ドラフト会議が迫り、各種報道も熱を帯びている。福岡ソフトバンクホークスの「4軍構想」も明かされ、今後は育成指名を増やすと見られているが、これはNPBを目指す独立リーグの選手たちにとって"追い風"と言っていいだろう。 上位指名だけがドラフト…

 ドラフト会議が迫り、各種報道も熱を帯びている。福岡ソフトバンクホークスの「4軍構想」も明かされ、今後は育成指名を増やすと見られているが、これはNPBを目指す独立リーグの選手たちにとって"追い風"と言っていいだろう。

 上位指名だけがドラフトではない。下位でも育成指名であっても、とにかくNPBの入口に立ちたいと熱望する選手たちがいる。湯浅京己(富山GRNサンダーバーズ→阪神)や和田康士朗(富山→ロッテ)、小沼健太(埼玉武蔵ヒートベアーズ→茨城アストロプラネッツ→ロッテ)らに続くのは誰か。ルートインBCリーグで高い能力を示し、ドラフト候補となっている選手たちを紹介したい。

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◆西濱勇星(群馬ダイヤモンドペガサス)

 投手 右投/左打

19歳/181cm・80kg

 坊主頭が初々しく、話す言葉にも表情にも幼さが残るが、マウンドでは圧巻の投球を見せる右腕だ。

 高卒2年目で今秋のドラフト会議時はまだ19歳。独立リーグからの指名は、年齢が若いこと、それから突出した武器がある選手が有利となる傾向がある。その点で西濱は、成長著しい若手で、並外れた速球の持ち主ということもあり、BCリーグではドラフトの最有力候補のひとりとなっている。ファンやリーグの選手たちに「今年のBCリーグから、ドラフトで指名されそうな選手は?」と聞いても、「群馬の西濱」という答えが圧倒的に多い。

 高校1年では107キロだったという球速が、高校3年時には最速147キロに。MLBのハンター・グリーン投手(シンシナティ・レッズ)とメジャーリーガーの練習方法を参考に、フォームを調整して球速アップに繋げた。BC群馬に入団してからは、牧野塁監督の指導のもと、四球を出そうが打たれようが、とにかくスピードを見せつけてアピールを続けている。

 ウエイトトレーニングと体づくりにも力を入れ、さらなる球速アップに結びつけた。通常、BCリーガーはオフシーズンにアルバイトをすることが多いが、西濱は「野球に専念できるように」と両親が支援してくれ、体づくりに集中することができたという。

 入団後の2021年に最速を152キロに更新。今年6月9日のBCリーグ選抜×西武二軍戦では、居並ぶスカウト陣の前で154キロに更新して見せた。さらにシーズン終了後には、BCリーグ選抜としてフェニックス・リーグに参加。10月15日の阪神戦で155キロを計測してまた最速を更新するなど、まだまだ成長途中なところが"売り"だ。

「球速を出そうとすると逆に出ないので、『力みすぎないように』とは言われてます。リラックスして、(投げる)瞬間だけ力を入れるほうがいいと。目標は161キロです。160キロ(100マイル)まではけっこういますけど、101マイルだったらちょっとかっこいいなって。それでメジャーにいって、サイ・ヤング賞を獲りたいです」

 無邪気に笑う19歳は、どこまで伸びるのか。要注目である。


◆鈴木駿輔(信濃グランセローズ)

 投手 右投/右打

24歳/185cm・85kg 

 前述の西濱が「BCで目指すなら鈴木さん」と話すのが、信濃の鈴木駿輔だ。BCリーグ選抜では、西濱が鈴木にアドバイスを求めることもあったという。

 鈴木は最速153キロのストレートとキレのある変化球が持ち味。奪三振率の高い投手で、試合を作る能力も高い。チームの大黒柱としてポストシーズンまでフル回転した。

青山学院大学を2年次に中退し、NPB入りを目指してBC福島レッドホープスに入団。福島で2年プレーし、BC信濃に移籍して2年目。鈴木自身はNPB挑戦の期限を「大卒2年(に当たる年)まで」と定めている。今年がラストチャンスだ。

 今季はリーグ北地区で最優秀防御率、最多奪三振、最多勝利という「投手三冠」に輝き、BCリーグの年間MVP(投手部門)に選ばれた。名実ともにNo.1投手となり、チームのリーグ優勝の立役者になった。

 昨年から変化があった点について、鈴木は「自分の体の中に意識を置いた自主トレ」による体の変化に加えて、チームに選手兼任投手コーチとして入団した荒西祐大(元オリックス)の影響を挙げる。

 自ら17試合に登板し、安定した投球を続けた30歳の経験豊富な右腕から教わったのは、主に「今まで独り相撲になるケースが多々あった」というメンタル面の改善だ。それが結果に結びついた今季は11勝。荒西とともに掲げたという目標の「15勝」には届かなかったが、防御率は1.76と安定した。

 誰もが認める「BCリーグNo.1投手」がNPBで通用するのか、見てみたいファンは多いだろう。


◆藤原大智(新潟アルビレックスBC)

 外野手(内野手) 右投/両打

22歳/168cm・75kg

 目の前で見ると意外と小柄なのに驚くほど、存在感のある野手だ。打ちまくり、走りまくる。走攻守すべてが光るユーティリティプレイヤーである。

 創価大学時代にプロ志望届を出したが指名はなく、卒業後1年でNPBに挑戦できるBCリーグの新潟に入団した。大学1年からのスイッチヒッターで、元は右打ち。俊足を生かすために左で打つが、左投手相手だと右打席に入る。

 大学の時の課題について「とにかくバッティング。技術がなかった」と振り返るが、BCリーグでは打撃が開花し、右も左も向上した。何かを教わった、というよりは、チームメイトで"ミスターBCリーグ"のベテラン稲葉大樹(38歳)のティーバッティングなどを見て学んだという。

 夏場は少し調子を落としたものの、全試合に出場して打率は.337、90安打はリーグトップで得点王でもある。ポジションは外野手だが、内野の守備もこなす。ユーティリティー性ではリーグ随一だろう。藤原に「ドラフト指名されそうな選手」を聞くと、やはり「群馬の西濱」を挙げたが、「僕はけっこう得意でした」と笑う。橋上秀樹監督も太鼓判を押す逸材のNPB入りなるか。


◆奥村光一(群馬ダイヤモンドペガサス)

 外野手 右投/右打
22歳/178cm・90kg

 ここまで紹介した3選手は、ファンならば知っている選手ばかりだろう。その3人よりも知名度的には落ちるかもしれないが、注目しておきたい2人を追加したい。

 野手で挙げたいのは奥村。東海大学3年時に、指導者から「野球を諦めて就活を」と勧められたが諦めず、BC群馬に入団する道を選んだ。1年目の昨季はまだ大学4年生で、リーグ中にリモートでの講義も受けていたという。当初の練習生から這い上がり、打率.372で首位打者を獲るほどの活躍を見せた。

 今季も打率は.339と高く、盗塁数が12から31と大きく増加。前述の藤原(29盗塁)を上回ってリーグ4位とアピールした。それでも、一番の持ち味はやはりパンチ力。体は大きくないがスイングは鋭く、打率も残せて長打力がある。

 フェニックス・リーグの巨人戦(10月13日)では、木下幹也から逆転3ランを放った。豪快なホームランと綺麗なバットフリップは爽快。右のスラッガーが欲しい球団にはお勧めしたい選手だ。


◆小野寺賢人(埼玉武蔵ヒートベアーズ)

 投手 右投/右打
24歳/175cm・84kg

 もうひとり、名前を挙げたい投手が小野寺賢人。星槎(せいさ)大学からクラブチームの「TRANSYS」を経て、2021年途中にBC埼玉武蔵に入団。当初は中継ぎだったが、今季は先発としてチームのエースになった。

 ストレートの最速は148キロ。平均球速はさほど速くないが、ストレートと変化球を駆使して常に危なげないピッチングを展開する。自信がある球は「カットボール」だという。昨季は途中入団ながら防御率0.90。今季は13試合に先発して防御率1.65とリーグトップに輝き、リーグのベストナインにも選ばれた。

 特筆すべきは抜群のコントロールで、四死球はシーズンを通してわずか7。無四球完投が2回ある。奪三振は73で、3.5以上が優秀とされるK/BBは14.6という驚異的な数字になっている。

 小野寺は「バランス型」のため、何か突出したものを持つ選手が有利という独立リーグからのドラフト指名では、本来であれば「かかりにくい」選手だろう。だが、ここまでコントロールがよければ、「突き抜けた才能」と見る球団が出てくるかもしれない。絶対的なドラフト候補ではないが、前例を覆して指名されてほしいと思わせる好投手だ。