチ入りすらできず、地元球団では思い通りのシーズンを過ごせず退団。22歳にして何度も引退危機に見舞われながら、波乱万丈の野球人生を送ってきた。
兄は元ヤクルト左腕の日隈ジュリアス投手だ。少年野球チームに入った2学年上の兄を追いかけて野球を始める。小、中学校では二塁手として活躍し、名門の金光大阪高に進んだが、成長痛によって最初の危機を迎えた。入学時は167センチ52キロほども、高2から突然の成長で一気に180センチ超え。投手に転向したが痛みで投げられず、ベンチ入りすら叶わなかった。
そんな時期を支えたのが兄の存在だった。「高校1年生のときにお兄ちゃんがプロに行ったので、それが一番の目標になりました。僕も兄弟なので行ける可能性があると思って、練習を頑張っていました。わりとポジティブでしたね」。プロ志望届を提出したが指名はなく、クラブチームのOBC高島、独立球団の琉球ブルーオーシャンズと渡り歩いた。
2019年に地元の沖縄に誕生した琉球では、初代メンバーで唯一の10代として期待された。2020年には巨人のトライアウトに合格したが惜しくも指名漏れ。2021年には兄のジュリアスと一緒にプレーする夢も叶ったが、不本意な1年を過ごした。コロナ禍で複数のコーチ、選手による規律違反が判明し、球団が活動休止に追い込まれた。兄は先に引退、自身は関わっていなかったが引退も覚悟で退団した。
志半ばで引退した兄「お前はまだ続けろ。どんなことになっても支援する」
先が見えない状況の中、志半ばで引退した兄に夢を託される。「お前はまだ続けろ。どんなことになっても支援はするから」。NPB入りして、兄の果たせなかった1軍で出場することが明確な目標になった。「お兄ちゃんにはずっと敵わなかった。周りからも比べられたので、絶対に負けたくないという思いで頑張ってきた。それは今になっても変わらないです」と必死にチームを探した。
すると、今年1月に徳島から声をかけられて契約。ドラフト会議では9年連続でNPBに選手を輩出している球団で、やっと野球に集中できる環境に辿り着いた。その一方で、ここでダメだったら諦めようという決心もついた。「世間からしたら若いですけど、ドラフトの平均年齢からしたら若くないので。これで最後かなと思って、今年をラスト一年にしました」と覚悟を決めた。
並々ならぬ思いで臨んだシーズンも、序盤は結果が出なかった。しかし、7月に野手転向に踏み切ると、最初の12試合で10盗塁の大活躍。7月30、31日のソフトバンク3軍との2連戦では7打数3安打と、一躍ドラフト隠し玉に急浮上した。苦難の道のりだったが、底抜けの明るさが持ち味。「豪快な走りとハッスルプレーを見てほしいですね」。10日から始まったフェニックス・リーグでアピールを続けながら、運命の日を待つ。(工藤慶大 / Keita Kudo)