フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコート)は大会7日目、男女のシングルス3回戦の残り半分が行われる予定だったが、降雨のため予定試合を消化しきれなかった。 第1シードのアンディ・マレー(イギリス)…

 フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコート)は大会7日目、男女のシングルス3回戦の残り半分が行われる予定だったが、降雨のため予定試合を消化しきれなかった。

 第1シードのアンディ・マレー(イギリス)、第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)、第7シードのマリン・チリッチ(クロアチア)などの上位シード勢は4回戦進出を決めたが、第8シードの錦織圭(日清食品)と世界ランク67位のチョン・ヒョン(韓国)の3回戦は、錦織から7-5 6-4 6-7(4) 0-3で中断。現地4日(日)の第1試合で再開される。

 女子ダブルスでは第18シードの穂積絵莉(橋本総業ホールディングス)/加藤未唯(佐川印刷)がアシュリー・バーティ/ケーシー・デラクア(ともにオーストラリア)に4-6 1-6で敗れた。相手はノーシードとはいえ、グランドスラムで3度の準優勝経験がある実力派ペア。全豪オープンのベスト4で名を上げた同年コンビも歯が立たなかった。◇     ◇     ◇

 グランドスラムで初めて実現した〈日韓対決〉で、錦織は格の違いを見せつけていた--------ように見えた。少なくとも第2セットまでは。しかし5セットの長丁場は怖い。勝利をもぎ取るまでに、流れがガラリと変わってしまうことがある。

 21歳のチョンは韓国のホープで、韓国テニス史上、世界でトップ100入りしたのは2000年代のイ・ヒュンタク(韓国)に続いてわずか2人目だ。錦織も「ストロークがしっかりしていて才能のある選手。彼のような選手が出てくるのはうれしい」と話していた。短期間であまり交流はなかったとはいえ、IMGアカデミーの後輩であるということも、そんな思いにつながったのかもしれない。

 しかし、その「才能」にここまで苦しめられることになるとは...。チョンには強力なサービスやパワフルなストロークがあるが、ショットの精度やバリエーションで錦織が上回っていることは確実。錦織のサービスブレークで始まった試合は、ラリーの主導権を握る錦織がチョンを翻弄していた。しかし第8ゲーム、不意に錦織のアンフォーストエラーが続いたところにつけ込まれ、ブレークバックされてしまう。

 第11ゲームでブレークに成功した錦織が7-5でセットを奪いはしたが、錦織のショットの決定力は落ち、どんなに体勢を崩しても拾って返すチョンにチャンスが増していった。

 それでも錦織が第2セットを6-4で取り、安堵の中で第3セットは両者キープのままタイブレークへ。錦織は4-3から4ポイント連取を許し、セットを落とした。

「錦織選手との試合は長いラリーを覚悟しないといけない。体力勝負になる。その準備をしっかりしたい」と話していたことが不気味に思い出される。

 第4セットの立ち上がりですっきりと切り替えられなかったのが残念だ。完全なチャレンジャーであるチョンに失うものはない。勢いは増す一方で、2ブレークの0-3。錦織はラケットを叩き折って警告をとられる始末で、トレーナーを呼んで腰のマッサージも受けた。心も体も、コンディションは低下している。そこで、ポツリポツリしていた雨が強まり、いったん中断。そのまま試合は再開されず、明日へ順延が決まった。

 恵みの雨と言いたいが、嫌なタイミングだ。せめて2度目のブレークを許す前なら-------。明日になればムードは変わるかもしれない。しかし2ブレークを返すのは至難の業だ。最終セットにすべてをかけて第4セットは半ば捨てるのか、あるいはこのセットを是が非でも逆転で取りにいくのか。体力の回復はもちろん、気持ちの運び方がカギになるだろう。(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

※写真は「全仏オープン」3回戦、錦織圭(日本)対チョン・ヒョン(韓国)の試合は、第4セット途中で雨のため翌日に雨天順延となった(撮影◎毛受亮介/テニスマガジン)